第4話


「サーモンパイだよ」


「もぐもぐもぐ」

あぁ、またあの匂いだ。

この匂いは私を駄目にする。


「サーモンパイなんて知ってます」


「独り言言ってたから教えてあげたんだよ?」


図星をつかれた。

美咲に助けを求めたが

すでに他の男性社員と

楽しそうに喋っていた。


遥香!平常心よ!平常心!

大丈夫!東京に来て素敵な恋愛を

するのだから!

この人だけは絶対だめ!


と。自分に言い聞かせて。


「名前も伝えずすみません

吉田 遥香です」


「偶然!」と、男性は笑った。


「???」


「吉田 貴也、よろしくね」


偶然が偶然を呼んで

私たちの関係は回り始めた。


それは決して、鈍く重くではなく。

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