第9話
8階からくるたびに
期待してしまう。
ポン
「おはようございます」
私より小柄な可愛げのあるといえば
いいのか、
白いワンピースを着た女性だった。
「あ、おはようございます」
誰かの奥さんなのか
初めて会った違う部署の方なのか。
わからないが
そう考えていると
「3階の新人さんですか?初めまして吉田です」
吉田。
私の知っている吉田はひとりしかいない。
「よ、吉田部長さんの奥さんですか?」
「部長さんだなんて、あの人そう言われて
るんですね」
と、くすくす笑う。
苦い気持ちがぐるぐると
渦巻く。
こんな幸せそうに笑う女性の
旦那さんと私は一線をこえてしまったんだ。
勝てるはずがない。
家庭を壊せない。
「大丈夫ですか…?」
「…すみません!」
エレベーターが1階になった瞬間に
走った。行く宛てなんてなかったけど
走るだけ走った。
「はあ、はあ、はあ」
「あ!遥香ちゃーん!ってどしたの?
すごい青白いよ?」
美咲に会った瞬間
涙が止まらなかった。
「ちょ!大丈夫?!どっかはいろ!」
吉田部長とのこと、
奥さんと、出会ってしまったこと。
全て話した。
「そんなのー美咲ちゃんはー気づいてましたよん」
「…え?」
「遥香ちゃん、顔に出すぎ!
そんなんじゃすーぐバレるよ?」
「もう、部長とは会わない。
仕事のこと意外では絶対に」
「それで踏ん切りつけれるの?そんな簡単なこと?」
自信はなかった。
なんなら、いますぐにでも会いたい。
会って確かめたい。
奥さんがいいならそっちをとればいい。
私とのことが遊びならはっきり言って欲しい。
今日改めて部長の指を見た。
指輪をしていた。
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