第1話:夕立、異世界で戦います







「提督!

 と役職で言い続ける用になってるとはいえ、

 失礼ながら状況を説明して頂きたいです。



 なんでこんな悪魔みたいなのと提督のお仲間さんが戦っているので?」



 土星みたいな月があるし、魔法で魔物と戦うような異世界に着任したフリートレスの夕立です。

 今、悪魔みたいな化け物をヘッドロックかけてます。あ、頭蓋骨折っちゃった‪……‬



「テイトクじゃなくて、フォロンって呼んで!

 それより私はあなたの召喚者として契約を結ばないといけないの!!急な話なのは分かるけど!!」


「あ、フォロン提督ですね。余録お願いします。

 まぁまずは聞いてください。

 契約がなんなのか分かんないですけど、私にとっては、提督と言う立場の人間が絶対の命令者であり、尚且つ今、提督イコール目の前の貴女です。

 契約って言葉が、提督の命令に従い服従すると言う事なのであれば、まぁちょっと上から目線すぎじゃね?って事以外なら全て従いましょう」



 目の前の女の子、フォロン提督と言うんですか。

 背が低い子ですね‪……‬まだ10代前半ぐらいかな?


 くりくりしたお目々の、ピンク髪のボブカット。

 例のブレザー制服もあって、まだ中学生って様子の子です。



「なんでも良いよこの際!

 お願い、私と契約して!!

 この悪魔と戦うために!!」


 その言葉と一緒に何かの魔法を片手で使おうとするのを、私は制します。



「あー、つまりは貴女に協力をという命令ですね?

 でしたら、もちろん遂行します!

 それが契約というなら、すでにその手のアドミライザーを持っている以上、私は貴女に逆らえませんし命令は絶対です」


「え?」


「契約とか言うのがなんかこっちの世界の漫画とか小説の魔法のような力でしなきゃいけない、って言うことなのでしょうけどもうそんなのなくても私逆らえないんですよ。その手の機械のおかげで。


 ここまでの長いし同じこと言ってる気はする説明は分かります?」



 チラリ、とフォロン提督は小さい手のひらでとりあえず掴んでいたタブレット‪……‬ことアドミライザーを見て、まぁそりゃあ怪訝な顔をしますよね‪……‬


 ここの科学は魔法であり、魔法とは科学の事を指すんだろう。


 文化が違う、技術が違う。

 だから、その手の端末アドミライザーの効果が、自分達の物理法則で動いていないから‪……‬


 難し言い方ですね我ながら。

 要は「本当にこれにそんな効果あるのかぁ?」って気持ちなんでしょうね。わかるよー。



「それよりも、さっきの質問に答えて欲しいです提督。

 状況が割とわからなくて、でも提督みたいなか弱い人がこのクッソブッサイクな化け物に襲われてるってこと以外なんも分からないんですよ、私」



 とりあえず、背後から人間っぽい腕の割に長い爪で引っ掻いてきたヤツの手首を掴んで踏ん張って、

 相手が勢いで肩をボキって外すのを見てから深呼吸。

 泣きを入れたらもう一発!の精神を込めた蹴りを顔に叩き込む私です。お前はムカつく顔だからさらに一発!



「‪……‬その前になんで、古の伝説のデーモンを素手で倒せるの?」


「へー、コイツら古のデーモンって言うんですか?

 こんな生き物もいるんですね、異世界」


 まだ息があるみたいでもがいてますね。

 可哀想なのでストンピングでとどめ刺して起きます。苦しませるより、一撃死です。慈悲深い‪……‬



「その足蹴にしているヤツと同じ所から出てきたのはそっちだと思ってたけど?

 てっきりお仲間かなって」


「わーお。このブサイクと私が同じように見えますぅ?

 意外と提督、辛辣な皮肉屋なんですね?」



 オラ、顔見せなさいな!

 ボキッ!

 あ、首折れちゃった‪……‬


 まぁとにかく、少なくともカワイイ夕立ちゃんフェイスと、この舌ベロ白目剥きのクソブサイク古のデーモンフェイスと並べてニッコリします。


 ね?私の方が可愛いでしょ?なんですかその怪力ゴリラでも見る目は。


「‪……‬‪……‬まず、じゃあ貴女は魔法は知ってるけど、自分が魔法で呼ばれた‪……‬呼ばれたって言って良いか分かんないけど、少なくとも私達がやった禁術で呼ばれたのかも分からない?」



「ええ、まぁ。魔法の世界は初めてです。

 昔、一回別次元に突入して戦ったことありましたけど」



「‪なにそれ?」


「忘れてください提督。こんがらがる説明でした。

 長ったるしくなりましたけど、なんで貴女がアドミライザー触っちゃった上に私のこと建造した、つまり呼び出したのかも分かんないんですよ。

 右も左も東も西も、星の名前も何も分からない。


 で、なんでこの古のデーモンとやらが跋扈しているのかも」



「‪……‬‪……‬原因の、半分は私かもしれない」



 ‪……‬へ?



