第2話:異世界、驚きの連続です!
「ぐあ……ッ!!痛ったぁ……!!」
久々に、内臓の痛みと、腕が消えた感覚で嫌な感じです。
「夕立!?血が……!!」
「そんなことより無事ですか提督……?
いって……まぁ、片腕
「……血が、
……あ、そっち?
───私達フリートレスは、人間じゃない。
特にその運動能力と、本来の力を発揮するための『燃料』として機能する私たちの血液、
名前を『フリートブルー』。
蛍光ブルーのとても生き物の出す色じゃ無い血の色だ。
前の世界でも散々、知らんアホに不気味がられ……
「……け、血液の成分、人と違うの!?」
「え、あ、はい……」
「治癒錬金術が使えないじゃん!!
まずいよその量は!!止血しないと!!」
え、そっち!?!
「……怖く無いんで?血液が青いのって」
「別世界の生き物なんでしょ?
そんな事より、いくら守ってくれたのは嬉しかったけど……ここまで怪我する必要ないじゃん!」
「ちょ、ちょっとびっくりしたけど、確かにまずは止血にゃ!!」
「腕も回収するよ!繋げられると言いが!!」
「刺さってるこれは錬金術で生み出されたのか……!
抜かない方がいいな……さて、体格がデカい私の出番かな」
…………
なんだよ、良い人らじゃないですか。
はは……元の世界は嫌いじゃなかったけど……
やっぱり、守りたい人とは別に、最低野郎は多かったので。
…………ここも悪いところじゃないな、って、こんなクソ痛い思いする様な状況で思えるとは……
「……それはいいんですけど、先にあっちの人と話しつけるべきでは?」
残った右腕で指差す先、
多分、提督のお客様がご登場です。
「───お話は終わったぁ……?」
その方、随分とにちゃついた笑みを張り付けた女性でした。
提督より背も体のメリハリもある髪の長い、提督と同じブレザーみたいな格好の女性……いや、もしかしなくてもまだ未成年か。
「……さっきぶりだね、ドーリナ王女殿下」
「王女?」
「ええ。こちらはドーリナ・ソロモニア4世王女殿下だにゃ。
この国の第2王女で……!!」
ネコちゃー、じゃなくてチェリーナ先輩さんの言葉の先は、簡単に予想ができました。
そうか、この人が……!
「殿下!!いったいなぜこんな事を!?!
周りを見てください!!怪我人も出ている!!
ひょっとすれば死人も!!」
フォロン提督の先輩の美形な3枚目さん、名前忘れたけど大変な正論をいの一番に言ってくれました。
「そうにゃ殿下!!いくらこの国の第2王女であらせられたとしても横暴なんて次元を超えてるにゃ!!!
お父上でもある学園長も、何より姉君も、」
「ええ、そうでしょうねぇ。
でも、だったら簡単な解決方法があるんだけれどもぉ……?」
す、とその長い前髪に隠れた淀んだ視線を、私たちの背後に向けるそのドーリナ王女様。
「あー、何マスター?
じゃあそろそろフィナーレってヤツ?」
視線を向ければ明らかに人外の女の人がいました
肌が青いし、角もあるし、目が白目が黒で金色の瞳、蝙蝠の翼に長いし先っちょがハートみたいな尻尾。
悪魔な美女って多分こういう事なんだって。
逆か。美女な悪魔だ。
なんかチャイナドレス風な、妙な格好でベンチで寝転んでますけど。
「アスモロッテ、始めなさい」
「オッケー!じゃあみなさん集合〜!」
パチン、と寝転んだまま片手を上げて指を鳴らす悪魔美女さん。
すると突然、周りにいたあの化け物どもが一斉に私たちを取り囲む様に集まってきました。すごい速さで!!
「これは……!?」
「……提督、さっき言ったこと覚えてますか?
グッ……いますぐ、アドミライザーを起動してください……ガッ!!」
とりあえず、ブッ刺さった何かしらの金属槍を引き抜き、痛ってぇ!!!
「何やってんの!?傷口を開く気!?!」
「これ以上出血したら!!」
「この青い血なんてっ!!いくらで、も!!!!」
全部抜けましたね!続いて片腕を拾う私。
「あークッソ!!マジで痛てぇーんですよ全身!!」
「……うわ、マジィ?
