第4話 魔草ってすごいー1

 草生えたww。

 いや、本当に草生えた。


 俺は生命の魔導書の裏表紙に書かれていたステータスを見る。


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――生命の魔導書――

魔力:魔力:8/11(生命祝福により+1)

スキル一覧

・〈種子生成〉

・〈成長促進〉

・〈植物操作〉

・〈生命祝福〉



解放された植物一覧

・Tier4

コモン:魔草

Tier3〈未開放〉

Tier2〈未開放〉

Tier1〈未開放〉

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 やはりそうだ。

 俺の魔力は、最大値が11に変化し、元々10だったのが7に変化している。


 俺の魔法の能力の確認をしよう。

 俺はステータスのような裏表紙に書かれた魔法一覧の種子作成をタッチする。

 すると、その裏表紙に書かれていたステータスの文字がぐにゃっと歪んだ。


 今更だが日本語ではない。

 だが、さすがに侯爵家の次男だ。文字ぐらい読める。


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魔法:種子作成

効果:植物の種子を作成する。

必要な魔力は、植物ごとに変わる。

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 ふむ、やはり植物の種子を魔力を使って作成するようだ。

 読んだまんまだが、植物によって変わると書いてるので、魔草のページを開いてみよう。


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名称:魔草

Tier:4

レア度:★☆☆☆☆☆(コモン)

成長速度:3日

種子作成:1魔力


説明:魔素を吸って育つ草。過酷な大地でも魔素さえあれば成長するたくましい種。

土壌を肥沃させ、すべての基礎となる。

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 種子作成に、1魔力と書かれていた。

 つまり魔草の種子を作成するためには、1魔力を消費するということなのだろう。

 確かに船の上で、種子作成したとき、魔力が9になった。

 が、すぐに俺の魔力が10に戻ったので魔力は時間経過で回復する。


 1魔力/1分で回復といったところか。速いな。

 

「うん、魔導書に書かれているとおりだ。ちゃんと草だな」


 俺は魔草を触ってみる。

 しっかりと地面に根を張り、草が育っていた。

 さっき飢えたばかりなのに、魔草すごすぎんって思うがこれは俺の成長促進の魔法だろう。

 

「土が……良くなってる」


 しかも周囲10cmほどの土壌が改善されている。

 元の乾燥しきったカピカピの大地が、しっとりと。

 少し俺は掘ってみると、魔草の根が10cmほど周囲に伸びており、そこの土壌が改善されていた。


「希望が見えてきたな」


 この草木一つ生えない不毛の大地を、魔草によって改善できるかもしれない。

 一度死んだ土地は土ごと入れ替えたり、肥料や有機物を補充しなければ自然には復活しない。

 だが魔草を植えることで、砂漠化した土地を緑化するかのように復活させることができるのだろう。


 続いて魔法〈成長促進〉だが。


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魔法:成長促進

効果:植物を成長させる。

一日/1魔力

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 魔草のページに書かれているとおり、成長速度:3日とは3日あれば魔草は育つのだろう。

 だが、それを魔力を使って促進させることが俺の魔法〈成長促進〉のようだ。


 書かれているとおりであれば、1日促進させるにはTier1の植物で1魔力が必要だ。

 なので3消費して、俺の魔力は10から7になっているのだろう。


 しかし8になっているぞって? それはきっと。


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魔法:生命祝福

効果:成熟した植物から祝福として魔力をもらう。

祝福量は、種子作成と同価値となる。

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 これが原因だ。

 生命祝福――これは、植物が俺の魔力の最大値をあげてくれるのだろう。

 書かれているとおり、祝福量は種子作成と同等。つまり1の魔力を俺はこの魔草から頂いている。 

 ということになるのかな?


「よし、仮説が正しいか再度検証」


 俺は種子作成で魔草の種子を使った。

 魔力が8から7になった。

 

 植えてみる。

 そして成長促進の魔法を使う。

 隣の魔草と同じ大きさまで成長している。


 魔力が7から4になった。

 と思ったら、4から5に増え、最大値が11から12に増えた。

 これは成長促進で、3消費したが、祝福で1回復し、最大値も1増えたということだ。


「そして最後の魔法……植物操作」


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魔法:植物操作

効果:植物を操作し、好きに加工できる。

1秒/1魔力消費する。

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 なんと俺はその魔法を使った瞬間、その魔草を動かせるようになった。

 さわさわ……。

 さわさわ……。

 ちょっと楽しい。揺れる揺れる。


 加工できるといっていたが……あ、草を半分にちぎることもできる。

 なるほど、俺は植物を好きなように加工もできるのか。これは便利だな。


 あれ? 動かなくなったが?


 すると俺の魔力が0になっていた。

 5秒ぐらいしか動かしていないが、1秒動かすのに1魔力か。ちょっと楽しいがこれはほとんど使わないな。


「よし、検証終わり!! 魔力もなくなったしな」


 俺の力は大体確認できた。

 チートかと言われると、成長性は期待できるが今は弱すぎる。

 父の黒騎士なんて、鍛え上げた兵士10人分の強さの騎士をポンポンと出せるのだ。さすが闇魔法で侯爵まで成り上がった一族だけはある。


「しかしやっぱり俺は、農業が好きだな……いや、植物が好きなのか?」


 俺は魔草を撫でる。つやつやして、植物らしくしなやかで強い。

 俺にこの能力はあっていると思う。


 貧乏で、食べる物にも困っていたせいか、俺は農業や自然というものに興味が強かった。

 だから農林水産省に入り、機械やAIやらで作物量を上げて、貧困をなくそうプロジェクトを立ち上げたりしていた。

 まぁそれで働きすぎて、最終的には誰かを助けて死んだので何とも言えないが。


「さて、今日の根城は……ここでいいか」


 そして俺は村の中で、少し大きめの家に入る。

 中には誰もいなかった。

 誰かが住んでいたんだろうが、誰もいなくて何もない。

 壁には血のようなシミとひっかき傷のようなものがあった。

 

 何か想像してしまったので、俺は別の家にした。

 荷物を広げて、横になる。

 うん、前に世界の6畳一間と大して変わらないから狭いとも思わないな。

 

 せめて毛布が欲しいところだが、気温だけはちょうどいいぐらいなので、助かる。

 今は季節は春かな。夏とか冬は厳しそうだ。

 

「それまでに生活基盤整えないとな」


 そして俺は、今日はいっぱいあったなと眠った。

 


 翌日早朝。

 レイナがたくさんの食料とともに帰ってきた。


「検証どうでしたか? あまり期待はしていませんが、希望はありましたか?」

「あぁ、なんとかなるかもしれない」

「そうですか。それはなによりです」

「そっちは? その量は正直……すごいが、金足りたのか?」


 後ろを見ると、大量の食糧が次々と運ばれてきていた。

 残り費用で、ここまで大量に買えるか? レイナの手腕に脱帽するんだが。


「本当は、いつでも逃げ出せるようにしていたんです」

「ん?」

「たとえ、セカイ様が全てを投げ出しても生きていけるようにと。私は今までのお給金は、全て貯めていましたから」

「お前まさか……自分の金を?」

「日々引きこもり、クズになっていくセカイ様が心配でしたが、やっぱりあなたはあの日から何も変わってませんね。弱き者に手を差し伸べられる優しい人です」

「買いかぶるな」

「買いかぶっていません。評価はほぼ最低です。最低からほぼ最低になっただけです」

「うぐ……」

「でも……」


 レイナがニコッと笑った。


「私は好きですよ。そんなクズのセカイ様が」


 氷姫と呼ばれる才女――その笑顔は、俺でも久しぶりに見る表情だった。

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