第14話 天先輩登場
放課後の教室にて━━。
昨日の一件の会話から今日も桜庭と結愛の間で何かあると思い帰りを誘うのをやめようと思ったが、浮気に気づいているとはまだ一応悟られたくないためとりあえず誘う事にした━━。
「なぁ。今日は一緒に━━」
「ごめん......今日は部活の子と一緒に帰って家で遊ぶから無理かn」
「おっけーりょーかい」
「ねぇゆず、なんか昨日から断り方があっさりしてない?」
「え? じゃあ逆に聞くけど誘いを断った相手にそれ以上縋る必要ある?」
「いやそういう問題じゃなくて━━」
「さぁて今日は流行りが終わったマリトッツォを......」
「すみません、このクラスに佐田悠月君は......あ、いた」
そう言って俺のクラスに堂々と入り周囲の視線を一身に集めながら俺の目の前に立ったのは、昨日中庭で契約したあの
「えっ!! なんで先輩がここに!?」
俺が驚いていると先輩は俺の耳元に近づき囁く━━。
「何故ここに......ですって? 昨日また"放課後"って言ったのに約束を破ったのは誰? 私から3cm以上離れて31時間12分42秒経ってるけど? その間私の目を潜り抜けてメス豚と会ってた? ならソイツを晩御飯にした後私と二人で死んじゃおうか? 良いよね? 断るなんて選択肢は今の悠月に無いよね? 死んだら永遠に私と一つになれるから構わないよね......?」
約束......あっ......!!!
「ああああああっ! すみませんっ!」
「はぁ......今回はその可愛い顔に免じて許してあげる。でも━━次は許さないよ?」
「ま、誠に申し訳ございません......。昨日教室で色々あって放課後の事が頭から抜けてました」
昨日散々ここで揉めたからな......あんな事が無ければイライラせずに天先輩と放課後会うことを忘れずに守れたのに! 全部アイツらの所為だよクソッタレが!
「そうみたいね......じゃあ仕切り直しをしましょう。悠月はこれから予定ある?」
悠月? いつから呼び捨てにされてたっけ俺......まあ良いか。
「ぜーんぜん。たった今そこに居る愛しの彼女に断られたからなーんも無いですよ」
「えっ......ゆずアンタ何言って」
「そう、じゃあ今から少し私に付き合って」
「了解です先輩」
「先輩......? ねぇ? 私の呼び方間違ってるよ? それと合わせてタメ口も忘れちゃった? もう自我を保てなくなる程お部屋でたくさん教育しないとだめかなぁ......? 悠月には悠月のままで居て欲しいけど、約束が守れないなら心を私のお人形にするけどそれは仕方ないよね━━?」
「ひっ!? わ、わかったよ、そら......」
「「「えぇぇぇぇっ!?」」」
氷の美少女が下級生のクラスにやってきたのも他の奴らは驚いていたが、それに加え俺と天先輩が知り合いな事と先輩が自分から男を誘っている事にクラス中がどよめいていた━━。
「嘘......
「やばっ! 一体どんな繋がり!? 陰キャとはまさに月とスッポンの存在じゃん!」
「それに佐田の事下の名前で呼んでたよ? 先輩って確か相手のことを苗字か"アナタ"でしか呼ばないって噂だけど」
「しかも佐田の方は呼び捨てでタメ口だし......!」
なんでこう女子ってのは噂話が好きなのかな......ていうか喋るならもう少し静かに喋れよ。
俺が周りの雑音にうんざりする中、
「こんにちは雪瓜先輩。僕の事知ってますか? 桜庭比呂って言います。もし良かったら仲良くしま━━」
「悠月、モタモタしてないで早く行きましょう?」
「ん......? あの僕桜庭って言うn━━」
「さぁ早く。ここの空気は一部を除いて汚いから悠月の身体に障るわ、とても臭いもの」
「へ、へいっ」
先輩は桜庭の事をその場所に存在しないような圧倒的無視で俺の腕を掴み、さっさと教室を去ろうとする。
しかしそれを間近でみていた結愛は少し焦りながら俺の手を止めた━━。
「ちょっと待ってよゆず! まさか本当に今から
「そうだけど、なんで?」
「なんでって......私たち付き合ってるんだよ!? それは違くない!?」
「うん、でも天とはこの通りタダの友達だから。ねー姉御?」
「そうよ? 何がどう違うの? って姉御......?」
「いやいや、私先輩と仲が良かったなんて初耳だし! 友達は友達でも"女"の友達じゃん! せめて私の許可を得てから遊びに行ってよ!」
「なぁ......結愛はさっきから何言ってんだ?」
今まで長く一緒に居て気が付かなかったけどコイツは棚上げが趣味なのか?
