第12話

吉田 貴也の場合。


入社してきたときから

遥香をずっと見てきた。


喜怒哀楽が激しく

見てて面白かった。


自分以外の男と話すのをみて

どこか胸の中が黒く渦巻くなにかがあった。


自分には瑠衣(るい)がいる。


そう言い聞かせた。


だか、抑えきれない感情に

自分の理性はどこかに飛んだ。


身体を重ねてからは

瑠衣より遥香を愛している、と

気づいてしまった。


「どーしろってんだよ」


言葉が出る。


瑠衣とはお見合い結婚だった。

親同士が決めた結婚。


瑠衣が自分を愛しているのか

いまだにそれは分からなかった。


瑠衣の気持ちも聞けぬまま

結婚した。


身体の関係はない。


ただごはんを用意し、掃除をし、

家事をやってくれている。


遥香に会いたい。


最近はそれだけしか

考えられなくなっていた。


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