愛の棲家



「そんな縁っこによって狭くない?脚伸ばせば良いのに。」


浴槽に腕を乗せる御形は、膝を抱え肩まで浸かり距離を取ろうとする雛月に言う。


「・・・・・お気になさらないで下さい。」


浴室には石鹸と檜の香りがした。


御形の濡れる髪から雫が垂れ、鎖骨の窪みに落ちた。


雛月は長い髪をクリップで留め、細い首筋には前の夜、御形が付けた跡が残っていた。



ちゃぷんと、水面が揺れる。


逃げようとするが、背中に浴槽の壁が当たり逃げ場は無い。


御形は膝を抱える腕を掴むと、浮力を使い体を反転させ雛月を腕の中に閉じ込めた。


「肩の力を抜いて、リラックスして。」


蜜を注ぐ様に耳元で囁きながら、お湯の中で雛月の体に手を這わす。



「嫌がられるともっと虐めたくなるんだよね。」


「・・・・・底意地が悪いですね。」


「うん。」


赤く染まる耳に、御形は歯を立てた。

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