第24話 神社を破壊してはいけません


「俺も寿司でいいけどどこ行くか? ス◯ロー? それともく◯寿司か?」


「私はどこでも良いですよ? サーモンがあr━━」






「なんだお前ら......もう終わりか?」


「「「な っ !」」」



 奴らが鳥居を潜る直前に俺はスッと立ち上がり後ろから声を掛けると、顔面血まみれで立ち上がる俺を見て奴らは一瞬狼狽えた。


 まぁそりゃそうだよな......あんだけボコボコにしたはずの男が血まみれの状態で平然と立ち上がったんだから━━。



「へへっ.......そんなに驚いてどうした? 俺はこの通りピンピンしてるぜ? 今ならどっかの外国人みたいにここで迷惑ダンスだって出来る」


「う、嘘だろ......」


「なんなんだお前......!」


「そんだけ血まみれで平気なんて......一体どういう事......!」


「血? ああこれね......ほいっ」



 俺は腕で血を拭った後、奴らの目の前に空き缶を放り投げる━━。



「っ......トマトジュースだと......!」


「そういうこと。てなワケで、お前らの持ってるチョコバットなんかじゃ肩叩きにすらならなかったよ」


「ふざけんな......そんなの嘘だっ!」


「そ......そうよ! そんなのハッタリよ! あんなにボコボコにしたんだから身体はアザだらk━━」



 俺はトマトジュースがついた服を脱ぎ、奴らの前で上半身裸になる。



「な......なんだと......馬鹿な......!」


「残念だったな、俺はこの通りアザどころかムダ毛一つないエステティックボディだよ。ダビデ像よりもな」


「そんな......手に今も感触が残るくらいにまで間違いなくボコボコにしたはず......! ふざけんなよ......テメェ一体どんな身体してるんだ!」


「そりゃ毎日欠かさず"ちょ◯ザップ"に通ってプロテインを身体に塗りたくってるからさ。お前らもこうなりたければスポーツ用品店に言ってSAVASザ◯スでも買い占めるんだな」


「そんな訳あるかっ! チクショウ舐めやがって......今度こそボコボコにしてやる!」


「そうよ! さっきみたいにコイツをさっさと懲らしめちゃって下さい!」


「おいおい、そんな水戸の御老公みたいなセリフ今時言うか? まぁいいや......そっちがその気なら俺も武器・・を使っちゃおうかな━━」


「武器だぁ? まさかそこの水場にある柄杓・・でも使おうってのか?」


「おっ、なんだ? 不良のくせにわざわざそんな弱そうな物を挙げるなんて......もしかして散々陰キャだ弱そうだと罵った相手に手加減をせがんでるのか?」


「なんだとっ!」


「でも残念、俺が使うのはこっちだよ━━」


「なっ......!」



 俺は境内に飾ってある狐の石像1体を手で掴み、地面から基礎ごと引っ張り上げる━━。



「じ、冗談......だろ......」



 土煙や砂埃が若干目に入ってゴロゴロしたが、そんな事は気にせず片手で持ち上げたその石像を指の上でクルクル回し、地面にドサリと再び置くと地響きが神社に広がった。



「さ、やろうぜ?」


「お、おおおお前......重機かよ......!」


「こ、こここコイツ人間じゃねぇ!! ていうか罰当たりすぎるだろうが!」


「イカれてやがる......悪いけど俺は手を引かせてもらうぜ!」


「ち、ちょっと待ってよ! あなた達ここら辺の半グレ仕切ってる"ドラゴンヘッド"のリーダーなんでしょ!? 話が違うじゃないですか!」


「そりゃこっちのセリフだ! 依頼は陰キャのザコって話だったろ! それがこんな化け物だなんて聞いてねぇよ! こんなんじゃ俺達どころかここら辺の族を全員引き連れても勝てる訳ねぇ! じゃあな!」


「そ、そうだ! お前はコイツに恨みかなんかがあんだろ? それならお前が1人でなんとかしろよ!」


「はぁ!? ふざけないでよ!」




 ト゛コ゛ォ゛ォ゛ン゛ッ━━!



「ひっ......!」



 桐島を置いて逃げようとする男達に目掛けて俺はその狐の石像を軽く放り投げて逃げ場を封鎖した━━。



「お前ら......