アンタ、アタシのいる魔界のどの化け物より頑丈〜。
つーか、その淫魔もしないようなヤバいけどイケてる格好の方がアタシ気になるけど〜?」
なんて後ろの悪魔さんが言いますけど、私そんな格好変じゃないので!!
「その青い血のが、フォロンの召喚した者というわけなんだ」
例のお姫様が、提督に話しかけます。
私はというと、ちょっと危ない物を腰のベルトから動く右腕で取り出します。
「そうだよ。私も、禁術を使った」
「……結局、お前も成功させたんだ……
イラつく……」
「イラつく……?
なんで私なんかにそんなイラつくんですかね……?
私は、魔法の才能は多少あっても、召喚術が出来なかったりするし、ただの血統もない貧乏人の街角の孤児なのに、なんで!?」
「は?
そのお前に、魔法の成績が似たり寄ったりで、
あまつさえ同じ様に召喚が出来なかったのは私も同じだけど??」
提督、それ相手の心の『機雷』です!
そう思いつつも、震える右手でなんとか「危ない薬」の注射器を外す私です。血流しすぎたかも……!
「だったら余計に変だ!!
この前の、魔法の実技試験だって、負けたじゃな、」
「その試験でお前が!!!
お前が手を抜いたんだッッ!!!!!!」
…………ああ。
なんでしょう、妙に納得した感じです。
フォロン提督、あなた分かってないようです。いやそりゃあね、分からんでしょう。
「て、手を……?
なんのこと……」
「とぼける気なんだな!?!
そんなことも分からないお姫様扱いだったと!?!
ふざけるな平民!!!
たとえ私が、お姉様やお父様と比べては霞む実力だろうと!!!!
お前と同じ召喚の出来ない出来損ないだろうと!!!
それでも!!!!並の魔導士貴族の血筋共よりは上だ!!!!
そうなるよう努力してきた!!!
お父様の名前を汚さないよう、今ここにいないお姉様の足手纏いになるようなお飾りにならないように!!!
そんな私を侮辱したのはお前だ!!
お前は私に同情でもしたんだ!?!
同情は!!!!
最大の侮辱だッッ!!!!」
……さっきまで、ただ人に迷惑をかける様なカスのお姫様に見えた相手が、残念だけどもっと複雑で、なんならこんな事態を起こしたって、仕方ないと思える相手に変わっていました。私にとっては
同情は最大の侮辱。
多分、フリートレスとして生まれたら、誰もが一度は思う事だったはずですよ。
共に戦わない臆病な陸のクソ人間が、私たちを怪物と呼ぶなんて当たり前。
共に戦う海の英雄たち……弱くとも背中を預けられた海の男、ともちろんジェンダーレスな時代の海の女傑達がいたから気にはならなかった。
でも、その皆と満場一致で嫌いだったのが、
私たちを、「かわいそうな生まれの生き物」、
「同情してあげないといけない生き物」として、
さも手を差し伸べるふりして見下してたあのクソ豚共でしたねぇ……!!!
アイツらを許して、共に戦った戦士達の帰る故郷の為に、世界を救えた事は誇りですけど、
今でもアイツらはひっそり交通事故とかうっかり心臓発作で死んでほしいなって思いますね。
でも、なんでだ?
フォロン提督と、そのクソカス共と一致しない。
初対面で青い血撒き散らして死にかける私を心配してくれた人が?
「なんだよ、それ……そんな理由で、こんなことを……?」
「お前にとってはそんな理由か?」
「当たり前だろッッ!!なんだよそれ!!!ふざけんなよお姫様!!!!
お母さんに教わらなかったのかよ!!!
自分の癇癪で人に迷惑かけるなって!?!
私はゲンコツ食らったよ何度も!!!
昔の癇癪持ちでワガママだった私に!!!!
そんなことも教わらなかったのかよ!?!」
「私のお母様まで侮辱する気なの!?!」
「文句あるかこのバカ姫!!
そもそも、私が悪いなら私一人に迷惑かけろよ!!
私一人だけ狙ってよ!!!なんで!?!他の人は関係ないじゃん!!!」
「……お前、後ろの面々以外の他の貴族に、散々嫌がらせされて、それでもそんなこと言うの?」
「言うさ!!何もただ娼婦にも説ける人の道ってヤツだけが理由じゃない!!!
