第3話:夕立、艦装《フリートライズ》せよ!!








 この私こと夕立ゆうだちが説明しましょう!




 フリートライザー


 正式名称「20式高次元格納兵装装着機能付き多機能端末」




 無線機にも携帯にもパソコンにもなる、なんて機能は最早前提!


 メタクソ多い認証を経て、私達フリートレスの力を解放することができるのです!



 第1認証手順:対応OSでもある「大淀」の起動の確認を量子データリンクとかいうなんかもうすっごい技術でフリートライザーが認識。


 第2認証手順:フリートライザーの一部にあるスイッチを押して、機能を起動。


 第3認証手順:大淀の認証


 あるいは、私の『暴力認証ランペイジオーソライズ』で無理矢理こじ開けて認証する。




 そうして、携帯端末がどこか船のシルエットを思わせる形にスライド変形させて‪……‬


 あ、余談すぎますけどこのギミック絶対子供の頃特撮ヒーロー見てた人が作ったヤツですよね?


 とにかく、




《WEGH ANCHER》





 『抜錨』の意味の音声がなれば、第3認証終了。


 準備完了!


 続いて鳴り響く音楽!

 シンセサイザーをフル活用な、アップテンポで小刻みで、繰り返しの旋律が特徴的なヤツ!



「何この音楽!?聞いたことがない楽器なんだけど!?」


「曲は気にしないでください!」



 掲げるフリートライザー。

 それを中心に、ホログラムの立体映像で描かれるは、



「何なの、あれぇ‪……‬?」


「夕立も魔法を使えたの?」



「────正確には魔力に頼らないそれに近い術式を投影した物‪……‬!


 いや、もっといえば‪……‬何か危ない物の設計図!!」




「さっきから知的な悪魔さんで。

 その答えは当たらずとも遠からず」



 それは、いわゆるワイヤーフレームCGみたいに描かれた、駆逐艦型『艤装』の3面図。


 そのCGの底部に突き刺さるような形のフリートライザー、


 コレを、私の手でカギを開けるようにに回す!



 第4認証。

 同時に光るCGだったものが、一瞬のフラッシュと共に『ホンモノ』へ!



「なんか出てきた!?」



 そうです提督。

 この船の形で今、ぴょんぴょん周りを飛び回っているのが、私の力。私の艤装ぎそう


 後は、近づくコイツに合わせて、拳を構えて、




艦装かんそォッ!!!」



 ───殴る!!


 おっと失礼、指定された音声を私の声で入力して、艤装に触れるが正しいです。



《FLEETRISE.》



 最終認証完了。

 艤装がほどけて、私にまとわり、再び形を整えていく。



 船舷の装甲は、4つのアームで私の周りを守るように展開されて、


 背中に主機動力の冷却装置の煙突が装着、


 そして手には12.7cm連装砲のグリップを握って、完了。


 あらゆる艦を構成する全てを纏い、私に装備する。



 故に艦装、

 故に『艦としての最適化フリートライズ』。





《SIRATUYU CLASS No.4!


 YUDACHI : FLEETRISING!!》




 フリートライズ完了の音声が聞こえて、装甲化した全身から余熱を放出するための蒸気を勢いよく噴出。


 私の頭の中の生体電算機コンピュータが連動して、視界に各種情報を投影。





《Engrave it , Victory on dawn‘s horizon.》




 そして、ようやくこのいつもの言葉が聞こえてきました。




「‪……‬暁の水平線に‪……‬?」


「勝利を、刻め‪……‬?」




「我々フリートレスのモットーですよ。

 私が生まれた世界、それに土足で侵略してきたクソ共と戦うたびに投げかけてきた言葉です」




 チャキ、なんて軽い音で取り出すには物騒な右手でグリップを握る武器。


 便宜上の名前は『12.7cm連装砲』。


 実際そんな威力かつ、たとえ本当のサイズで表記してもセンチメートル行くような代物なのです。


 構え方はオーソドックスに片手でグリップ、もう片方の手で手首を握る対反動重視な構え方。



 ズドン!!


 上へ向け発射。



「あなたみたいな相手にね?」




 瞬間、さっきまで遠くにいた青肌悪魔なアスモロッテお姉さんが立体映像が消えるみたいに姿を消して、真上で回避行動後の姿勢で現れる。


 幻覚魔法ってやつですかね?すっごい!魔法だ!!



