第5話 : 迷子フリートレス達、なんだかんだ異世界を堪能中
────ソロモニア王国の端に、酒場『幸運の馬の蹄亭』はあった。
ボロい宿屋でもあり、夜通し飲める安酒の店でもある。
その歴史は古く、ボロい景観のまま、何度か建て直し続けてなんと500年。
悠久の歴史の中、いつだって旅の冒険者、飲んだくれの労働者にとっては憩いの場であった。
幸運の馬の蹄亭には、500年とある『伝統』がある。
────飲み比べで負けたヤツが、その場全ての酒飲みの代金を払う。
「ハーッ、ハーッ……!グッ!!」
現在、この酒場には酒呑みの王がいた。
名をガロン。別名『樽飲みのガロン』。
気の良い大男の木こりであり、森で出会った種族レベルで大酒飲みのドラゴン相手に飲み勝った伝説を持つ。
「嘘だろ……!?」
「あの『樽飲みガロン』と同じ量を飲んでなんて涼しい顔してやがる!!」
今、そのガロンが飲み過ぎて顔を真っ赤にし、冷や汗を掻いている。
(嘘だろ、この─────!?)
「───ん〜、中々呑みやすい酒だなぁ。
良い酒場じゃないかね?同志酒場のマスター」
そのガロンを追い詰めた相手は、女。
白い肌と、空の青さのような長くウェーブみがかった髪。
その顔立ちの美しさは彫刻だとしたら、一国の王が出せる財産と同レベルの物。美形のエルフが束になっても叶うかどうかと言う宝石のような青白い瞳。
娼婦のような肩出し胸の谷間出しの格好ですら着こなすような抜群のスタイル。
(この姉さんよぉ……!?
ドラゴン何匹分呑めるんだ……!!)
この日、何度目か分からない自身の最高記録のいっぱいを口に含み、胃が受け付けない最高の味を喉に落とす。
透明な蒸留酒は、この国の特産品だった。
複雑な味も苦味の旨さも無いような、アルコールだけの旨み。
特にこの酒場の見繕った酒は、気がつけば潰れるほど呑めるぐらい美味い。
美味いが、当分飲みたくない。
「フゥー……!!」
木のジョッキを下ろす。
────願くば出来れば最後にして欲しい。
「おやおや。同志ガロン?
ずいぶん辛そうな呼吸だね。そろそろ負けを認めるかい?」
「ハーッ!
……俺が負ける時は……俺は……負けたら大の字になって、天を仰いでるのさ……うっぷ!!」
「───格好良いねぇ、同志酒飲みガロン」
グイ、と目の前の人と思えない美人は木のジョッキ一杯の酒を飲み干す。
プハー、とまるで水でも飲むかのように、生き返った笑顔で。
「……どうする?」
氷の微笑とはまさにその顔だった。
もはや樽二つ飲み干しておいて、その白い肌に赤みひとつない。
「〜〜〜〜ッッ!?!」
震えは酒のせいか、それとも目の前の化け物のせいか。
「───ガァァァァァァァァァァァ!!!」
この日、男ガロンは逃げなかった。
周りを見守って、朝日に昇る前から飲んだくれていた酒飲みは語る。
「やっぱりガロン、お前は男だぜ。
最高に格好良かったよ……負けて天を仰ぐ瞬間までよ」
「……ぐへぇ……俺の貯金が……」
バタン、と後ろに倒れて気を失う大男を尻目に、まず一杯飲み干す白い美女。
「良い男だったとも、同志樽飲みガロン。
君は最後まで逃げなかった。それは負けたとしても賞賛に値する」
そして、おかわりももう一杯、一気飲み。
「まぁ、それはそれ。
同志酒飲み諸君!!今日はこの同志ガロンの奢りだー!!!」
おぉー!と歓声を上げる酒場。
そして、女性はここで二杯分を追加で頼む。
「アンタ、エルフみたいな美女だな?
北方出身かい?名前は??」
「嬉しいねぇ、同志酒飲み君。
ああ、名乗るほどのものじゃないさ。
ただの『
おそらく通じていない違う世界の仇名を言って彼女は、ウィンクを一つする。
「───タシュケントさん?」
キィ、とドアを開けて、彼女────
「終わりましたか?」
黒い、美女だった。
黒い髪ショートカットにタシュケント同然の白い肌。
それを、黒と暗いグレーでできた服で身を包む。
ただし……その一見お堅そうな服の両脇は何故かガラ空きで、見える細い脇腹や胸の横の面積の広い肌色に思わず男達が息を呑む。
「や、やぁ、今は同志グラーフ・ツェッペリン?
