第3話
耳元でコソッとそう話す姫乃から出た単語に私は驚く。
「驚いたでしょ?昨日近道をしようと裏道を通ったの、そしたら舞猫が喧嘩してたの!」
…………落ち着こう。
「へーー……、凄いね…」
「でしょ!?もー!!すっごくかっこ良かったんだよ!舞猫!!」
姫乃は舞猫の所を強調した。
他の人に聞こえるくらいに。
すると、
「え?舞猫?」
「今、舞猫って言った?」
「舞猫に会ったって言った?」
「川井さんが?舞猫に?」
「何?舞猫の話?」
舞猫とゆう単語にクラス中が一気に騒ぎ出した。
「「「「「「川井(さん)!!!!」」」」」」
「きゃっ!」
姫乃の周りにクラスのほとんどの皆が集まり、私も巻き込まれた。
「川井さん!舞猫に会ったって本当!?」
「あっ、うん!」
「昨日の喧嘩だよな!?あの場に居たのか!?」
「居たよ!」
「舞猫ってふらりと現れては喧嘩して直ぐに消えるから見た事ある奴少ないから羨ましい!!」
「えへへっ」
「ねぇねぇ!!どんなんだった!?かっこ良かった!?」
「フード被ってたからハッキリとは見えなかったけど、かっこ良かったよ!」
クラスの人達が姫乃にどんどん質問していく。
質問は良いが私をこの輪の中に入れてくれるな…!!!!
私はどうにかこの集団から逃げ出そうと試みたその時、
「うるさいんだけど」
教室中に低く威圧的な声が響いた。
その声に皆は静かになり声のした方を見ると、
そこにはこのクラスで1番の問題児とも言える
鎖骨より少し下ら辺のそこまで明るくない金髪のくせっ毛ある髪に、明るい茶色の瞳のつり目で、容姿は美人さんだ。
お姫様とは違う女王様のような雰囲気を持つ佐野 雷は眉間に皺を寄せていた。
「えっと…ごめんね?佐野さん」
おどおどと姫乃が申し訳なさそうな感じで謝っていた。
それを佐野 雷は横目で見てから、無言で席を立つと教室から出ていった。
「何あれ…」
「感じ悪!」
「気にする事ないよ、川井さん」
佐野 雷が出て行った瞬間、
クラスの人達は佐野 雷の態度に不満を持ちつ、落ち込んでる姫乃を慰めていた。
でも、私は見逃さなかった。
下を向いて、周りに心配され優越感に浸る姫乃の顔を……
私はそっと気配を消し教室を出た。
舞猫に会ったねぇー…
私は廊下を歩きながら、姫乃のことを考える。
確かに昨日、舞猫は喧嘩をした。
けど、その場に姫乃は居なかった。
もし本当に姫乃が現場に居たのならあの子の性格上絶対に話しかけてくるに決まってる。
また、姫乃の嘘かなー
姫乃はよく嘘を吐く、自分が目立ちたいがために。
姫乃は自分が1番だど特別だと他人に想われてないと駄目なタイプの人間だ。
まさか、舞猫まで話の引きに出すとはねー
舞猫とはある日突然現れた、正体不明の人。
猫耳付きの真っ黒のフードを深く被っており、顔は分からない。
何処の族にも所蔵してなく、いつも1人で喧嘩をしている。
どれだけ大人数で舞猫に挑もうが絶対に勝てない。
舞ってるように喧嘩をするから舞猫と呼ばれるようになった。
「……困った」
悶々と悩んでいると、目的地に到着した。
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