「やるじゃない‪……‬!」


「その程度の不意打ちは何度も喰らってきたので」


 ズドン!!!


 まさに魔法使いというか、翼は見えないのに何らかの方法ですいすい空を飛ぶアスモロッテお姉さんを狙って、12.7cm砲をぶっ放す。



「あっぶなっ!?!」



 流石に同時発射シングルモードじゃ避けられるか‪……‬


 対空砲は建造直後なのでありませんけど、まぁならばと手元の連装砲を交互発射バーストモードに切り替えますか。



「このままじゃ楽に勝てないかなぁ?

 ハァ‪……‬仕方ないか。


 マスターちゃん、悪いんだけど手伝って!

 ちょっと良い魔法今教えたげるから、マスターちゃんが使って欲しいの」


「何を言うかと思えば‪……‬元は私の戦い。当然やる」


「良い感じね、マスター。

 んじゃあ行きなさい、下僕ども!!あの肥溜めから呼んだからにはキリキリ働け!!」



 なんて思ってたら、さっきまで壁役だった悪魔っぽいのとミミズっぽいの再び登場!!


 その奥で何やら、アスモロッテさんとそのマスターのお姫様が合同で何かヤバそうな魔法の用意が見えますねぇ‪……‬典型的な足止めってわけで。





 ズドンズドンズドンズドン!!



 それが何か?

 連装砲の交互発射バーストモードで速攻片付けます。


 今までの素手と殺人級のプロレス技の効率なんて目じゃない、この威力!!


 どうみてもそうは見えないサイズで、本物の12.7cm砲と同じ火力は、穴あきチーズなんてしょぼい威力は見せません!


 環境にもお子様にも優しい一瞬でグロい肉片も残らない爆散!!

 血飛沫なんてR指定ば物もぜーんぜん見えない赤い霧を生み出すような火力で敵をぽいぽい消していきます!




「は!?秒殺ってレベルじゃないでしょ!?

 何その武器!!インチキじゃないの!!!」


「魔法を使う悪魔相手には、インチキ火力ぐらい許されますよねぇ?」



 何やらやってるようですけど、このまま私だけでも片付きそうで!




「チィッ!!マジでどうしよう!?!」


「アスモロッテ、原理は理解した。

 あとは私が。まずはこの異常な敵を足止めしなさい!」


「ワオ!

 すごいわマスター!アンタ絶対天才よ!!」




「話は終わってます?そろそろ撃っても良いのでして?」



「そりゃ嫌に決まってるでしょ!?


 『生命螺旋よ繋がれ、改変し、顕現せよ』!」



 なんか嫌な予感がする詠唱的な言葉に、相手の手のひらの魔法陣に霧散したあの怪物達だった霧が集まっていきます!


 なんかまずい、と思った次の瞬間には、何やら黒くて大きな影が出来ていって‪……‬!?



 ────キシャォォォオォン!!!



 あっという間に、あの悪魔っぽい奴をベースにウネウネミミズ触手鋭い牙付きが生えてるクソデカ化け物爆誕!!



「ははは!!久々にやったわね、生物錬金なんて!!

 行け!!名付けてキマイラデーモン!!」


「こんなグロいポ◯モン見た事ないんですが!?!」


 

 しかし、例のゲームのポケットサイズの怪物なごとく、コイツ素直にあの青肌女の言うこと聞いてやがる!!


 触手も片腕に束ねたデカいゲンコツが上からきます!!


 避けられない!!


 ならばと背中のアームから伸びる装甲兼サブアームで受け止めます!!


 ズンッ!!



「うぉ‪……‬!!」


 駆逐艦の装甲で受け止められたのは良いですけど、

 単純に上から押さえつけられて地面にクレーターができるような力で死ぬほど重い‪……‬!

 サブアームの人工神経を通してくるプレッシャーが尋常じゃないですよこれ!?



「ははは!!さっきから火力はすごい割に一才その場から動いてないものね!!

 こうもあっさり足止めできるだなんて、脚が遅いのねアンタは!!」



「あんまり否定できませんね!!

 まぁこの図体だけはデカい重しどけてくれたらトリプルアクセル出来るぐらい地面をスイスイ動けるって見せてあげたいですけど!?」



「そんな動きさせてたまるもんかって話ね。

 さて、おっそろしい魔法の準備に戻りますかね〜おほほほ!」



 ん?今‪……‬

 いやそんな事どうでも良いか!!


 今は押さえつけてるコイツが厄介なので!!