「‪……‬あのね、この世界は‪……‬

 この国はソロモニア。魔導士達の国ソロモニア。


 そしてここは、ソロモニア魔導士学園。

 私達、魔導士になるために日々ここで学んでいるの」



 うわお、ソロモニア!?ソロモン!!

 メタクソ馴染みある響きの地名じゃないですか!

 海峡は無いですよね??



「‪……‬じゃあその格好、この学校の制服で?」


「この服は魔導士見習いの証だよ。

 他の土地でも多分そう。セイフク‪……‬っていうのはよく分からないけど」


「なるほど。

 で、半分は提督がこの状況の原因というのは?」


「‪……‬まず、前提として魔導士になるには、3つの魔法体系をマスターしなきゃいけないの。

 一つが‪……‬!」


 突然、提督が音楽の指揮者が振ってるアレみたいなのを取り出しました。

 いやアレって‪……‬あ、魔法の杖!?



「『招来せよ水の流れよ。我が願いに応え濁流を生み出せ』!」



 やっぱ魔法だー!?

 魔法陣が空中で出てきて水出てきましたけどー!?


 しかも結構な量の水で、気がついたら飛び掛かってたあのクソデカミミズを押し戻した!?



「1つがこの『属性魔法術』。魔力と呼ばれるこの世界に満ちている力を大体の生命が持つ力によって風や炎に、見せかけの物質に変える技術。



 だけど‪……‬コイツらには効果が薄いみたい!」



 あ、ミミズが濁流を切り裂いて出てきた。


「だったら二つ目!!


 『分解せよ、燃素、爆素』!!それと伏せて!!」



 また別の形の三角の魔法陣、それと同時にブワッと水が一瞬で蒸発するように消える。


 同時に、妙な感覚と言いますか、喉の奥がヒリヒリするような、目が乾燥するような感覚。


 毒ガス?まず思い出したのは史上最悪の作戦である6年前の硫黄島の決戦。私ら残ってるのに化学兵器使用してきやがったヤツ。



「『将来せよ火の子』!」



 我ながら、伏せられたのは英断でしたね。



 ボォォォォォンッッ!!!!



 一瞬で大爆発。凄まじい炎。

 そして、なぜか直後にすごい量の雨が私の背中を叩きつける。



「今のが『錬金術』。

 魔力で生み出したハリボテの物質を本物へ、あらゆる物質を魔力を触媒に別の物質に変換する魔術。

 コレなら効くか‪……‬」



「‪……‬まーじですかコレぇ?

 本当に魔法じゃ無いですか‪……‬!」


「大丈夫そうだね、良かった‪……‬

 戦いで『錬金術』成功させられたのは我ながらすごいことけど、やりすぎてごめんね?」


 そんな心底謝りながら小さな手を申し訳なく差し出されたら、流石に文句言えませんって。

 というか、魔法をナマで見れて興奮したのでチャラです。


「まぁ、私頑丈なのでお気になさらず」


「ありが‪……‬あ!」



 直後、目の前が真っ暗に。

 クッセー臭いは、ああさっき嗅いだことがある嫌な口臭。クソデカミミズだ。



「空気を読みなさいよクソミミズ!!」



 多分脳みその辺りへ手刀。

 案外ブスっと刺さって、指先に空気が触れたのでそのまま引き裂いて、ビクビクしているでかいヤツの新しいお口から出てきました‪……‬


「チッ!うわー、よだれとなんか体液でベットベトなんですけど〜?

 あ、提督無事ですか?」


「いやそれ私のセリフじゃ無いかな!?

 なんで素手で引き裂けるの!?!」


「まぁ、その‪……‬私達フリートレスって人よりパワーある上に体表も硬いので。

 まぁ私は駆逐艦装少女デストロイフリートレスっていうカテゴリーなので、まだちょっと力強い程度ですね」



 でも、ベットベトなのはキッツイなーもう!