イライラとしながら考えているとさっきまで天先輩に居ない者とされていた桜庭がここぞとばかりにアピールし始める━━。
「そうだぞ彼氏君! 君はこんなに可愛い彼女を放ったらかしにするのか? 雪瓜先輩、そんなスケコマシと遊ばないほうがいいですよ。だから━━」
「もう行きましょう悠月。これ以上こんな人外に関わる必要なんかないわ」
「うん。でもちょっと待って」
俺は結愛の顔を再び見る━━。
「なによ......」
「そんなスケコマシな俺と付き合ってくれてる結愛さんよ、君が誰かと遊ぶ時に俺がこうやって止めたこと今まである? おもちゃ売り場のクソガキみたいに喚き散らした事が一度でもあるか?」
「それは無いけど......。でもそれとこれとは話が━━!」
「異性は別って話か? じゃあ聞くけど、君がこれから会うその"お友達"を異性ではないって俺に完璧に証明できるんか?」
「そ、そんなの当たり前じゃん......」
「そう。なら俺にちゃーんと紹介してくれよ? なんならもういっそこの場でソイツにLIZE通話してよ。それか直接会うならマイナンバーカードでも戸籍謄本でもソイツに持参させて喫茶店かどっかでじっくり話そうぜ?」
「はぁ? 今すぐ会うなんて無理に決まってるじゃん! 向こうには向こうの予定があるんだし」
「え、なんで? 今から会うって言ってたのにそれおかしくね? 俺は天をこうして堂々と紹介できるよ? だってやましい事なんて一つもないもの。何なら血統書付きで証明しようか? さぁ、早くお友達を紹介しろよ━━」
「っ......」
昨日の時点で分かってはいたけど、こうして黙られると完璧な裏付けが証明されて最早呆れしかないな......てかやっぱりコイツ今日も桜庭と遊ぶのは確定か━━。
「.......答えは"沈黙"ね、ハン○ーハンターかよお前。じゃあ俺行くわ、性別どころかニンゲンかどうかも怪しいお友達によろしく伝えといて」
俺は天先輩に引かれながら教室の外に向かう━━。
「待ってよゆず! まだ話は終わってないよ!」
「待てよ佐田! 彼女にこんな顔させて放置か! 雪瓜先輩! さっきからこの僕を無視ですか!?」
「ふぅ......虫どもが囀るわね......」
2人の言葉に天先輩は足を止め、前が詰まった俺は先輩の華奢な背中に"トンッ"と少し触れてしまった━━。
「んっ......///」
「あ、ごめんっ!」
「良いのよ。逆にちょっと興奮したから......」
「へ......?」
「えーっと、悠月の彼女様......でしたっけ? 一つ良いことを教えてあげる。悠月は誰かと違って自分から貴方を裏切るほど
「だぁぁぁっ! それ以上言わなくて良いからもう行こうっ!」
「ふふっ......やっと悠月から"行こう"って誘ってくれた。嬉しい......」
「いやそれは、言葉のあやで......。まぁもう良いや、早くここを出よう」
「待って、最後に貴方の彼女様に伝えさせて。ねぇ彼女様、私は悠月以外の異性は全て"虫にしか見えない"と貴女に集る
「なっ......! それってこの僕が......」
「私、こう見えて
そう言い放った天先輩が奴らを見る目は今までの評判通りまさに"氷"そのものだった━━。
結愛は先輩の言葉と圧にその場から動くことはできず、クラスメイトたちも俺たち2人を誰も止めることはしなかった。
「あのクソ陰キャがなんであんな有名美人と......! しかもこの俺を虫だと!? クソ野郎が......アイツ一体どんな事を先輩に言いやがったんだ! 絶対許さねぇ━━!」
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