第2話 『まだ、ハロウィンだったよ企画、魔王城の掃除に行こう大作戦』

 光が溢れる教会の室内そこは、塵や埃のない清浄な空間。


 ここは群馬県にあるキレーニナッテール教会。


 加賀谷 ヒカル (カガヤ ヒカル)黒髪を奇麗に整え甘い顔立ちの彼はただ一人、講壇こうだんの上を雑巾で磨き上げていた。


 その時、教会の扉が開き、教会に強い光が差し込む。


「狼男さん、フランケンシュタインさん、もうすっかりお買い物出来る賢いしもべですね。いいですよ」


 ヒカルは、教会の入り口に立つ、男達に声をかける。


「しもべちゃうわ」狼男は、そう言うと教会の奥へと入って行く。


「俺、トテモカシコイ、しもべダカラ、カイモノデキタ」


 フランケンシュタインは、ヒカルのもとへ行きそう語り掛けると、ヒカルは柔らかい笑顔で、「とても素晴らしい事です」そう返した。


 教会は、今日も平和で、掃除が行き届き、某掃除メーカー社員さんもレンタル品の交換に定期的通う完璧な世界であった。


 しかしヒカルには、そろそろやらなければいけない事があった。


「フランケンシュタインさん、ミスター吸血鬼さんを事務所に呼んできてもらえませんか? 至急の用事です」


 フランケンシュタインは、事務所へと入って行く。


 彼は事務室の下の光もささない地下室へと入り闇に紛れる。事務所の地下の闇の中では、彼はいつも誕生する前の、暗闇をわずかに思い出せる事が出来る。


 もしかしたら今日こそは、その先の思い出に手が伸ばせるかもしれない。


 そう彼が思った時、彼は不意に名前を呼ばれた。


「フランケンシュタイン、こんな所で何をしている?」


「なんでもない……俺は……」


 フランケンシュタインは、猛烈な頭痛を感じる。すべてを壊してしまう様な……その痛みの中に、もういない博士の映像が、現れて消えた。


「辞めておけ、フランケンシュタインその状態で、思い出してもすべては辛いだけだ……」

 

 吸血鬼は、同じ闇を知る者に対して、憐憫れんびんの心を持ちそう言った。


「ワカラナイ……、ソウダ、ヒカルガ呼んでイル」


 フランケンシュタインの前でゆっくりとギィギーー……棺が開く。

 

 その音もフランケンシュタインは、聞いた覚えがあるような……。


 でも、彼の記憶の中には、いつも混乱と苦痛と悲しみがあった。吸血鬼の言う事は正しいかもしれない。


 二人が、事務所にあがるとカーテンによる闇の中で、ヒカルは机に肘を付き組んだ両手の上に顔を乗せ座っている。


 狼男は、長椅子のソファの上に寝っ転がり2人を待っていた。


「もう、ハロウィンも終わりましたね。だからそろそろ企画を実行してもいい頃、そう私は思いたちました」


「そこは、ハロウィンに合わしとけよ」


 律儀な狼男が、突っ込みを入れる。それによりヒカルの口元の口角が、少し上がるが、ヒカルの組んだ手によって遮られて狼男には見えない……。


「そうですね、狼男さん勉強になります……」


 ヒカルは、昼はただのツッコミ担当の人間の男になりはてた、狼男に礼を言う。これで気を良くした狼男は、これからもヒカルの為、頑張ってツッコミを入れるだろう……これもヒカルの手の内の出来事だった。


「いや……ハロウィンは、まだ終わってないから勝手に終わらすな」

吸血鬼は静かに言った。


「では、改めて『まだ、ハロウィンだったよ企画、魔王城の掃除に行こう大作戦』発動です! 目的地は、栃木県、魔王城です! 長期運転は、疲れるので狼男さん運転おねがいします」


「なんでだよ!?」


           ☆

 

