第37話 詩と共に歩む新たな仲間

千草と香織が詩のワークショップを成功させた後、彼女たちは詩の力でさらに多くの人と繋がりたいという気持ちを強く感じていた。詩を通じて、自分たちだけでなく、他の人々の心にも影響を与えることができるという実感が、彼女たちに新たな活力を与えていた。


ある日、千草が大学のキャンパスを歩いていると、文学部の掲示板に「詩のクラブメンバー募集」というポスターが貼られているのを見つけた。


「詩のクラブ?こんなものがあったんだ…」

千草は少し驚きながらも、興味を引かれ、ポスターの連絡先にメールを送ってみることにした。詩のクラブがあれば、自分と同じように詩を愛する仲間がいるかもしれないという期待が膨らんだ。


数日後、千草は「詩のクラブ」の集まりに参加することになった。小さな教室で開かれたその集まりには、10人ほどのメンバーが集まっており、みんなが詩について真剣に話し合っていた。


「こんにちは、初めて参加する千草です」

少し緊張しながら挨拶すると、温かい拍手が返ってきた。リーダーの佐藤という男性がにこやかに挨拶をしてくれた。


「ようこそ、千草さん。ここでは詩を書いたり、詩について自由に話し合ったりする場として活動しています。あなたの詩の世界を聞かせてもらえるのを楽しみにしていますよ」


千草は安心しながら席に着き、早速他のメンバーが自分たちの詩を発表するのを聞いた。様々なバックグラウンドを持つ人々が集まり、詩を通じてお互いの感情や考えを共有するその雰囲気は、ポエムの会に似ていて懐かしい気持ちになった。


集まりが終わった後、佐藤が千草に声をかけてきた。


「千草さん、今日の集まりはどうだったかな?」


「すごく楽しかったです。詩を通じてみんながいろんな視点で語り合うのが素敵だと思いました」

千草は素直に感想を伝えた。


「そう言ってもらえて嬉しいよ。詩のクラブは、ただ詩を書く場というだけでなく、お互いの感情や考えを分かち合うことで、成長できる場にしたいと思っているんだ。詩を書くことが、誰かと繋がるきっかけになればいいなって」


佐藤の言葉に、千草は共感した。自分が香織と共に詩を通じて新しい繋がりを見つけたように、詩には人々を結びつける力がある。千草は、このクラブで新たな仲間たちと一緒に詩を書いていけることにワクワクしていた。


次の集まりで、千草は自分の詩を発表することにした。これまで書き溜めてきた詩の中から、特に思い入れのあるものを選び、ゆっくりと読み上げた。


「未来の扉」


目の前に広がる

まだ見ぬ未来


扉は静かに閉ざされているけれど

その向こうには、きっと

無限の可能性が待っている


私はその扉の前で

少しの不安と、少しの期待を抱えている


いつか、その扉が開くとき

私の心にはどんな景色が広がるのだろう?


今はまだわからないけれど

私は歩みを止めずに

未来の扉を開くことを夢見ている


千草が詩を読み終えると、しばらく静寂が続いた後、佐藤が口を開いた。


「素晴らしい詩だね。未来への不安と希望が入り混じった感情が、とても繊細に描かれているよ。僕たちも皆、未来に向けて扉を開こうとしているんだなと、共感しました」


他のメンバーも次々に感想を述べ、千草の詩に触発されたという声が多く上がった。


「千草さんの詩には、すごく柔らかいけど力強いメッセージがあるね。未来に対して前向きに進んでいく姿勢が伝わってきて、すごく励まされたよ」

一人の女性メンバーがそう言ってくれた。


「ありがとうございます。この詩は、私自身が進むべき道を見つけるために書いたものなんです。でも、こうして皆さんに聞いてもらえて、詩がもっと広がっていくような気がしました」


千草は素直に感謝の気持ちを述べた。詩を通じて自分の心を伝え、それを他の人々が受け止めてくれる。その瞬間、千草は詩を書くことの意味を改めて実感した。


その日以来、千草は詩のクラブに定期的に参加するようになり、他のメンバーとも詩を通じて深い交流を築いていった。詩を書くことが、彼女にとっては自己表現だけでなく、他者との絆を育む手段であることを再確認し、ますます詩にのめり込んでいった。


また、クラブ活動を通じて、千草は自分がこれから何を目指していきたいのかが少しずつ見えてきた。詩を書くことで自分の内面を見つめ、そして詩を教えたり、広めたりすることで他の人々に影響を与える存在になりたい。そんな思いが心の中で芽生え始めていた。


ある日、香織が千草に声をかけた。


「千草ちゃん、詩のクラブでの活動、すごく楽しそうだね。私も一緒に参加してみたいな」


「もちろん!香織ちゃんも絶対楽しめると思うよ。みんな詩を愛していて、いろんな考え方が共有できる場だから、きっと気に入るはず」

千草は喜んで答えた。


こうして、香織も詩のクラブに加わり、二人はさらに詩の世界を深く探求していくことになった。詩を書くことが彼女たちの生活の一部となり、未来への道を切り開く大切な手段となっていった。


詩が繋げた新しい仲間たちと共に、千草と香織はこれからも詩を書き続ける。詩が未来への扉を開く鍵であり、そこに待っている無限の可能性を信じながら、彼女たちは歩みを止めることなく進んでいく。


詩が導く新しい物語は、これからも続いていく。

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