第30話 詩が織りなす新たな夢

詩の交流会が大成功に終わり、ポエムの会のメンバーたちは、詩の力を改めて実感していた。参加者たちが自分の詩を通じて感じたことを表現し、それを共有することで、お互いの心が繋がる瞬間は、彼らにとって大きな喜びだった。


そんなある日の放課後、千草は部室で一人、ノートに詩を書いていた。詩の交流会が終わった後、彼女は新しい目標を見つけたかったが、まだ具体的なアイデアが浮かばずにいた。詩を通じてできることが広がっている中で、次に何をすべきか、彼女の中に小さな迷いがあった。


その時、ドアが開いて、健太が入ってきた。


「千草さん、ちょっといいかな?」


「もちろん、どうしたの?」

千草はノートを閉じて、健太に笑顔を向けた。


「実は、今度また新しいことをやってみたいなって思ってるんだ。僕たちの詩をもっと広い場所で発表できないかなって考えてて…詩集を作ってみようと思うんだ」


「詩集?」

千草は驚いて健太の提案に耳を傾けた。


「そう、みんなで詩を集めて一冊の本にしてみたいんだ。それを学校内で発表するのもいいし、もっと広い場所に届けることができたら、僕たちの詩がさらに多くの人に届くんじゃないかなって」


千草はそのアイデアに心が弾んだ。詩集を作るという発想は、これまでの活動とは違い、詩を形に残すことができる新しい挑戦だった。


「それ、すごく素敵なアイデアだね!詩集なら、詩を読むだけじゃなくて、いつでも手元に残しておけるし、詩がもっとたくさんの人に伝わる気がするよ」


「そう思う?僕も、交流会が終わった後にもっと詩を形にして残したいって思ったんだ。それに、詩集があればいつでも誰かに詩を読んでもらえるし、今までの僕たちの活動を一つの形に残せる」


千草は健太の熱意に共感し、すぐに詩集作りに賛同した。


「他のみんなにも声をかけて、みんなの詩を集めようよ。詩集を作って、それをどうやって発表するかも考えたいね」

千草は新しいアイデアに胸を膨らませながら答えた。


次の日、ポエムの会に集まったメンバーに健太の提案が伝えられると、みんながそれぞれ前向きな反応を見せた。


「詩集を作るなんて、すごくワクワクするね!自分の詩が本の中に載るなんて、想像するだけで嬉しいよ」

麗美は興奮した様子で言った。


「みんなの詩を集めて一冊の本にするって、まるで自分たちの詩が一つの物語になっていくみたいだね」

佐奈も賛同し、少し恥ずかしそうに微笑んだ。


「自分の詩が形に残るって考えただけで、責任感が湧いてくるね。でも、それが楽しそうだ!」

北村も前向きに意見を述べた。


メンバー全員が詩集作りに賛同し、さっそくそれぞれがこれまでに書いた詩の中から、自分のベストの作品を選び出す作業が始まった。詩集には、これまでの個々の成長が詰まった詩を載せることが決まっており、みんなが真剣に自分の作品と向き合った。


数週間が経ち、メンバーたちはそれぞれの詩を詩集用に選び終えた。千草も、自分がこれまで書いてきた詩の中から、一番心に残っている詩を選んでいた。


彼女が選んだのは、「風のささやき」と「未来の風景」だった。どちらも、自分の内面と向き合い、未来への希望や不安を表現した詩であり、今の彼女自身を象徴するものだった。


「これを詩集に載せよう。私が詩を書いてきた意味を、ここに込められる気がする」


千草はそう心に決め、他のメンバーに詩を見せた。メンバーたちも、それぞれが選んだ詩を持ち寄り、互いに作品を見せ合うことで新たな発見があった。お互いの詩を読んで、また一段と成長し合っていることを感じることができた。


詩集のタイトルは「風と未来の詩」に決まった。風は彼らがこれまで書いてきた詩の中で象徴的な存在であり、未来は彼らが詩を通じて見つめ続けているテーマだった。


詩集は、学校の図書室で発表されることになり、発表会も開かれることになった。メンバーたちは詩の発表会を行いながら、自分たちの詩集を手に取ってもらえることを楽しみにしていた。


発表会当日、メンバーたちは詩集を手にして、学校の図書室で詩を朗読した。詩集は、彼らがこれまで活動してきた証であり、言葉に託した感情が一つの本に集まったことで、彼らは大きな達成感を感じていた。


発表会の後、千草はふと未来に目を向けた。


「詩を通じて、これからも自分たちの気持ちを伝えていきたい。詩集を作ることで、新しい一歩を踏み出せた気がする」


千草は静かに呟いた。詩を書くことが、ただの自己表現ではなく、誰かの心に触れ、そして自分自身を深く見つめ直す道であることを改めて感じていた。


「これからも詩を書き続けて、もっと多くの人と繋がりたいな」

千草は未来に向けてそう決意した。


詩集「風と未来の詩」を手に取ったポエムの会のメンバーたちは、これまでの活動を振り返りながら、これからの未来に希望を抱いていた。詩が繋ぐ絆は、これからも深まり続け、新たな挑戦が彼らを待っている。


詩が彼らの道しるべとなり、新たな夢へと導いていく――。

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