第28話 絆とは
「オカン......今の話マジ......?」
「うん。アンタが一歳くらいの時に父ちゃんと結婚したからね......写真見ればすぐにわかるよ?」
「マジかよ......でもさ、なんでコブ付きの親父と結婚したんだ? オカンその時はまだ16とか17だよね!?」
てか親父やば過ぎだろ......俺と同い年くらいの女の子と結婚するなんてどこの高◯ジョージだよ......。
「それはねぇ......実はアンタの父ちゃんとは少しだけ歳は離れてたけど家が隣の幼馴染だったんだよね。あれは父ちゃんが22歳の時かなぁ? 奥さんに浮気されて捨てられながらもアンタ抱えて一生懸命仕事と子育てしてた父ちゃんの後ろ姿に私は改めて惚れてさぁ......猛アタックしたんだ。最初父ちゃんは私や私の親に悪いと思って私の告白を断ってたけど結局私の押しに負けてね......でもなによりのキッカケはアンタを初めて抱っこした時に泣いてばかり居たアンタが私の顔見てずーっと笑ってくれたんだぁ。それが可愛くて可愛くて......この子を母親として面倒見るのは私しか居ないっ! て誓ったのよ━━。それを見た父ちゃんも遂に心折れて、私と付き合う事を決めてくれたってワケ」
「そんな事が.......でも血が繋がってないのに父ちゃんが死んでからも俺をここまで......」
「あのね悠月、血が繋がっていようが繋がってなかろうが悠月は私にとってなによりも大切な唯一の家族なの。今の時代血が繋がっている親子同士でも傷つけたり殺したり色々あるんだから血の繋がりだけが全てじゃないのよ? 家族の絆っていうのは血が繋がっているから自然に存在するモノじゃない......互いの顔を突き合わせて自分の思いを口や心で伝え合ってこそ初めて存在するモノなの、それを何度も積み重ねて築き上げて行くことで初めて絆が強くなるのよ。だから私は胸を張ってアンタの母親だって言うことが出来る。それに父ちゃんが遺してくれたたった一つの存在だから━━」
こんなに思ってくれる人がいるのに俺はあの日ヤケクソになって通り魔に命を投げ出そうとしていたのか......本当ごめん......。
「それと......通り魔に襲われた日の事だけど、本当は刺されて死にかけた事をなんでちゃんと私に言ってくれなかったの?」
「それは......心配かけたくなくて......。母さん1人で働いてるしさ」
「アンタはいつもそう! さっきも言ったけどいっつも一人で抱え込むのほんとダメ、その癖は絶対に直しなさいっ!」
「分かったよ......ごめんなさい......」
「ミラさんからアンタの事情を少し聞いて最初はビックリしたけど無事で本当によかった......。悠月が居なくなったら私......また独りぼっちになっちゃうもん......っ......」
「玲奈殿......」
「......ミラちゃん、悠月をありがとうね......! っ......うぅっ......」
ミラさんも母さんの言った一言にしんみりした顔をする。恐らく"独りぼっち"という言葉に自分を重ねてしまったのだろう.......。
いくら最強の存在とは言えど孤独には誰も勝てない、ましてや不死身という特殊な環境の中で幾万もの人の生き死にを見て来た人だ......孤独というものがどれだけ辛いか身に染みるほど理解しているはずだ━━。
「玲奈殿、そんなに泣くでない......今はこうして悠月も無事ではないか」
「そうだねぇ......じゃあ悠月、私の所においでっ! お母さんがハグしてあげる!」
「いやいやいいよそういうの、俺はだいj......「うるさいっ! オカンの言うことは大人しく聞きなさい!」」
むぎゅぅぅ━━!