 深夜、彼らは栃木県についた。そして彼らの前にそびえる魔王城の前のお堀は何故か埋められ、歩けるようになっおり、そして塀までもぽっかり穴が開いていた。


「これはチャンスです!」


 ヒカルは夜でも、明るい笑顔でそう言った。


「待て! これお前がやっただろう……」


 狼男が、ヒカルの腕を掴んで言うと、「なんで、わかるんですか?!」


 ヒカルは、驚いて聞き返す。


 「俺の居た小屋をやった時の手口と、まんま同じだからだ」


「なーんだびっくりした。エスパーだったら口封じで、殺そうか焦っちゃいましたよ」


 ヒカルの目がランランと輝き、狼男は思わず手を離す……。ヒカルの手には、日本刀がいつの間に握られていた。


「では、いきましょう!目指すは、最上階の玉座!」


 ヒカルは、日本刀を振り上げそう宣言した。およそ神父には似つかわしくない姿だったが、彼かそんな細かい事は気にしない。


 三体の魔物は、その声に答えなかった。かれらの得物が、ギィー、バキバキ、バサァバサァっと殺意のある音をたてるだけ。


 その音を聞いた途端、ヒカルは前方へと走り出す。


 彼は夜の魔物より、夜の様に禍々しく、足音も立てずに走って行く。


 剣を確実に相手の急所に当て倒して置く。だが、倒されている魔物は微かに呼吸をしている。


「あいつ、確信を持ってあの早さで走っているから、ここ知り尽くしてんな」


「フランケンシュタインならいざ知らず、吾輩達の所在まで探し当てているから驚く事ではない、だが、ここは魔王の城、魔王とどれ位やり合っているか気になる所だ」


「よし、裏切るか!?」


「辞めておけ、魔王が魔物を操るから魔王であってそこには、きっと我らの意思などありはしますまい」


「ただの操り人形になるわけか? いやだね。生きにくい世の中だ」


 彼らは、魔王城を駆けながらそう話している。だが、ヒカルの討ちもらした者達も話す二人の手によって、もはや歩けるものはもう居ない。


 その頃は、ヒカルは王座を守る。ゴーレムの一歩手前にいた。


 ヒカルは、一歩踏み出したゴーレムのひざに飛び乗り、肩へと飛び乗る。そこで左のもう1本の刀を鞘から抜きだし、両手の日本の刀を同時に振り込む、ゴーレムの頭だった部分の石くれが綺麗にな断面で横に飛ぶと、同時に足場にしていた崩れゆくゴーレムの肩から廊下へと飛び移る。


 すべては、ほんの数秒の事で、後ろの二人もさすがに、ヒュー、と彼を称える口笛をし、拍手する。そして笑う禍々しい笑い声が魔王城に響わたる。


 やっと魔王城の王座についた。ヒカルは、声をあげる。


「何故! 前回よりも汚れているのですか!? あんなに掃除をしたのに!!」


「そちが、毎回、毎回やって来て、家事用のゴーレム叩き壊すからだろうが!!」


 ちびっこ幼女魔王が、そこに居た。魔王は、ある程度成長すると、獣に様に巣から追い出されてしまう風習は、あまり知られていない。


 しかしちびまおは、確かにその風習のせいで栃木県に、魔王城を構えていた。だが、ヒカルのせいで、彼女を世話する者はもう居ない……。


 哀れなり、哀れなり、魔王……。


「よし! 掃除して帰りましょう!」


 ヒカルは、初志貫徹の方向に舵をきった。

 

「いや、いやお前駄目だろう。幾ら魔王だからって巣立って間もない子どもの生活を壊しておいてそれは良くない」


「吾輩も親の魔王からの責任問題追及された時、さすがに庇えぬ……」


 ヒカルより僅かに常識のあった、狼男と吸血鬼が彼をいさめる。


 後から来た、フランケンシュタインなんかは、いろいろな所でよく見る、怪物と少女の姿そのままだった。


 ふたりは、何故か手をつないで回っていた。そこに意味があるのか、二人は知らない。神父も吸血鬼も狼男も私もしらないのだ!?


「ヨシ、オレタチのオウちに、カエロウ」


 こうしておかしな神父とフランケンシュタインと吸血鬼と狼男、そして新メンバーの幼女魔王の生活が始まったのだ!!


 あ……ちなみに幼女魔王は、教会の隣に新しく家を建てました。


 お金の出所は定かではありません。


    おわり



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