ちょうど終わったと、ゴッ!?!?」
言葉の途中につかつか歩き、右手で掴む何か四角いものでタシュケントの頭を強打する黒い美女、ことEUG所属
「アル中
まず、今殴ったのは暗い中と日が登ってからずっと読んでいた本の重みを知ってほしいからです。
次に、この本を私は2周しました。
そして最後に、アナタが楽しんでいる間私はずっと外で待っていました。
以上、私の主張を元に問題です。
今の、
私の、
気持ちを、
答えてください」
怒りを超えた、無の表情。
酔ってはいないが、それでもタシュケントは一瞬で酔いが覚めた。
「あ、あの……お、怒ってらっしゃる?同志ツェッペリン??」
「正解です。
さて次の問題ですが、
アナタの次の行動はどうすべきですか?」
「〜〜〜〜〜ッッ!!」
答えを間違えれば、不可侵条約は破棄されて侵攻開始のジェリコのラッパがなるのは確実だった。
「すみませんでした同志最高指導者ツェッペリン閣下!!」
この時タシュケントは、遥かなる祖国ノーシアの東の隣国である陽元より、
「…………………………」
「…………………………!」
かつてのノーシアとゲルマンの戦いの土地であるスターリングラードの地獄の冬も、こんな肌寒さじゃあない。
タシュケントは、アレだけ呑んだアルコールですら凍結するプレッシャーを感じていた。
「…………部分点です」
「へぁ!?!」
部分点!?一部間違い??何減点してしまった私!?!粛清か?粛清されるのか私ぃ!?!
と、そんな言葉を頭で駆け巡っているところ、ふとグラーフ・ツェッペリンはタシュケントのこぼれそうな胸元からとあるものを外す。
「謝罪には誠意が必要です。
誠意とは、究極的に言えば何か物でも贈らないと」
「!?」
「タシュケントさん、ノーシアは民主主義にはなりましたけど、随分いい装飾をお持ちですね。
真鍮ではなく金ですか。まぁ、あそこの朝早く商いをしている真面目な商人さんからは何か買えるかもしれませんね?」
そう言うツェッペリンの背後には、店の入り口から見える道の反対側に、欠伸をする胡散臭そうな商人がカーペットを引いて露店を開いていた。
そして、その並べられた商品を見て、タシュケントは全てを察した。
「ちぇー、私の数々の活躍の証がー」
「むふふ……これはいい買い物です」
数分後、道を歩くタシュケントは勲章が化けた重い本……恐らく『西の勇者エクス・クサカの伝説』の2〜6巻を持ち、隣の満足げな顔のツェッペリンは1巻を読みながら歩いていた。
「てか危なくないかねぇ同志?日が登ってきたばかりだがすでに人が多いぞここは?」
「そのための、頭のBf109です」
頭の上に乗せる小さなレシプロ機型ドローンを指差すツェッペリン。視界をこちらからもとっているのだろう。
「同志空母は器用だなぁ」
「ほとんど戦闘もできず、訓練ですら最後の最後まで出来なかった私です。
グラーフ・ツェッペリンに相応しすぎる置物っぷりだったので、暇つぶしの技はピカイチです」
「まぁ、あの大西洋の裂け目突入では、私の犠牲を無駄にせず活躍したらしいとは良かったよ。
そう卑下することはないよ思うねぇ、同志今は友好国の戦友?」
「ビスマルクやティルピッツ共々、それだけが救いですね。
アカい国の方にも褒められたのも、まぁ良い気分です」
「…………話は変わるがね同志ツェッペリン。
やはりあの裂け目に突入したから、我々はこんな世界にいるのかね?」
ふと、タシュケントは上空で飛ぶタカか何かが、横から飛んできたどう見てもドラゴンな生物に食べられる光景を見ながら言う。
オマケに近くの通行人に「もう竜が出る季節かぁ」という言葉が聞こえた。
「まぁ、「ヤーロッパ」であるならそうとも言えますね」
「ヤーロッパ?」
「ひどい訛りのエウロパと、陽元の誰でも小説が書ける大手ウェブサイト「小説家をやろう」の二つを掛け合わせた造語ですよ。
中世エウロパ風な剣と魔法のファンタジー世界……
と言うよりは、陽元のファンタジーゲームを舞台にしたような世界を指します」
「中世エウロパか。確かに、ここエウロパっぽい土地だね……ゲルマンよりは南かな?
