第13話

吉田 瑠衣の場合。


貴也さんと出会ったのは

親が決めたお見合いのとき。


とても優しくて

親が決めたといっても

私は貴也さんに惹かれていた。


この人となら…

そう思って結婚を決めた。


だが、結婚生活とは

思ったようにいかなくて。


私はただの専業主婦。

家事をやるだけの存在。

身体の関係は一度もない。


貴也さんは私の事を愛していない。


最近は、金曜はかならず

帰ってこない。

会社で残った仕事を

片付けているらしい。


私はわかっていた。


貴也さんには他の女性がいる。


そんなこと女の勘とやらですぐわかる。


かすかに香る甘い匂い。

貴也さんの香水の匂いじゃない。


でも、それでも私は貴也さんから

離れない。離れたくない。


たとえ、偽りの結婚生活だとしても。

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