 直後、ザパーとあの魔法で水呼び出す提督のおかげで、まぁマシな状態になりました。

 ありがとうございます、フォロン提督。ぺこり



「‪……‬さっき、あのワームに属性魔法の効き目が薄かったの見えた?」


「え?あ、でも確かに妙に水から出てくるの早かったような」


「アイツら、多分魔法無効化魔法マジックキャンセルっていう力があるの。多分、魔術スケールっていうもので言えば、正確な測定魔導具は無いけど『レベル20』相当」


「レベルって概念あるんですね」


「逆にレベルってそっちの方が通じるんだ‪……‬結構新しい理論だって先生達も言ってた。


 大体、レベル20ぐらいになると、感覚的に上限のレベル100の魔法と魔力量でも1/5ぐらいは軽減しちゃうんだ。


 で、私の魔法の威力も、多分レベルの概念で言えば25ぐらいだから‪……‬8割威力減かも」



 ゲームみたいな話ですけど、元よりゲームっていうのは人が分かりやすく使うための概念の集合体って話思い出しましたね、私。


 となると、学問になってるような魔法の単位としてレベルって概念出てもおかしく無いか。レベルっていうゲーム用語まんまなのびっくりですけど。



「だから、えっと‪……‬ユーダチだっけ?」


「夕立ですよ」


「夕立を‪……‬正確には夕立を作ったあの変な機械を呼び出したのは、魔導士が収めるべき魔法体系3つのうち一つ、『召喚魔法術』なの。


 魔法が通じない相手に対抗するために、別の世界の者を呼び出して使役し、力を使うための魔法の総称。


 私が、唯一苦手な奴だった」


「じゃあなんですか?

 とどのつまり、私を建造したあの建造ドックを呼び出したのは提督ということですか?」


「うんそう。

 ただ、普通は呼び出す世界はある程度決められてるの。

 見てわかる通り、意思疎通も出来ないし最悪食べられるかもしれない化け物を滅多に呼ぶようなのはダメでしょ?」



「たしかに、そりゃそうですね」



 今、話に集中するためにあの古のデーモンとかいう空飛ぶ奴らにカジカジされてるのですっごい説得力を感じます。

 痛いんじゃボケ投げ!!



「‪……‬私、どうも普通は召喚術に使う精霊界っていう別の世界の住人に嫌われてるみたいなんだ。

 呼び出しても契約ができないせいで、常にこの召喚魔法の授業は赤点なの。

 他は優秀でもね、苦手なものはあっても多少はできないとやっぱり魔導士としてはダメなんだ。

 一切出来ない、はダメなんだ」



「‪……‬‪……‬それでこの悪魔を提督は呼び出したと?」



「そこまで落ちぶれちゃ‪……‬!!!

 ‪……‬でも、夕立を呼んだ。同じ魔法陣で」


「‪……‬‪……‬なんか見えてきましたね?

 コレは私の推理ですけど、やったのは別の同じような境遇の人ってところですか」



 提督の顔が、とても苦しそうというか、言いづらさMAXな苦虫潰した顔になります。


 はい、という意味なら充分伝わる顔ですし、



「しかも知り合いですか?そのお人」



 と、推理を言えばもっと顔色が悪くなってこっちを見てくる。



「‪……‬‪……‬うん。そうだよ。

 嫌われてるのは知ってたけど、でもまさか‪……‬!


 さっき言われたばっかりなんだ。

 これ全部、私が気に入らないからしたって‪、」





「どわぁぁぁぁぁ!!!!いたぞぉぉぉぉ!!!

 無事かフォロォォォォォン!!!!!」


「私たちは無事じゃないにゃぁぁぁぁぁッ!!」



 勢いと共にそんな声。

 見ると提督と同じブレザーで癖毛の男性と、ネコちゃん!?


 癖毛の男性と、同じ制服なネコちゃん!?!?!


 なんでネコちゃん!?!あ、後ろから男性とネコちゃんを追いかける化け物が多数!!

 見たことないなんかゲームでお馴染みのオークもいる!!



「先輩達!!!」


「助けに来たんだがぁ!!!」


「助けて欲しいにゃー!!!」


「フォロン君!!大地の牙使うからそのあと頼む!!」



 あ、よく見りゃオーク氏敵じゃなくて同じ制服で逃げてるだけだ。しかもメガネで大変知的な言葉で指示をしてくれてるー。



「うぉぉぉ!!『怒れ』!」


「『大地よ』!!」


「『牙を剥け』!!」


 逃げてきた男性、ネコちゃん、オーク氏の3人が提督と同じ魔法の杖を走りながら振るうと、


 ゴゴゴご、と音を立てて地面が突然盛り上がって、鋭い岩が地面から勢いよく飛び出す!