ローマあたりの田舎か。羨ましいねぇ、あったかくて」
「春のゲルマンだってこのぐらいですから。
……ただ、この場所を作った人間は多分陽元人とは予測しますね」
「陽元人?
なんでまた?」
ふと、本から視線を外し、空いた左手で道の脇の側溝を指差すツェッペリン。
「こんな街のはずれなのに、上下水道が整備されています。
それも井戸水と併設して、川から汲み上げている浄水を出せる蛇口まである。
蝋燭しか無いような場所で、です」
言われてみれば……大きな街外れの小さな町とはいえ、水道が通っているような蛇口やら水汲み場が多い。
もちろん井戸もあるだろうが、妙に水に困らない工夫がされている。
「いやいや、流石に水が豊富な土地なのでは無いかね同志?」
「陽元も水は豊富な土地です。
それを参考にしたような水道整備をしてしまうだなんて、ここを整備した王はよっぽどの天才か、
あるいは、答えを知っていたかかなと」
フゥン、とタシュケントは、周りの様子を見てみる。
道ゆく人、人じゃ無い人。
ステイツやフランクの街並みよりもずっと、人種が多種多様だ。
どうりでこんな格好の美女二人いても怪しまれ……
「姉ちゃん、いくら?」
「売りもんじゃないよ同志」
「えぇー!?いくらなんでもそんな格好でそりゃないぜ!どこの娼館だい?」
「モスクワだよ、じゃあね同志エロ親父」
と言うわけではないらしいのは、通りすがりの男が教えてくれた。
「私らも難儀な身体だよねぇ。
普段は37.6℃ぐらいの体温で、本気を出せば1300℃だっけね?」
「この本棚が割になる大きな膨らみも、フリートレスの動力源であり武器にもなる青い血の貯蔵のためですしね」
お互い、一度自分の胸の大きな膨らみを両脇から『もにもに』としてから、ひょっとしてこの世界には耐えられるブラジャーが無い可能性を思い浮かべていた。
「まぁ、それは良いか。
おかげで味方が見つかりやすい物だし」
「…………ですね」
気づけば市街地。
なのだが、何やら人だかりが。
「アンタ強いじゃ無いのさ!惚れちまいそうだよ!」
「あなた、いえお姉様!!貴族お抱えの騎士になるおつもりはございませんか!?」
みれば、綺麗な女性達が誰かを囲い、後ろには明らかにゴツくて強そうです野蛮そうな鎧の大男が伸びている。
そして、恐らくその野蛮な相手を倒したというのは……
「あの、素敵なレディの皆様?
どうか話していただけないでしょうか?」
困惑を浮かべる顔すら美しい、と言いたくもなる美貌だった。
男であれば女が振り向き、どこか幼さのある部分ですらアクセントとなる様な信じられないぐらいの綺麗な顔だった。
銀色の髪を後ろで束ねた髪型も似合い、その身を包む所々金色の装飾がある白い軍服風の衣装があまりにも似合う。
─────ただしその豊満な胸元の北半球はガラ空きだった。
フリートレスだ。
「あの見事な北半球の衣装、ヴィクトリア所属の巡洋艦ですね。確か名前は……」
と、ツェッペリンが言いかけた所でこちらに気づくヴィクトリア所属と思われるフリートレス。
「ああ!!そこのゲルマンとノーシアのお二人!!
申し訳ないのは承知ですがお手を貸してください!!
いえ……助けていただきたい!!」
「助かった…………流石にか弱いレディを振り払うわけにはいきませんので」
「そのオッパイでイケメンキャラは無理があるぜ同志?」
「これで逆に嫉妬もされずにとはどう言う事なのでしょう?」
少し離れた場所で、先ほど助け出したフリートレスの胸を突きながらそう言う2隻。
「私も知りたいですが、どうかお胸を突くのはその辺に。
しかし助かりました。ありがとうございます」
「いいさ同志……えっと、」
「あ、失礼!
私は、ダイドー級
ダイドー。ヴィクトリアはロイヤルネイビーの船団護衛騎士団のダイドーです!」
一礼する動作があまりに様になる美人のフリートレス、ダイドーが名乗った。
「私はタシュケント。ノーシアの
「私も名乗るべきですか?