私はね、
そもそも爵位が欲しくて魔導士目指してんだもん!!!」
半泣きで出た言葉は、案外俗っぽい理由でした。
「爵位が欲しい?」
「男爵でもいい!!いや、騎士でもいい!!もう最底辺の貧乏貴族で良い!!!
優れた魔導士には爵位がもらえる国なのは、この国の姫なら知ってるでしょ!?!
そして、爵位があれば土地がもらえる!!
私の兄弟姉妹、全部で7人!!!
全員で暮らせる土地が!!!
あの貧民街の狭い裏路地でもない!!!
光の聖教の教会の軒下で、雨風凌ぐ必要もない!!!
掘立て小屋同然の家でも良い!!!
とにかく、畑でも耕せて、なんとか税も納められる程度の土地が欲しい!!!
その為に魔法を学んでるんだ!!才能があったから、それを使って!!!
弟達が暮らす為の場所は!!!
お姉ちゃんが作んなきゃいけないんだよ!!!」
……!!
…………でもその俗っぽい理由は、思ったより死活問題な事でした。
弟達の暮らす場所は……お姉ちゃんが……作らなきゃ……あれ……どこかで…………
……血を出しすぎたせいか、思い出す。
ああ、あの陽気でセクハラ大好きな、バカみたいにタトゥーだらけの黒人のステイツ兵。
明らかに女遊びとかで身を持ち崩しそうな人だった。
「ふざけんな!!人間がフリートレス守って死にかけるなんて!!」
あの時、私を庇って負傷した時まではそんなカスだったのに……
「……ぁ……な、なぁ……?」
「喋んな!!喋ったら死にますからね!?」
「はは……なぁ……俺の……弟に、伝えて……」
「知らない!!!クソ、止まれよ!!なんで人間は脆いんですか!?こんな傷で!!!」
「……お前、が、大学行けるまでの……金は、あるぞ……気にすんな……兄貴は、弱い奴と、コ……ぽぁ……ぁ、美人は……守る、もんだぜ……」
「カッコつけんな!!
かっこつけんな!!!生きろよ!!!
ああ……あぁああああああああぁぁぁぁぁッッ!!」
……あ、あっぶねぇ!!!
意識どっか行きかけたんですけどぉ!?!クソ!!早く「危ない薬」使わないと!!
「それは……だから手を……!?」
「国の長の娘に!!恥をかかせたら終わるんだよ、私は!!!
アンタみたいにこんな問題起こしたところで!!
多少の罰で済むような!!!
最悪お咎めなしの立場の人間じゃないんだよ!!!
そんぐらい察せよ!!!何が同情が侮辱だバカ姫!!!
私は同情すらされなかったんだ!!!
運良く手に入れて、そしてそこから慎重に立ち回って初めて手に入る夢があるのに!!!
プライドなんて言う、味もしないしお金にもならない物で捨てられるか!!!!!」
………………そりゃそうだ。
「だから……もうやめて姫様!
私は……私は何があってもアンタと戦えない!!
戦えないよ……私の弟達の生活がかかってるんだ……!」
「…………そん、な……私は、じゃあ、なんのために……!?」
あらまぁ、なんだか終わりそうな雰囲気ですねぇ。
さて、私はというと、採れた腕の傷口の近くに注射針を通して、身体に刺さる様針をだして、腕の傷口を私の体に押し当てる。
行きますよぉ私。入れますよ、入れますからね……
南無三ッッ!!!
「っ!」
中の薬液は私の身体に入っていきます。
全部入れた瞬間、来る。
「……ガッ!!!
ああああああああぁぁぁぁぁ─────ッ!!!」
激痛です。他になんて言えば良いんでしょうかってぐらいの激痛です。
身体がマグマになったみたいだ!!!
左腕の感覚が戻る!!戻ったからやたらめったら左腕に力を込める。
じゃないと、左腕がまた弾け飛びそうな激痛!!!
嘘!!
全身弾け飛ぶ激痛だ!!
だから嫌なんだ、『
「がああああああああああああああああッッ!?!」
「大丈夫かにゃ急に!?」「今何か身体に刺さなかったか!?」「毒か?いや薬か!?」
「身体が治る薬使っただけなんでぇぇぇッッ!!!
お気になさらずぁぁああああああああああクソ痛てぇぇぇぇぇぇぇッッッッ!!!!!!」
せっくのお三方の心配申し訳ないですが、離れて!!