 ポン、と相手の怪物達が上へ吹き飛んでいくのが見えまーす。刺さらないんですかね?


「ダメだ!魔力で作った岩はダメージが通らない!!」


 あ、そういうことか。面倒ですねぇ、マジックキャンセルとかいうの。


「『大地よ変われ。岩は鉄に』!」


 と、駆け出したフォロン提督が、三角の魔法陣を片手に出現させてあのトゲトゲ岩に触れました。


 瞬間、岩が光沢ある銀色とやや赤ちゃけたサビのついたものに‪……‬まさか、鉄に変換された!?


 ズシャ!


 そして、落ちてきた怪物は、ちゃんとした物理の法則を守って串刺しになるのでした。


 直後からギュワギュワ言ってまだ生きてる辺り、気持ち悪い怪物ですねこのデーモンだかミミズだか達。



「ふぅ〜‪……‬属性魔法から錬金術で実体を作らないといけないのって‪……‬地味にキツい‪……‬!!」


「はぁ、はぁ‪……‬いやいや、フォロン。まず‪……‬ぜー、はー‪……‬まず、君この規模の錬金術一瞬で出来るのは才能だからな‪……‬!」


「凄いよな、フォロンさんって‪……‬

 俺、オークだからなんて言い訳したくないけど‪……‬

 ふいー‪……‬正直たまにずるいって言いたくなるぐらいだ」


「なにへばってんの男衆!

 まったく情けにゃいわね!フォロン無事!?」


 地面で息を切らしてへたり込む男性とオークさんの肩から、ピンクの毛並みの制服ネコちゃーんが提督に飛びついてきました‪……‬可愛い〜♡


「チェリーナ先輩!無事でよかった」


「まったく!世話が焼ける後輩ばかりにぇ。

 まぁあの子とか後ろの情けない男どもよりはマシね」


「チェリーナ姫!ぼ、僕は‪……‬仮にも、マトゥ・サンディルマン伯爵その人な僕は‪……‬その情けない男の中じゃマシだと思いますよ、ええ本当‪……‬!

 な、同じくらいマシな我が友ギオーラ君!」


「まったく、隣のヘタレ伯爵と同意見ですよお姫先輩‪……‬!

 ケットシーのお転婆姫についてけるんですしね‪……‬ひー!」


 と、お互い力無い拳の突き合わせをする男の二人でした。

 大変な道のりだったんでしょうね、一般人の体力じゃ。


「ところでそちらの子はなんにゃ?

 服もボロボロだにゃ。胸とか肩とかお腹とか丸出しってどれだけ激しく戦ったらそうなるにゃ?」



 ‪……‬ん?



「この子は夕立。私が‪……‬私も例の禁術使って呼び出したんだけど、会うまで結構激しく戦ってたから‪……‬多分その時に」



「あれ?提督見てませんでした?

 これデフォルトでこういう服なんですけど?」



 いや確かに、南半球丸見えですけど。

 後スカート短いですけど‪……‬肩出し、ふともも丸出し、なんなら短いスカートの下は黒い覚悟決まったおパンツではありますけど。



「え?」


「にゃにゃにゃー!?!?」



 そんなすごい顔してしまうような格好で??




「「すみませんちょっと詳しく伺ってもよろしいですか?」」


「男どもなに元気になってるのにゃー!!

 エッチなのはダメにゃー!!猫パンチの刑!!」



 秒でそう尋ねてきた男たちに、ネコちゃーんことチェリーナさんでしたっけ?

 の強烈ストライクレーザー猫パンチが顔面に放たれて再び地面に戻っていきます。



「その格好がデフォルトなの?

 娼婦でももっとマシな格好するよ??」


「わーお、娼婦以下扱い〜。

 いやまぁ確かに割とすごい露出度かもしれないですけど、割とまだ常識の範囲内なんですよこの格好でも」


「どんな常識の世界!?

 エルフの里の部族の格好に近いんだよ、ほぼ!?」



 ふーん、この白露型どころか陽元の駆逐艦装少女デストロイフリートレスの標準的なやつって、結構刺激が強いんですかこの世界は。



「あの、夕立さんとおっしゃいましたけど、所で今までの会話からつまりは召喚されて答えたという事ですけど、お仲間も同じような格好で?」



「何普通に復活してるにゃマトゥ!!」



「ええ、まぁ体温高いせいで冬でもこのぐらいじゃないと死ぬほど発熱しちゃうんで私達フリートレスって」



「普通に答えるのー!?