やはり、ヴィクトリアの艦は最後の戦いでしか顔を出さなかったゲルマンの
「いえ、それは!
覚えておりますとも、グラーフ・ツェッペリン殿。
最後の作戦、私も前衛でした。あなたの支援にもお世話に、」
「いや冗談ですよ。
……にしてもすごい。ゲルマン人より、陽元人より真面目な人ですね」
「冗談!
……良かった、何か不快にさせたのかと……」
ツェッペリンの言葉に、逆にほっと胸を撫で下ろすあたり、ダイドーが真面目で『良い子ちゃん』なのは嫌でも伝わってきた。
「……しかし、一体ここはどこなのでしょうね?
先程のご婦人達も、妙に人っぽくは無い方もおりましたし」
「所で同志、一体なんでこんなファンタジーな異世界でモテモテに?」
「私はただ、女性が嫌がるのを無理矢理手籠にしようとするダメな男性にお灸を据えただけです。
あ、もちろん武器は使っていませんよ!?
だって、本気を出しては殺してしまうでは無いですか。反省する為にはキチンと生きていて貰わないと」
「古今東西の物語で1番モテモテになる王道の行動ですね」
「で、かの同志クソ男にとってはもう格好悪すぎてしばらくは女の子みたいに泣いてる行動となる結果か」
恥ずかしそうな顔になるダイドー。
こんな顔だが大男をのしている。
「まぁ良いか。
そういえば同志ツェッペリン、そろそろ同志オイゲンとの合流はするかい?」
「ならもう一度Bf-109を飛ばしますか」
「あ、お待ちを!
すみませんが、私も2隻ほど仲間のフリートレスをすでに見つけております!」
おぉ、とダイドーの発言に振り向く二人。
「一体誰がいたんだい!?」
「
「え?ロマリアとフランクを一緒に置いた?
何考えてるんですか、ヴィクトリアはEUから離脱して二つの国の歴史も忘れたんですか?」
「これはあまり強い言葉になるので使いたくはないですが、
エウロパの国家に真の友好国同士などいませんでしょう、ツェッペリン殿?
真の敵もまぁ、ある意味でいませんが」
………………苦笑いで答えるしかなかった。
「でも同志、その二人はどこへ?」
「実は、早い間に隼鷹と言う陽元の空母のお方と接触できていましたので、そちらへ先行を。
彼女の
「ああ、なら良かった。
面倒な歴史的背景のある喧嘩は、陽元艦にお任せしましょうか」
「同志ツェッペリン、一応昔の同盟国になんて物押し付けてるんだ」
***
────どうも、駆逐艦装少女の夕立です。
今私は、何やら午前からスパルタ魔法授業させられてる提督をアークロイヤルさんに任せて、ソロモニア魔導士学園は私が開けちゃった学園長質問穴から文字通りアイキャンフライして、5点着地からのダッシュで
「おーい、隼鷹さーん!!」
過去形なのは、隼鷹さんを見つけたからです。
「あ!
夕立さん良かったぁ〜……!!」
へにゃって笑う可愛い顔の、肩出し胸の谷間出しな巫女服風のコスプレ衣装……一応これ陽元のフリートレス用正式採用服なんですよ?上の人の趣味ぃ。
まぁそんな格好に身を包んだ、黒髪フワフワヘアーのポニーテールな女の子。
そう、女の子。
本名は『
元人間という異色な経歴故に、誰よりも女の子って言葉が似合う
「もがもがもがががー!!がー!!!」
そんな隼鷹さんが、一人の金髪ツーサイドアップ娘にアイアンクローをかましていたんですよ。
「…………何やってんすか、隼鷹さん」
「ちょうど良かったですよ〜。
流石にこの人、フリートレスとしてあるまじき問題行為すぎちゃって、流石にお仕置きしてたんですけどねぇ……これ以上はやりすぎるかなぁ、ってところで」
「もがー!!!もがががー!!!」
見れば、ちょっと豪華な大礼服風の、あ胸元とか太ももとかガラ空きなタイプの、フランク艦用のフリートレス服な感じの方がアイアンクローされながら何か暴れてました。
あー、フランクかー。フランクだしなー。
「隼鷹さん、フランク艦相手に隼鷹さんの考える理想は押し付けないほうがいいですよ?