 女を置いて逃げるのか?」


「は.....はぁ......? だってコイツは......!」


「言い訳か? その棒切れで実際に俺を殴りつけたのはテメェらの方だろ? そのオトシマエはどうつけるんだ? どっかの引退したVtuberみたいに別の設定で転生したいか? あぁ?」



 俺は心の中で神様に謝罪しながら尻餅をついて腰が引けているガタイの良いリーダー格の男に詰め寄る━━。


 ごめんなさい狐の神様......後でちゃんと元の位置に戻しますんで許して下さい......。



「ひ、ひぃっ! す、すみません! 俺たちはただ......許してくださいっ!」


「勝手にお祈りでもしてろ......ここは偶然・・にも神社だしな。だがいくら祈ろうがお前らは全員そこに建ってる真っ赤な鳥居の塗料にしてやる。舐めた奴は恐怖で言うこと聞かせれば良いってさっき言ってたもんな━━?」


「いや......そそそそそれは......ぐぁっ!」



 リーダー格ともう一人の頭をそれぞれ掴んで宙に持ち上げると、ヤツはジタバタと必死に抵抗するが俺は気にせず更に持ち上げる。



「や、やめろ......何すんだ......!」


「お前ら、ココをただのラブコメだと思って油断したな? でも残念、この物語は暴力描写アリにチェックしてあるからなんでもアリなんだよ━━!」


「いやだ......や め ろ ぉ ぉ ぉ ぉ っ !」



 ハ゛コ゛ォ゛ォ゛ッ━━!



「く゛ふ゛ぁ゛ぇ゛っ !」



 俺は二人の頭を地面の土に軽く叩きつけるとその頭は手鞠のようにバウンドし、頭から出血しながらその場に倒れる。



「ヨシ、綺麗な彼岸花が地面に咲いたな━━」



 それにしてもリーダーの方は血に脂が乗ってて美味そうだ......。



「健二......和馬......! お前らこの辺じゃ最強って言ってたじゃねぇか......! おい! 目を覚ませよ!」



 残り一人のピアスだらけの男はヘタレこみながら二人の被害者に駆け寄る。



「さて......残りは1人だな」


「ひ、ひぃ.......かかかか勘弁してください......! もうお前に手はださねぇ! 約束する! それも気に入らなければなんでもしますから!」


「分かった。じゃあお前、これからユッケな」


「いや何にも分かっちゃいねぇ!」


「じゃあ二択にしてやる。ケツに発煙筒突っ込んでフィーバーするか、つくねになるかどっち選べ」


「ち......ちくしょう! こうなったら!」


「キャッ!」



 ピアスの男はポッケから果物ナイフを取り出し、近くでへたれ込んでた桐島を無理やり立たせてナイフを突きつける━━。



「そそそそこを動くなよ......動いたらこの女をズタボロにしてやる━━!」


「は......!? 何やってるのよアンタ......!」


「うるせぇっ! 健二も和馬もコイツにやられたのはテメェの所為だ! お前がコイツの居場所なんか教えなきゃ良かったんだ!」


「そんな......」


「いやいや待てよ、俺が話を聞く限りお前らがコイツに俺の捜索を断らせなかったんだろ? 男のくせに責任なすりつけすぎだろ」


「黙れぇぇっ! それ以上喋るならコイツを......」


「助けて.......助けてよ佐田っ!」


「お前も喋るんじゃねぇ! 良いのか佐田クン......コイツがどうなっても━━」










「やるならさっさとやれよ。俺関係ねーし」


「「......は?」」


「よっこいしょっと......石像は元に戻しとかないと神に祟られるもんな。じゃあね二人さん、あとはゆっくり楽しんで。御安全にー」



 俺は石像を持ち上げて元の位置に戻し、神社の階段を降りようとした。



「こ、このクソガキぃぃ.......! やってやる......お前の目の前でこの女ぶち殺してやるっっ!」


「助けて......! 私を助けてよ佐田ぁ!」


「あ? 人に助け求めんならそれ相応の詫びの入れ方ってモンがあんだろ? それすら分かんねーならさっさと地獄に行って閻魔に道徳と四十八手教わってこいよ」



 ピアスの男は桐島に突きつけたナイフを首筋に当てる━━。



「いやぁぁぁぁっ! 佐田......お願い助けて......! 朝はホントごめん! ごめんなさい! 私が悪かった......っ......うぅっ......だからおねがいじまず......た゛す゛け゛て゛く゛た゛さ゛い゛っ━━!」













『ゆずちゃんの現在地に到着しました』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る