俺は半ば無理やりオカンに抱きしめられた。
下着一枚で酔っ払ったオカンに多感な時期の俺がなんでこんなことされにゃならんのだ......うぇぇ......。
「オカン......頼むから離れて......酒臭ぇから......」
「うるさぁぁいっ! アンタは昔から甘えるのが苦手なんだからたまには良いじゃない! へへへっ......大好きな父ちゃんの匂いがする......」
「やめろ......いやマジで色んな意味で苦しいから......!」
「しょうがないなぁ.......。反抗期はこれだから困る」
はぁ......やっと離れてくれた......。
しかし通りでこんなに美人なオカンと俺の顔が似てないワケだ。血が繋がってなきゃ似る筈無いもんな━━。
「それで悠月よ、今日は何故こんなに帰りが遅くなったのだ?」
「うん、そんな事はどうでもいいから2人はどうやって知り合ったのか教えてくれる!? アンタ無敵吸血鬼なのに俺んちで酔っ払って何してくれてんの!?」
「それはだな......我はこう見えてニンゲンの世界で楽に生きるため、ニンゲンのフリをしながらバイトをしておるのだ。そうでなければスマホは持てないしアマ◯ラでアニメだって見れないだろう?」
「えぇ......そんな安直な理由で天下の最強吸血鬼が働いてるんですか.......。ていうか職場は━━」
「もちろん、献血カーの受付のバイトだ!」
「やっぱり......」
「当たり前だろう? あそこなら血液パックをチューチューチャージし放題だ!」
「それは美味そう......じゃなくて人の血液をinゼリー飲んでる風な言い方に置き換えるのやめてくれます!? しかしミラさんのその見た目じゃすぐにネットで話題になりそうだけど大丈夫なんすか?」
「ふん、初心者のお前と違って我は魅了を上手くコントロール出来る。だから程良く我の見た目を良く見せれば全世界に注目されない程度の評判で次々献血者がやってくる。お陰で我が務めてからその献血カーは他の者たちの約三倍献血率が多いとの事だ。どうだ凄いであろう!」
それって凄いのか? でもこの人がコミケの献血会場でいつものコスプレしながら本気の容姿で受付すれば、とんでもない数のオタクたちが献血してくれそうだ......。
「まぁそんなこんなで今日シフトに入ったらたまたま玲奈殿の会社に献血カーを配置する事になってな? 玲奈殿が昼休みに献血に来てくれたのだ。我は匂いでお前と同居している事がすぐに分かり、我から話しかけたらなんか妙に話が合って仲良くなった流れで居酒屋へ行って一緒に飲んで家まで来たというワケだ━━」
なるほど......全然分からん。
オカンがコミュ力カンストなのは知ってたがまさかミラさんと仲良くなるレベルだったとは......。
というかいずれオカンに言おうとしてた事が悉く先に言われてもうなんて言って良いかわからねぇし、当のオカンは俺を抱きしめて満足したのか机に伏せて寝てるし......。
「そうですか......とりあえず布団リビングに用意するので2人で寝てください。幸いにも明日はオカン仕事休みなのでゆっくりしていってくださいね。ではおやすみなさーい」
「そうか。我も明日はバイトは休みだからお言葉に甘えてゆっくりさせてもらうぞ」
俺は布団を用意した後、酔って寝たオカンをおんぶして布団に寝かせる━━。
「悠月よ......お前は良い母親を持ったな」
「......自慢の母親ですよ。まぁでも俺はマザコンじゃないし、オカンの事実婚相手でも無いですけど」
「そんなの分かっておる。だが忘れるな......我もお前の母の1人だぞ。そして我のツガイはお前だけ......そしてお前のツガイは最終的に我とな「はいはいおやすみなさーい」」
「おい! 最後まで話を聞けぇっ!」
俺はミラさんの話を遮るように2人をリビングに置いて自分の寝室へと向かった━━。
明日こそ俺のベッド買い替えてもらおう......。
* * *
翌日━━。
土曜日なのに学校の俺はリビングでグースカ仲良く寝ている2人をよそに学校へ向かう。
例の件は昨日話せなかったから今日こそ話そう......そう思いながら校門の前に到着すると━━。
「「「お勤めご苦労様です!!」」」
まるで代々木ア◯メーション学院声優科くらい無駄にデカい声で俺に挨拶してきたのは見覚えのあるヤツらだった━━。
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