言いたかないですけど、基本フランク艦は強いけど私たち陽元駆逐艦並の見た目のいい野蛮人か口が悪いがデフォじゃないですか」
「───プッ!?」
ふと、そんな吹き出す声が別方向から。
見ると、近くの木にもたれかかる、胸のボタンガラ空きなYシャツなスーツ姿の……この格好は、ロマリア艦!
「いやすまないね……流石に、言い過ぎだとは思ってるけど……ぷっくく……」
長い跳ねた癖っ毛は、茶褐色な色。
ついでに、シャープな美人顔には結構いいデザインと色なフレームのメガネ。
全体的なお洒落さは、間違いなくロマリア艦。
「あらどうも。そちらは?」
「失礼、陽元駆逐艦のお嬢さん?
私は、
一応重巡洋艦だ。以後お見知り置きを」
一礼する仕草までお洒落だ。流石伊達なお国の艦ですね。
「ところで、隼鷹といったかな?
流石にそこの蛮族艦を離してあげてくれないかな?
これ以上は、流石にかわいそうだろう?」
「誰がかわいそうだってのよッ!!舐めんな!!」
ば、っと隼鷹さんの手から逃れる、暴れてたフランクの
「チッ!!いきなり訳わからないこと言って来た雑魚陽元の空母と遊んであげただけだもん!!
調子乗んな!!」
「はぁ、まぁすみませんね」
ビシッと指さしまでしてそんなこと言う相手に、隼鷹さんもまぁやりすぎたかなって顔です。
「ま、どうせそこら辺の人にでも危害加える事でもあなた言ったんでしょ、フランク艦の人?
隼鷹さんが切れてアイアンクローするなってそう言うのでしょうし。フリートレスっぽくないって」
「何勝手に話しかけて来てる訳?アンタどこの雑魚よ?」
「はいはい陽元の雑魚こと、白露型
チッ、と舌打ちして来ますー、やっぱフランク艦態度悪い〜。
「おいおい、リシュリュー?
その雑魚呼びが止めてくれなかったら、どう見てもそこの空母のレディに負けてたのは明白じゃあないか?
それとも、負けを認めてしまうのが怖いのか?」
「負け続けてる国家の重巡には分からないわよ!
仮にも勝ってる国のプライドはね!!」
フン、とそっぽを向いたかと思えば、また舌打ちしてこちらに向き直ります。
「リシュリューよ。
ああそうよ、悪かったわよ。イラついてんの。
んで?ここはどこよ?
と言うか、敵もどこよ?
まさか、あの戦いで仕留め切れなかったから、最強で最新で最高の私が呼ばれるほどの事態なんでしょ?」
リシュリューさんか。ああ、あのリシュリューさんか。
彼女、太平洋側の我々にとっては大和さんと同じ、
あの最後の戦いの、決戦で使われた。
「残念ながら。我々は勝ちました。
で、そこら辺は私より隼鷹さんの方が詳しいでしょう?
勝って、我々は後世に我々の力で戦争が起こらないようにしたはずです。
第2次クロスロード作戦。
─────でも生き残ったはずの隼鷹さんは参加してなかったでしたね?」
なって、言ってみたら隼鷹さんったら、分かりやすく目を逸らすんですもん。
ああ、なんかあったな。
「……その話の前に、夕立さん?
ここがどこか1番詳しいのは、夕立さんですよね?」
「一応は。なにせここの提督の秘書艦ですし?」
ふぇ、と驚いた顔を見せる3隻に、くるりと背中を向ける私です。
「じゃ、合流場所はもう少しあの見えるお城みたいな学校の近くにしましょうか?
今、凄腕の魔法使いの提督が、キッツイ補修授業というか魔法の修行中なので」
***
「言ってくれるなぁ、夕立!
凄腕の魔法使いも大変なんだけど!?」
────先生、つまり師匠であるエリアテの指導のもと、今まで使えなかった召喚魔法の基礎技術、特にキツイ『召喚獣との精神感応魔法』と、その他全ての基礎魔法を同時にやらされているフォロンがぼやく。
「あえて言ってやろうフォロン。コレらをキツイで済ませられるお前は凄腕に魔法使いを名乗ってもいい。
さて、では次は『上級魔導士』程度に負荷を上げていくぞ、凄腕に魔法使い?」
夕立の余計な一言を恨みながら、フォロンは世界一キツい授業という名の修行……いや拷問をこなしていった。
***
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