第34話 詩が繋ぐ新たな絆
千草が再び仲間たちと詩を通じて再会を果たし、新たな決意を胸に抱いた日からしばらく経ったある日、彼女は大学で新しい出会いを迎えることになった。それは、思いも寄らない形での詩との絆だった。
千草が大学のカフェでノートを開いて詩を書いていた時、隣のテーブルに座っていた一人の女子学生が声をかけてきた。
「それ、詩を書いてるの?」
千草は驚いて顔を上げると、笑顔を浮かべたその学生と目が合った。彼女は同じクラスの青井香織だった。いつもクラスの中心にいる明るく元気な彼女が、詩に興味を持っているとは千草は想像もしていなかった。
「うん、そうだよ。ちょっと時間があったから詩を書いてたの」
千草は少し照れくさそうに答えた。
「すごい!私、詩に興味があって、でも書く勇気がなくて…今、あなたが詩を書いてるのを見て、思わず声をかけちゃった」
香織は嬉しそうに話した。
「本当に?詩に興味があるなら、ぜひ書いてみたらいいよ。詩を書くのって、誰でもできるんだよ」
千草は優しく微笑んで香織に言った。
「そうかもしれないけど、私は詩なんてちゃんと書いたことがないし、どうやって書けばいいのかもよく分からなくて…」
「大丈夫だよ。私も最初はどうやって書けばいいのか分からなかった。でも、詩は自由だから、自分が感じたことをそのまま言葉にすればいいんだよ」
千草は、自分がポエムの会で学んだことを思い出しながら、香織を励ました。
香織は少し考え込んだあと、千草に向かって言った。
「じゃあ、今度一緒に詩を書いてみてもいいかな?詩を書くことで、自分の気持ちを整理できるかもしれないって思ってるんだ」
「もちろん!一緒に詩を書こうよ。詩を書くことは、心を整理するのにもすごくいい手段だから、きっと楽しめると思うよ」
その週末、千草と香織は大学近くの公園で待ち合わせて、一緒に詩を書いてみることにした。青空の下、木々のざわめきや鳥のさえずりを感じながら、二人は自然に言葉を紡いでいった。
「詩を書くのって、こうやって自然の中で感じたことをそのまま言葉にしていくんだね。なんだかすごくリラックスできる」
香織は、初めて詩を書いてみた感想を嬉しそうに話した。
「うん、詩を書くことで、自分の心が静かになるよね。自然の中にいると、特にそう感じるんだ」
千草は頷きながら、香織の詩を読み返した。
香織が書いた詩には、初めてとは思えないほど豊かな感情が込められていた。彼女が普段、明るく元気に見せていた裏側には、いろいろな感情や考えがあったのだと、千草はその詩を読みながら気づいた。
「心の静けさ」
風がそっと吹き抜ける
その中で、私は静かに耳を澄ます
忙しい毎日の中で
忘れていたものが、今ここに戻ってくる
静けさの中に、自分を見つける
その一瞬が、私を包み込む
私は、この風の中で
静かにただ息をする
香織が読み上げると、千草は目を輝かせた。
「すごく素敵だよ!風が吹く中で、自分の心が静かになる感じがすごく伝わってくる」
「ありがとう。こうやって詩を書くのって、本当に楽しいんだね。なんで今まで挑戦しなかったんだろうって思うくらい」
香織は笑顔を浮かべて答えた。
「これからも一緒に詩を書こうよ。詩を書くことで、どんどん自分の心と向き合えるし、きっともっと楽しくなるよ」
「うん、ぜひお願い!」
香織は勢いよく頷いた。
その後も、千草と香織は詩を書き続け、詩を通じてお互いに心を深く知っていった。香織は明るく元気な外見の裏で、時には悩みや迷いを抱えていたが、詩を書くことでそれを少しずつ解きほぐしていけるようになった。
千草は、詩を通じて新しい友人との絆を深めながら、自分自身の成長も感じていた。詩を書くことがただの自己表現ではなく、他者との心のつながりを生む手段であることを改めて実感した。
ある日、香織が突然、千草に提案した。
「千草ちゃん、実は私ね、詩を書いてみたら、もっとたくさんの人と共有したくなったんだ。大学で詩をテーマにした小さな発表会みたいなのを開けたらいいなって思って」
「詩の発表会?」
千草は驚きながらも、そのアイデアに胸を弾ませた。
「そう。詩を読んでみたい人や書いてみたい人が集まる場所を作って、お互いの詩を発表し合う場を作れたら楽しいんじゃないかって思ってるんだ」
千草はその提案に賛同し、すぐに準備に取り掛かることを決意した。詩の力をもっと多くの人に伝えるための新しい挑戦が始まろうとしていた。
「詩の発表会、すごくいいアイデアだよ!私も手伝うから、一緒にやろう!」
千草は香織に笑顔で答えた。
こうして、二人は詩の発表会の企画を進めていくことになった。大学内で詩を愛する仲間を集め、詩を通じてお互いの心を共有できる場を作るという新たな挑戦が始まった。
千草は新しい友人との絆を深め、詩がさらに広がっていくことを楽しみにしながら、自分の未来にも希望を抱いていた。詩を書くことで、これからも新しい出会いや挑戦が彼女を待っていると確信していた。
詩が彼女の道を照らし、また新たな旅が始まる。
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