 でも破廉恥にゃ!!

 これよりすごい格好は、本当に淫魔族の裸同然のやつしかにゃいのー!!」



 ああ、ぷにぷに肉球パンチが気持ちいい〜♪

 じゃなかった、まぁまぁ落ち着いてネコちゃ、じゃなくてチェリーナさん??



「先輩、落ち着いて!!

 考えても見たら別次元から呼び出した、悪魔とか精霊と違ってなった記録もないタイプの子なんだよ!!

 精霊にもそんなすごい格好の子いたじゃん!!」


「まぁ、格好はお気になさらず。安心してください、見せちゃいけないところはちゃんと隠してますよ?」



 さて、危うく脱線しかけた所で、また1匹あの悪魔が来たので一発顔面に叩き込みながらそう話します。

 もうコイツら何匹いるんですかね??



「‪‪……‬オークの私が羨む腕力だ。

 しかし、そこのユウダチという戦力は助かったかもしれない。


 知っての通り敵の魔法無効化マジックキャンセルは、我々の天敵ですからね。


 いくら優秀なフォロン君でも、属性魔法から錬金術のコンボで対処し続けては魔力のリソースが尽きる」


 と、ギオーラさんでしたか?見た目こそ筋肉モリモリマッチョメンのオークながら、冷静に状況を整理していますね。



「全くなぁ!我ら『召喚できな天文学クラブ』、ただでさえ他の2つもちと怪しいというのに」


「そんなこと言うからマトゥは留年するのにゃ」


「グフ‪……‬ま、まぁその分学費を我がサンディルマン家の金からしこたま出しているから許してくれないかな‪……‬??」


 顔がいいのに、3枚目だなこのマトゥとか言う人。



「‪……‬して、この数だけは多い古のデーモンとか言う奴ら、あとクソデカミミズもいい加減元から断たないとジリ貧ではありますね」



 クソデカミミズの地面の下からのアンブッシュも蹴り入れて小せぇ脳ぶち抜いておきます。


 あーもう、そろそろ武器が欲しくなってきましたよー!近づくまで待つのも面倒くさい!!


「いや全部君なら素手で殺せるんじゃないかな?」


「そう言うわけにも行かないので提督?

 さっきから持ってるそのアドミライザー、使ってもらう時が来たようです」



 提督が取り出した、この世界では見慣れない機械ことタブレット端末「アドミライザー」に注目が集まる。


「‪……‬妙な質感だな。近いのは琥珀と‪……‬色は黒曜石かここは?」


「ここも樹脂ですよ多分‪……‬金属も入ってる」


「まぁ聞き限りみなさん進んで勉強する好奇心旺盛な学生さんなのでそりゃあ気になって触っているところアレなんですけど、

 とにかく、フォロン提督にはそのアドミライザーの電源を入れ、初期設定の続きと『大淀おおよど』を起動していただく必要があるんですよ」


「理解しづらさそうだけど、じゃあまずどうすれば?」


「長方形の長い辺のどこかに長い四角の出っ張りがあります。電源ボタンなんです、押してくださ、」






「────見つけたぁ‪……‬♪」






 なんて言うか、その一言聞いただけで背筋にすごい悪寒が走ったんですよ。


 アレは最後の轟沈前の1年前の冬、最後の作戦前の地獄の戦場、東京湾最終防衛ライン攻防で、買った瞬間敵のイタチの最後っ屁が味方に降り注いだときも感じた、嫌な感覚。



「ごめんなさいッ!!」



 ドンッ!!


 その時と同じく、私はなるべく4人まとめて草むらに突き飛ばす様にタックルしました。


 これでもし鼻血とか擦りむいたりしたらごめんなさい。



 ザクッ!!ザクザクッ!!!



「ガッ‪……‬!」


 駆逐艦装少女デストロイフリートレスぐらいの体表の装甲は抜ける攻撃でした。


 背中から何箇所か、胃と、多分左肺。心臓はかする程度。左腕切断。




「夕立‪……‬!?」



「しくりましたか‪……‬ガハッ!」


 流石に、吐血しました。

 青白く光る蛍光ブルーな私の血を。



 何があった‪……‬!?




         ***

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