第6話 10月9日

 昨日は10月の第2火曜日でもあり、伯爵詩人のバイロンの娘、ラブレス伯爵夫人エイダのことを想う、"Ada Lovelace Day"であった。


 数学を愛し、世界初のプログラマーとしても名高いエイダは、まさにコンピューターとネットだらけの現代でも、大変に先駆的な人物であった。


 パンチカードを用い、関・ベルヌーイ数と呼ばれる数論を解くために、世界で初めてプログラミングを書いた人物でもあり、音楽理論を数値やその組み合わせに置き換えることで、数学は芸術をも創造できると言い残すなど、彼女は詩的な数学者でもあった。


 彼女は、コンピューターが普及する前夜の時代に再発見され、また、今AIが急速に拡大する現代においても、「機械は思考できるのか?」という問いに、「人間が実行手順を指示すれば、機械は指示に従い実行や解析を行える。だが、解析をしたからといって、その結果をもとに関係性や真実が何であるかを予測する能力は持たない。」と答え、決してAIが万能に見えるといっても、最終的には人間に基づき、そして、人間に帰するということを淡々と答えた人物でもあり、まさに、今この時代に、歩みを止め振り返るべき人物なのであった。


 エイダは、幼い頃に別れた父バイロンから、生涯愛を受けることはなかった。しかし、皮肉にもバイロンと同じ36歳で、そして、瀉血という同じ原因で亡くなってしまう。


 端麗な容姿で、芸術と数々の女性を愛し、そして、一つの場所に留まることがなかった父バイロン。家族の立場からしたら、何と浮気じみた人間であろうかと思うが、それでもエイダは生涯父バイロンを想い、亡くなってからも側にいることを望み、エイダの墓は、父バイロンの隣に建てられ、今もノッティンガムの小さな教会に、静かに眠っている。


 


 

 

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