第11話🌸光の差す方。
「あ!あんたいつぞやの兄ちゃんじゃないか!?」「
雨宿りに入ったお団子屋さんに響く、二人の大声。
秋葉様はどうやら、今日で二人の方と再会したようです。
雲のような髪をした17歳の、霧さん。
前にわたしとはぐれたとき出会ったそうです。
三角巾を巻いた活気のある女性、雨梅さん。
わたしが誘拐されたときに、秋葉様に協力してくれた方です。
(…わたし、秋葉様を困らせすぎなのでは?)
「雨梅さんとまた会えて嬉しいです。俺ですか?ここには雨宿りで…」
雨の中一人で立っていた時は、落ち込んでいる様子の秋葉様。二人と話していると元気になったようです。ふふ、よかった。
「どしゃ降りで大変だったろ。帰りはおれが運ぼうか?」
「
富雨町は山を挟んだ隣町。雨梅さんが住んでいるようです。
「米を荷台で…あの山道をですか⁉」「そうさ。」
「おれん家は米屋。団子はそのついでだよ。」「そうなんですね!」
わたしにそう言いながら、米俵を荷台に乗せる霧さん。
霧さん、若いのに頑張るなぁ…と感心しました。
「いやぁ、まさか兄ちゃんとこんなとこで会えるとは!」
「俺も予想外でした。」
「そういや、あんたは何故この町に来てたんだい?」
「えっと、それが、」
〇ー♢ー〇ー♢ー〇ー♢ー〇
「そうかい…盲目だと色々不利だ。気に病むなよ。」
雨梅さんは俺の話を聞きながら荷台を引っ張る。
俺はその後ろを、支えるように押している。真っすぐに押せるよう、実春に支えられながら。
以前助けてもらったことのお礼…になるかは分からないが、雨梅さんの年も考えて
負担を減らしたかったのだ。
「そうか、しかし職業探し…うちはそろそろ、人手が欲しいとこだ。」
「本当ですか⁉
…その、良かったらですが紹介して頂いても……」
「勿論だとも。」
キツい坂を乗り越えて、ようやく希望が見えてきた。
(坂道は本当にキツかった…)
「荷台ありがとね!さ、入りな!」
雨梅さんの後をついて、実春と俺は玄関にお邪魔した。
「わー!ばーちゃんおかえり!」「あのねばーちゃん、」「ばーちゃんみてみて!」
…子供の声?
「ここ、託児所なのさ。」
〇ー♢ー〇ー♢ー〇ー♢ー〇
しゃがんだ俺の周りに、幼い声と実春の声。
「秋葉様、この子たちとっても可愛いです…!あら、くれるの?」
「うん!
「ふふっ。上手な鶴ですね。」
実春はすっかり子供達と馴染んでいる。
「秋葉様…もしここで働くなら、わたしもここまで送りたいです」
「す、凄く真剣だな…子供は好きなのか?」
「はい!!!素直で元気で可愛くて…!」
(俺も真剣に、ここで働きたいと意思表示を…)
「いただきますの時間よ、皆。」
広い和室に、凛とした声が入ってきた。
「ごはん!」「おなかすいた~」
声の主に次々と駆け寄る子供たち。
「今、雨梅さんが運んでくるわ。…貴方たちは?」
「あ、ご飯ですか?頂きます!」
「実春、そうではなく…
俺は白紅秋葉と言います。こちらは妻の実春」「そ、そういう意味でしたか…//」
「私は
嶺眞さんは淡々と告げる。
(同じ職員になるのなら、はっきりと言わなくては。)
「嶺眞さん、俺はここに勤めたくて来ました。」
「…新入職員?」
「はい。」
嶺眞さんは少しの沈黙の後、
「大歓迎…!!!決定でいいのよね?じゃあ早速、ここの仕事を教えるから…!」
急に近づき早口で言い切った。俺と実春が驚いていると、
「一旦落ち着きな、子供たちのご飯が先だ。」
雨梅さんが入ってきた。
実春によると、大きな
「はいあんた達、よく嚙んで食べな!」「わーい!」
炊き立ての米をよそって、子供たちに配る。嶺眞さんはおかずを運んできたようだ。
「秋葉。食べながらで悪いけど、貴方に仕事を教えるわ。」
雨梅さんが子供たちを見ている所から少し離れ、淡々と
嶺眞さんは説明を始める。
|朝。仕事に出る親から子供を預かる。挨拶が大事。
|午前。健康記録が終わったら子供たちと玩具遊び。天気が良ければ庭遊びも。
|昼。いただきます。食べ終わったらお歌の時間。
|午後。食後、時間が経ってからお昼寝。その間に食器片づけ、軽く掃き掃除。
「…それから親が訪ね次第、さようならの時間。」
「あの、この仕事をずっとお二人で…?」「そうさ。できそうかい?」
この仕事がしたい。やっと、誰かの役に立てる。
「俺、頑張ります!」
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