 上から全体重を乗せながら、脇から残りの触手で攻撃してくる‪……‬!!


 12.7cm砲は効きます!ただし‪……‬即再生してまた攻撃を四方八方から!!


「あーもう、動ければなぁ!!」



 言っても仕方ないです、場所が悪い。

 じゃあ‪……‬どうするかと言うと、



「‪……‬仕方ないですねぇ。


 自爆するしかねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」




 私の両肩に備えられた、61cm4連装魚雷発射機。

 両肩分、全部で8本の魚雷を一斉発射!!



 安全距離なんか知らねぇんですよ!!!

 自爆上等!!!起爆じゃああああああああああああッッ!!!

 脳内から無線でポチッとな。




 ボボボボボボボボボ!!!





「え!?何!?!」



「────何とは失礼ですねぇ!?」



 爆炎突っ切り、爆風に乗った破片をかき分けて、髪とか燃えたりしてもなお、最短距離で突っ込む。



 気分は常に、第三次大惨事ソロモン沖開戦。



 私の名前の元ネタの夕立も、こんな敵の間抜けヅラ見ながら突っ込んだんでしょうかねぇ?



「可愛くて忘れられないお顔の私こと夕立ちゃんが、


 ぶっ潰すッ!!!」



 青い血垂らして化粧変わり!!

 物理装甲兼近接武装な背中から伸びるサブアームの装甲板クローでぶん殴る!!




「クソッ!やっぱ、ギリギリになるかぁ!」




 ────殴ったはずの青肌ボディが‪……‬ホログラムみたいに半透明で攻撃がすり抜けた‪……‬?



 あ、やっべぇですわ、これ。




「けど間に合った!!

 マスターちゃんは天才よ、こんなに早くこの魔法を練れたんだもも!!」




 真上にアスモロッテさんに気づいた瞬間、


 気がつけば、クソでかいなんかの魔法陣が上空に現れてました。



 上どころか、下にも同じクソデカなのが、光って回ってヤバそうな‪……‬!!




「「我が術の導きにより、顕現せよ煉獄れんごくの業火!」」




「ぜってぇヤバい魔法だコレ!?」



 だって煉獄も業火も熱そうじゃないですかねぇ!?

 知能指数下がってても分かるやばい状きょ






 ボォン‪……‬!






 ────火には嫌な思い出と言いますか、いや思い出はおかしいですね‪……‬私の名前に関わる歴史を思い出してしまうんですよ。



 白露型駆逐艦夕立。私の名前の元ネタの艦は、


 大陽元帝国と、ステイツが戦った第2次世界大戦の中でも歴史のターニングポイントにして、


 別名が『停電した酒場の大騒ぎ』とまで言われた、


 ちょっと良く状況が分からないですね‪……‬で構成された、活躍と運の悪い轟沈の二つを双方の軍がそこそこやってしまった地獄の戦い、



 第3次ソロモン海戦


 駆逐艦夕立が、スコールの中いつのまにか目の前にいた敵とほぼ接敵したり、敵が混乱している間に大太刀周りをして、なんか気がついたら敵ステイツ所属の巡洋艦ポートランドに魚雷を撃っていたり‪……‬

 そして気がつけば、こっちも艦首が折れるような損傷を受けて‪……‬


 そうして夕立は沈みましたとさ‪……‬


 突っ込んで大太刀周りして混乱させたまでは良いのに、最後はあっけない。


 今の私はそんな夕立そのものだなぁ‪……‬って‪……‬




 ‪……‬

 ‪……‬




「あれ?沈んでなゴボゴボァ!?!?」



 なんで!?周りが水!?しょっぱくない、真水!?しかもあったかーい!!


 手を伸ばせば、透明な壁‪……‬水を隔ててるのは、ガラス?


 外が見える‪……‬驚愕してる青と白の肌の人!



「フンッ!!!」



 バキッ、と拳でガラスを割って、外に流れる水を見ながら代わりに入ってくる美味しい空気を吸い込みます。



「ふぃ〜‪空気がうまーい!」


「嘘でしょ!?なんで生きてんの!?!」


「炎の属性魔法を触媒にした上で召喚した地獄の炎なのに!?!」




「────だからこそ、周囲の瓦礫を重力属性魔法で動かしてついでに土に錬成して夕立の周囲に纏わせて、中に水を属性魔法で生み出して二重の防御で守ったの。


 念の為に属性魔法の水を錬成で魔法無効マジックキャンセルを受け付けない本物の水に変えた上でね」



 その声は‪……‬!?



