第30話 表彰と広がる噂
「......なんだ?」
振り返ると桜庭は俺の顔を見てめちゃくちゃ青い顔をしている。
やはり......というか確実に予想はついていたが、恐らくこの三馬鹿トリオが率いる集団に闇バイトのDMを送ったのはコイツだろう。
それなら少し追い詰めてやるか━━。
「は? なんの話? そんな驚いた顔する前にまず出会った人にはおはようの挨拶をするべきじゃないのか? なぁみんな」
「仰る通りです! 佐田さんを前にして挨拶も無しに通り過ぎようなんて許されねーぞクソバカオカマ野郎!」
「う、嘘だろ......」
「嘘? なにが?」
「いや.......なんでもない」
「ふーん。それよりなんでそんなに顔青いの? まさかその顔色の悪さを生かしてアバターの続編に出演が決まったのか?」
「そんなはずないだろう!? そんな嫌味ばかり言うから君は結愛ちゃんにあんなダサく振られたんだ!」
「「はぁ!? テメェアニキに向かってなんて口の聞きk━━」」
「桜庭君、それはどういう事?」
「えっ?」
先生はさっきまでの半分ふざけながら怒った顔ではなく、少し真剣な表情で桜庭を見る━━。
「人の色恋をそうやってダサいとか言うの良くないわよ。たしかに貴方は芸能人だしさぞモテるでしょう、でも人を馬鹿に出来るほど人様に誇れるような恋愛をしてきたの?」
「それは.......」
「あまり人を蔑むような事を言うのは慎みなさい」
「っ......」
なるほど......今のは先生として桜庭に道徳心を叩き込みながら、自分の最近の恋愛事情を重ねて怒ったな━━。
「良いんですよ先生。この人は芸能界で恋愛を謳歌して第二の東出◯大になる予定らしいっすから」
「なんだと.......!」
「佐田......それ不倫して山で女の人囲ってた芸能人だよ。相変わらず口撃力高いよね君は」
「佐田君、貴方もそうやってすぐ皮肉を言わないの。それじゃいくわよ」
「はーい。というわけで藍原そろそろ離れてくれ、このままじゃ俺は唯の変態としてスポットライトが当たっちまう」
「うん、いっぱい抱きついちゃってごめんね佐田。君が凄い事をしたら僕も自分の事みたいに嬉しくなっちゃって......」
「ふっ......まぁ藍原はそういう所で熱いヤツだもんな。お前が友達で良かったよ」
「うん......。じゃあまた後でっ」
「おうっ」
こうして藍原や工業生から解放された俺は風花先生と一緒に職員室へ向かった━━。
* * *
体育館に集められた全校生徒が注目する中俺は壇上に登り、机を挟んで警察の偉い人と向かい合う━━。
はぇぇ.....警察官にもこんなイケてるオジさん、略して"イケオジ"が居るのか。
「ええーオホン、一年C組佐田悠月さん。貴方は令和6年10月××日にチョメチョメ市ホニャララ町にて、通り魔から被害を受けそうになっていた女性をその勇敢な心と行動によって懸命に守り抜き、犯人逮捕に貢献した事を此処に讃え感謝状を贈呈致します。令和6年10月××日、神無川県警警察署長、
俺は堅苦しい挨拶をされると署長から賞状を渡される。
そしてお辞儀をした瞬間、マイクに入らない声を署長に掛けられた。
「君は凄ぇよ、それでこそ漢だ。やっぱ突き抜けたイケメンってのはどいつもコイツも行動で人を惚れさせる存在なんだな。まっ、この俺も最年少で警察署長だけどね」
「......え?」
「いや、こっちの話だ悪いな。まぁ何はともあれコレで君と俺は顔見知りになった訳だ......何か困ったことがあったらすぐに電話してくれ」
そう言って署長さんは俺に一枚の紙切れを渡した。
「ありがとうg......