身体中が沸騰しながら、いろんな傷が治る。
文字通りですよ、これやると私の体温500℃近くまで上がるんで。もう冷や汗が即蒸気です。
そして失った血から体液まで色々修復されて戻ってくる。ヤバい効くお薬です。
ヤバすぎてフリートレスの身体以外使用禁止、
かつ1日の使用制限は3回まで。
あくまで、『
でも、生身の身体さえ治れば、まぁよし。
ああ、そんなこと遠くなった意識で考えてたら、ほら元通り。腕が動きます。
「ヒュー………………………………治った……」
「夕立、大丈夫?」
「クッソ全身が痛ってぇんです。
いや痛ってぇんですけど、私は大丈夫ですけど、フォロン提督の方が心配ですよ」
「私は、平気」
「いえ。心配なのは提督の今後です」
え、って顔されました。え?
「フォロン提督。青春な口喧嘩で満足ですか?
まぁ、言いたい事お互い言い合って満足してるところ悪いですけどね、このままだと提督の願いは叶いませんよ?」
「へ?」
「考えてもみてください。
このままだと、提督もそこのお姫様も、扱いは禁術に手を出してこの事態を招いたバカ学生二人なんですよ?」
と、私のいうことに、提督はハッと気づいた顔になる。
「お互い、言いたいこと言ってちょっと冷静になってしまったからこそ、肝心なことを忘れてるんです。
まずは今のお互いの立場です。
二人とも今のままなら同罪、ならまずお姫様より提督がまずいことになる」
そう。
このままだとここにいるは、魔法の禁術に手を出して学園を混乱に陥れたバカ姫と、便乗した天才平民です。
バカでも姫なら、ただ学園を去って後は何かしらの方法で末長く普通に暮らすことでしょう。
でも便乗した平民の天才は、許されません。普通は退学ですね。
フォロン提督が退学という事は……
はい。
「提督もその高速表情変更で理解していただけたようで何よりです。
ね?もう後戻りできないんですよ」
そう言って、私は繋ぎ直した左手で姫様を指差しました。
「私たちは、甘えた理由で騒動を起こしたバカ姫に魔法の禁術を使ってでもお灸を据えました。
そのストーリーがあって初めて許されるんじゃないですかね?
和解するにも、一回殴り合わないともうダメなんですよ」
な、と提督もお姫様も声をあげます。
「というわけで、提督?
腹、括ってください。まずはさっきも言ったとおりそのアドミライザーの電源を入れてもらわないと」
「ちょっと待ってよ!?
でももしも上手くいかなかったら?」
「提督……
王様だか、とにかく上の人がもしその事でなんとか言ってきたらやることなんて一つですよ。
んな道理も人の道も通さねぇカスの上なんぞいらねぇと言って、何発か叩き込めば良いんです。拳を。何か強力な魔法でも良いかも。
尊敬されない行動する相手に下手に出る意味ってあります??」
「どっちがカスだよ!?!
最悪国外追放じゃんか!?!」
「…………なんだって良い。私にとっては良い話」
ほら、姫様やる気ですよ。
うわ、まさに手足みたいにこき使ってますって感じに、指だけでさっきの悪魔のお姉さん指で呼んでますし。
「そうだ。ちゃんと勝負しよう。
勝ったら方が上、負けた方が下。
それ以上に理由なんて欲しいわけじゃない。
ハッキリさせたいんだ。
フォロンと私、何が違うっていうのか。
それだけをハッキリさせたいから!!」
「まぁ、ウチのマスターさんがやるってんならやるけどね。
契約の代償は貰いすぎてるぐらいだし、何よりそう言う青臭い理由の決闘、このアスモロッテさんは好きなの」
はい、向こうはやる気のようですよ提督??
「……あーもう!!
夕立が余計なこと言うからこうなるんじゃん!!
一応私はその、テートクっていう偉い立場なんだからこう言うことしないでよ!」
「じゃ、さっさとアドミライザー起動してくださいねー?」
さて、何やるにしろまずはアドミライザーを起動してもらわないと!!
「やるけどさ……!」
フォロン提督は手のひらのアドミライザーを上下左右傾けて、やっと電源ボタンを押します。
フォンと起動すると、まずは手のひらのマーク。
提督が、多分私を建造した際に触った手のひらを押し付けて、スキャンされたら一安心。
システム起動。
Engrave it , Victory on dawn‘s horizon.