「フォロン!!

 あなたが、たった一人でアレを!?!」



 お姫様が叫ぶ相手こそ、さっきからそういえば忘れてしまっていた我が提督こと、フォロン提督その人です!!



「魔法陣見て予想はしたから、念の為速く二重で詠唱してたんだ。キツかった」



「はぁ!?!キツかったっていったこのおチビちゃん‪……‬!?!


 アレをたったひと目で即座に解析して対策防御魔法を!?


 しかもあのクッソ工程が多いのを『キツかった』で済まされてたまるもんかってーの!!


 アタシの何千年か忘れるぐらい長い魔法の研鑽はなんだって言うんだよぉ!?


 チートかよおチビちゃんさぁ!?!」




「‪……‬‪……‬提督、すっごい魔法使いだったんですねぇ‪……‬!!」



 こんなピンク髪の可愛らしい子が‪……‬

 まさか、そんなすごい方と、



「ところで夕立さ?」


「はい?」



 ゴスッ!!



 ‪……‬えー、知っているでしょうか?知らない人のが多いかもですが、


 提督専用端末アドミライザーは、見た目こそアイなパッドですが‪……‬軍用品です。


 その軽さに似合わず、硬さは戦艦装少女バトルシップフリートレスと同じぐらいクソ硬いんです。



 なんでこんな説明するかって言うと、

 提督に顔面に横で、アドミライザーを叩きつけられました。



「勝手に戦わない!!!

 というか、私が一応あっちのご指名なのにさ!?!


 私のことガン無視で一人で突っ切るとか正気の行動!?!」



「あ、ハイ。すみませんでした‪……‬」



 これは顔面戦艦並の硬さタブレットで殴られても仕方ないですわ。痛い鼻の辺りに映る大淀の3Dモデルも肩をすくめてます。



「‪……‬まぁ、例の提督の登録ってやつ?

 終わらせたし、今日は許す」


「え!?アレをもう終わらせて!?

 大淀、一応提督登録に伴う研修動画ってスキップできないはずでは!?」



《夕立。忘れたのですか?

 彼女は魔法使いです》


「魔導士ね。それもまだ半人前だけどね。

 でも、私も悪い子だから、

 学園の図書室忍び込んで今日お姫様がやったのとは別ベクトルの禁術ぐらいは勝手に頭に入れてるし使えるの。


 具体的に言うと魂とか固定対象の時間操作とか」




『サラリととんでもないこと言いやがって!?』




 綺麗に、ハモっちゃったんですよ。敵のお姫様に短い間でもわかる多分魔法のスペシャリスト悪魔なアスモロッテ氏と一緒に。





「‪……‬‪……‬フォロン。悔しいけど言ってあげる。


 やるじゃない‪……‬!」



「ごめんね、ドーリナ姫。正直言って、今日の出来事を私責められないんだ。

 どうしたって、魔導士になる以上は、」


「隠し球ぐらい持て。できれば禁術級の。

 我が父にして、この国の王、そしてそれ以上にこの学園の長であるソロモニアの魔道王、ゲイドの授業でよく聞く言葉‪……‬


 いえ、私だって幼少期からずっと聴いていた。

 だから、」



「私以上に隠し球もあるのかな、お姫様?」



 す、と二人は指揮棒のような‪、小さくとも結構強力そうな魔法の杖をお互いに構えます。




「夕立!!私がアンタの『提督』だ!!」



 提督の叫びに、私は自然と姿勢を正して傾聴させていただきました。




「一人で突っ走らないで。

 ここからは私と一緒に戦って!

 私の、私とお姫様との戦いに付き合って!!

 サポートするからサポートして!!!

 できるよね?駆逐艦装少女デストロイフリートレスって言うのなら!?!」



「‪……‬はは!!

 そう言う命令でしたら大歓迎です!!」



 まさかの、異世界で建造されて、現地の小さな提督となった方は、


 背中を預けて戦ってくれる提督だとは。



 いいね。好きなタイプだ。



「でも命令は聞きますけどお気をつけて。

 私は『駆逐艦夕立の名前』つけられる程度には、単艦でブッコミするので!!」



「‪……‬とんでもないのを使い魔にしちゃったか!!」




 お互い様でしょ?


 じゃあ、第2ラウンドに行きましょうか!!





           ***

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