第31話 詩が導く新たな旅立ち
詩集「風と未来の詩」の発表会が成功し、ポエムの会のメンバーたちは、詩を書くことが彼らにとってどれほど大きな意味を持つかを再確認した。詩集を手に取るたびに、それぞれの詩が彼らの心をつなぎ、これからの未来に向けて一歩踏み出す力を与えてくれた。
ある日の放課後、ポエムの会の部室で、千草は静かにノートを開いて詩を書いていた。これまでの活動が一区切りついたことで、彼女は新たな目標を探していたが、次に何をすべきかがなかなか見えてこなかった。
その時、ドアが開いて麗美が入ってきた。彼女は、いつも元気な表情をしていたが、今日は少し真剣な顔つきだった。
「千草ちゃん、ちょっと話してもいい?」
「もちろん、どうしたの?」
千草はノートを閉じて、麗美の話に耳を傾けた。
「私、最近ずっと考えてたんだけど、卒業が近づいてきて、これからどうしようか迷ってるんだ。詩を書くのが好きだけど、それをどうやって未来につなげればいいのか、まだ見えなくて」
麗美の言葉に、千草もふと自分自身のことを思い出した。彼女もまた、詩を書くことが自分の心の中にどれほど大きな存在であるかを感じていたが、それをどうやって将来に生かしていくかということに悩んでいた。
「麗美ちゃんもそう思ってたんだね。私も実は同じことを考えてたよ。詩を書くことが好きだけど、それが未来につながる道は、まだはっきりとは見えてこないよね」
二人はしばらく黙って、外に広がる夕焼けを見つめていた。静かな時間が流れる中で、お互いの不安や期待が少しずつ言葉になっていった。
「詩は、私たちの心を整理したり、誰かとつなげたりしてくれるけど、どうやってそれを自分の人生に生かせるかって、まだ答えは出てないんだよね」
麗美は小さな声で呟いた。
「そうだね。でも、詩を書くことは私たちにとって大切なものだから、きっとそれが未来を照らす道しるべになってくれると思う」
千草は、言葉に少しだけ希望を込めて答えた。
「私、大学に進学しようと思ってるんだ。でも、進学した後も詩を書き続けたい。詩をもっと学んで、いろんな人に届けたいなって思ってる」
麗美は、少しずつ自分の思いを口にした。
「大学に進んで、詩をもっと深めていきたいんだね。それって素敵な夢だよ!私も、これから詩を書き続けていきたいと思ってるけど、どうやって進んでいくかはまだ悩んでるところなんだ」
千草も自分の気持ちを素直に伝えた。
その後、ポエムの会に集まったメンバーたちも、それぞれの将来について話し始めた。卒業が近づく中で、みんなが少しずつ進路について考え始めていたが、共通していたのは、詩を書くことを続けたいという思いだった。
「僕も大学に進学するつもりだけど、詩を書き続けたいんだ。詩が自分の人生の中で、どんな役割を果たしていくのかを見つけていきたいと思ってる」
健太が真剣な表情で話した。
「私も詩が好きで、もっと深く詩を学びたいと思ってる。でも、詩を仕事にするってどういうことなのか、まだよくわからないんだよね」
佐奈も少し不安そうに言った。
「それでも、詩を通じて誰かに何かを伝えたいって思ってるんだ。それが私たちの一つの道になるんじゃないかな」
北村が前向きに声をかけた。
メンバーたちはそれぞれが抱えている不安や期待を共有しながら、詩を書くことが自分たちにとって大きな意味を持つものであることを再確認した。将来に対する明確な答えはまだ見えていないが、詩が彼らにとっての指針であることは変わらなかった。
その後、千草は家に帰り、ふと母親に相談することを決意した。母親は千草が詩を書くことをいつも応援してくれていたが、将来について話す機会はあまりなかった。
夕食後、千草は母に向かって話し始めた。
「お母さん、私ね、これからどうやって詩を書き続けていけばいいのか、少し悩んでるの。詩を書くことは大好きだけど、それが将来にどうつながるか、まだよくわからなくて」
母親は静かに千草の話を聞いてから、優しく答えた。
「千草、あなたが詩を書くことを好きなら、それがあなたの道になるんじゃないかしら。無理に答えを急がなくても、詩を書き続けることで、自然と道が見えてくると思うわ」
母親の言葉に千草は少し安心した。未来に対する不安が完全に消えたわけではないが、詩を書くことを続けることで、少しずつ答えが見えてくるかもしれないという希望が心に灯った。
次の日、千草はポエムの会のメンバーたちに母親の言葉を伝えた。
「お母さんがね、詩を書き続けることで自然と道が見えてくるって言ってくれたんだ。だから、私も無理に答えを急がずに、これからも詩を書き続けていこうと思ってる」
「それ、すごくいい言葉だね。僕も、今すぐ答えを見つける必要はないって思う。詩を書いていけば、きっと自然に道が見えてくるよね」
健太が賛同し、他のメンバーも頷いた。
「詩が私たちにとっての道しるべなら、これからもそれを信じて進んでいける気がするよ」
麗美も微笑んで言った。
こうして、ポエムの会のメンバーたちは、それぞれが自分の未来に向かって歩き出す準備を整えた。詩を書くことで自分自身と向き合い、詩を通じて他者と繋がることで、彼らは新しい世界に一歩ずつ進んでいく。
詩が彼らの道しるべであり、未来への扉を開く鍵となっていることを、メンバー全員が強く感じていた。これからも、詩を通じて成長し、互いに支え合いながら、新たな旅立ちを迎える日が来るのだった。
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