ってコレ110番じゃねぇか!」
「おっ! 警察署長のオジさん相手に一つも物怖じしないその豪胆さ......嫌いじゃないねぇ」
何だこの人......署長って言ってる割にフランク過ぎるだろ! 何考えてるかワケわかんねーし......。
「はぁ......お褒めの言葉どうもです。でもこの辺で終わりにしてもらっても良いですか? これ以上ピロートークしてると教師達に延長料金取られるかもしれないんで」
「ふっ......確かにそうだ。それじゃあなイケメン」
そう言って最後手渡された番号は本物の携帯番号だった。
「何かあったらこっちに電話するんだ。俺の見る限り君は誰かに恨まれているもしくは狙われている気がするしな」
「あ、ありがとうございます」
意外と周りを見てるんだな......さすが署長さんと言ったところか......?
俺は生徒の方を振り返り賞状を手前にしてみんなへ見せると、その瞬間生徒達からは一斉に拍手が起きる。
だがその隙間からヒソヒソ話が俺の耳に鮮明に入ってきた━━。
『あの子って朝校門の前で吉元工業の不良を土下座させてたイケメンだよね? それが通り魔から女の人を守ってたなんてギャップが凄くない?』
『確かに! あのイケメン具合で腕っぷしもあって勇気もあるとか超カッコいいんですけど!』
『てかあの子警察の人に佐田とか言われてたよね? 確か野上結愛と付き合って最近振られたって噂で聞いたような......』
『そうそう! あの有名な美少女に振られたって聞いたからどんな男かと思ったけど全然スペック高いじゃん』
『だね。それと駅の大通りに芸能人御用達で有名な美容院あるじゃん? その店が昨日イムスタストーリーにアップしたカットモデル知ってる?』
『あー知ってる! 超イケメンでバズってたヤツだそれ! 確か近くに氷の美少女・雪瓜天も映ってたやつだよね?』
『そうそう! それで1日経たないうちにその男の子の動画だけ100万アクセス超えて、デカい事務所がいいね押してコメントでその男の子の情報探してたってヤツ。アレあの子だよ』
え......まじで!? 知らぬ間にそんな事あったの!? てか俺ミヤコさんに盗撮されてたのかよっ!
『うっそ! その事務所って確かイケメン俳優が多く所属する所だよね? それじゃもしこれから有名になったらあの桜庭クンよりヤバくない? 俳優として有名に成ればいろんな所で活躍するじゃん!』
『確かに! 桜庭クンはウチら世代では有名だけど事務所はそんなに大きくないし、活動自体はまだアイドル一本だからねぇ......』
『今のうちにあの子のサインもらっておこうかなぁ』
とまぁ他にも色々言われていたが通り魔を助けたことにより全校生徒に注目された俺は、昨日美容院にいったタイミングが良かったお陰で更にブーストが追加され一気に校内でも知名度が上がったようだった。
いや......本当にタイミングが良かっただけなのか━━?
* * *
体育館から教室に戻る途中の廊下で声を掛けられた━━。
「悠月くん......おはよう......」
「ああ、おはよう千鶴」
申し訳なさそうに声を掛けてきたのは昨日俺を嵌めようとして失敗した桐島千鶴だった。
「昨日は本当ごめん......」
「もう良いって」
「それと今日の朝あの人達に話しつけてくれたんだね、さっき連絡があってもう二度とお姉ちゃんと私には関わらないって言って貰えたよ。本当にありがとう」
「ああ......良かったな」
「うん......言いたいことはそれだけだから......」
桐島は足早に教室へと入っていった。
その後を辿るように俺も教室に入ると元幼馴染が桐島に駆け寄り声を掛ける━━。
「あ、ちずちゃん! ちょっと聞いてよ昨日さぁ━━」
「あのさ結愛、私......
もうアンタと友達やめるから━━」
「えっ......?」
桐島に冷たいセリフを突きつけられた結愛はまるで氷水をぶっかけられたように青白い顔で固まり、取り巻きの女達も目を見開いていた━━。
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