第32話 新たな始まり
卒業が近づくにつれて、ポエムの会のメンバーたちはそれぞれが進むべき道を少しずつ見つけ始めていた。詩を書くことが自分たちにとってどれほど大切なものであるかを理解し、彼らは未来に向かって歩み出していた。
そんなある日、千草は部室で健太と一緒に最後のミーティングを行っていた。これから迎える卒業に向けて、ポエムの会がどうなっていくかを話し合うことが目的だったが、二人とも少し寂しさを感じていた。
「ポエムの会、どうするんだろうね」
千草は静かに呟いた。部室の窓からは、春の柔らかい日差しが差し込んでいた。
「僕たちが卒業した後も、誰かが続けてくれるといいけど…」
健太も少し考え込むように答えた。
「でも、この会は、私たちが築いたものだよね。それに、詩を書き続けることが私たちにとって一番大事なことだと思う。だから、誰が続けるかよりも、私たち自身がこれからも詩を書き続けることが大切なんじゃないかな」
千草は少し微笑んで健太に言った。
「そうだね。詩を書くことは、ここで終わるわけじゃないし、これからも続けていけるものだもんな」
健太も微笑み返した。
その時、ドアが開いて、麗美と佐奈、北村が部室に入ってきた。彼らもこの最後のミーティングに参加するために集まったのだ。
「みんな、これからのポエムの会について話してたんだよね」
千草が話を切り出すと、全員が頷いた。
「私も、これからどうなるか考えてたんだけど…卒業しても、詩を続けていきたいって気持ちは変わらないんだよね」
麗美が真剣な表情で言った。
「うん、私もそう思ってた。詩を書くことが自分の心の支えになってるし、これからもずっと書き続けたい」
佐奈も同意し、少し微笑んだ。
「詩を書いて、みんなとこうして共有できることがすごく大事だって気づいたんだ。だから、卒業しても、またこうやって集まれるといいな」
北村も続けて言った。
千草はその言葉に心から共感した。
「卒業しても、また集まろうよ。ポエムの会がなくなっても、私たちが詩を書き続ける限り、こうやって集まることはできると思うんだ」
その提案に全員が賛成し、彼らはそれぞれの進路に進みながらも、詩を書くことを通じて繋がり続けることを約束した。
そして、卒業式の日がやってきた。桜が咲き誇る校庭で、千草たちはそれぞれの未来に向かって歩き出す準備をしていた。校舎を出るとき、千草はふとポエムの会での思い出が蘇ってきた。詩を書き、仲間たちと共に過ごした日々が、今も彼女の心の中で鮮やかに輝いていた。
「千草ちゃん、これで一つの区切りだね。でも、私たちはこれからも詩を通じて繋がってるよ」
麗美が隣に立ち、千草に微笑みかけた。
「うん、そうだね。これで終わりじゃない。これからが本当の始まりだよ」
千草はそう答え、深く息を吸い込んだ。
卒業式が終わると、千草たちはもう一度ポエムの会の部室に集まった。ここで過ごした時間が彼らにとってかけがえのないものだと実感しながら、彼らはそれぞれの未来に向けて最後の言葉を交わした。
「これで一旦お別れだけど、また集まろうね。そして、これからも詩を書き続けていこう」
千草が静かに言うと、みんなが笑顔で頷いた。
「またみんなで詩を書こう。これからも新しい詩を紡いでいくんだ」
健太も力強く答えた。
卒業後、千草は大学に進学し、詩を書き続けることを決意した。新しい環境でも、彼女は詩を通じて自分の感情を表現し続けた。時折、ポエムの会の仲間たちと集まり、詩を書いたり、互いの近況を話し合ったりする時間は、彼女にとって変わらない安心感を与えてくれた。
詩は、彼らの絆を深め、成長を支え続ける存在だった。そして、詩を書くことで新しい人との出会いや、自分自身の成長を感じながら、彼らはそれぞれの道を歩んでいった。
ある日、千草は部屋で新しい詩を書いていた。これまでの経験や仲間たちとの思い出、そしてこれからの未来への希望を込めて、彼女はゆっくりとペンを走らせた。
「新たな旅路」
風が吹くたびに
新しい道が広がる
未来はまだ見えないけれど
その風が私を導いてくれる
仲間たちと過ごした日々は
私の中で色あせることはない
これからも私は
風に乗って進んでいく
その先に待っている景色は
きっと、私だけの未来
詩を書き終えると、千草は窓の外を見上げた。風がそっと頬を撫で、彼女は未来への期待を胸に感じながら微笑んだ。
「これからも、詩を書き続けよう。自分の心を紡ぐために、そして誰かと繋がるために」
千草の新たな旅立ちは、詩と共に始まった。彼女の未来には、詩を通じて紡がれる物語が無限に広がっている。
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