そこでようやくこの文字が見えた!
「?きざめ、勝利の……」
《提督 (仮) のログインを確認しました
メインシステム、登録モード起動します》
そして出てくる、ヴァーチャルな見慣れたお方!
「うわっ!?だ、誰!?」
《あなたが仮登録をされた方ですか。
どうも初めまして。私は、フルートレス運用ならびに艦隊支援用AIヴァーチャルフリートレス。
名を、旧陽元帝国海軍巡洋艦より『
以後お見知り置きを、提督 (仮) 様》
サイバーな格好のぴっちりスーツな3Dモデル映像のみの彼女、
こと我々の頼もしいAIである大淀さんが起動してくれました。
《それはそれとして、状況は実は把握しておりました。
あいにく、電源の喪失並びに仮登録状態では私の支援を行う権限がなく、フォロン提督 (仮) 様の助けになれなかった事を謝罪させていただきます。
誠に申し訳ございません》
「あ、これはご丁寧に」
「それ長くかかるもしかして?」
えっと、確かアスモロッテさんって言う悪魔さんがガチ心配の声を出します。
《今回に対戦相手の方にも申し訳ございませんが、説明の時間のみ頂かせていただきます。
まず悪い知らせですが、正規の手順をやる場合、すべての登録には1時間はかかるでしょう。
まして……信じ難いですが、ここは異世界。
電子機器の操作の難易度を考えれば2時間かかります》
「それは長すぎじゃねーか!!」
「いいや!!まだ良い知らせが残ってますので!!」
腰のスカートを止めるベルトの後ろのケースを開けて、
取り出したるは、私の『武器』。
「夕立、それ私の持ってるやつの……ちっちゃい版!?」
《良い知らせというのが、あなたの最初の建造したフリートレスが『夕立』出会った事です》
私の武器。
それは、スマートフォンタイプの端末。
名前をフリートライザー。
それの電源ボタンの上の、もっとデッカいボタンを押す。
《DESTROYER》
流れる音声。ちゃんと、本来の機能は使える証!
「大淀さんが起動してくれれば、認証ができないだけで機能は生き返る」
《ええ。まぁあなたなら充分でしょう?》
「何する気なの夕立?」
まずは、このフリートライザーの『2段階認証』でもある開閉機構の出っ張りに指をかけます。
「提督。フリートレスっていうのは、そもそもある敵と戦うために生まれた人造の命です。
私達は、いろいろな理由があって、
私達の世界で『第2次世界大戦』と呼ばれる戦いで生まれた戦闘用艦艇の名前を受け継いでいます」
次に、その開閉機構へ指で力をかけます。
「私の名前の元ネタの夕立は、そこまで強い船でもない。
だからこそ色んな作戦に引っ張り出されて、最後は地獄の戦場で単艦突撃した挙句、よく分からない戦果をあげて沈んだ。
それが、白露型駆逐艦4番艦『夕立』。
で、そんな艦艇の名前を受け継いじゃった私と言いますか……!」
ミシミシミシミシ……!
やっぱ、認証されてないフリートライザーは普通開かないです。
「ぐっ……フリートレスは、船の力だけじゃない……!
……フリートレスという生き物として、何か異能の力を持っている……ぐぬぬ……!!」
ミシミシミシミシミシミシピキリミシミシミシミシミシミシミシミシ……!!!
「私の、そんな夕立の名前を受け継いだぁ!!
私の能力がァァァァッ!!!
うぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
ミシミシミシミシミシミシミシミシミシミシピキリミシミシピキリミシミシピキリミシミシミシミシミシミシピキリミシミシピキリミシミシミシミシ……!!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ名付けてェェェェッ!!
ウォォォ
パキンッ!!!
説明しましょう、私の能力『
《夕立の能力『暴力認証』は、ああやって物理でも電子でも鍵がかかってたりする物とかをこうやって力づくで無理矢理こじ開けたら開くし認証されるという能力です》
「ただ力づくで開けただけじゃないのそれ!?」
「ブッハ、ウッソでしょそれ!?
マジで何か非実体封印解けた気配したんですけどぉ!?ははははは!!」
《WEIGH ANCHOR》
向こうの大爆笑中の悪魔のお姉さんのいう通り、フリートライザーのロックが今外れた音声が流れました。
これで、
***
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