第29話 詩の力で繋がる心

佐奈が詩を通じて心を癒した経験が、ポエムの会の仲間たちにも新たな気づきをもたらした。詩には人の心を整理し、時には癒し、そして他者と繋がる力があることを実感し、メンバー全員がそれぞれの詩に対する姿勢を深めていった。


ある日の放課後、部室に集まったメンバーたちは、千草が持ちかけた新しい提案に耳を傾けていた。


「今度、詩の交流会を開いてみたいなって思ってるの」

千草は少し興奮気味に言った。「学校外の人たちにも詩を書いてもらって、みんなで詩を通じて交流できたら、もっと詩の魅力を広げられるんじゃないかなって思ってるんだ」


「詩の交流会か…それ、面白そうだね!」

健太が興味を示した。「学校だけじゃなくて、いろんな人たちが詩を書いて共有する場があれば、もっといろんな考えや感情が詩を通じて伝わりそうだね」


「そうだね。詩って、ただ読むだけじゃなくて、共有することでより深い意味が出てくるし、いろんな視点から考えられるようになるかもしれない」

麗美も賛成した。


「交流会をやるなら、どんな感じにするの?」

佐奈が少し不安そうに聞いた。


「まずは、地域の人たちにも参加してもらえるように呼びかけてみようと思うんだ。詩を書くことが好きな人や、興味を持っている人が自由に詩を発表できる場を作って、そこでお互いに詩を読み合ったり感想を言い合ったりするんだよ。みんなで詩を共有することで、もっと詩が楽しくなると思うんだ」

千草は自分の考えを詳しく説明した。


「なるほど、学校だけじゃなくて、地域の人たちとも詩を通じて繋がれるってことか。それは素敵だね。いろんな人の詩を聞いてみたいし、僕たちの詩ももっと多くの人に伝えられるかもしれない」

北村が前向きな反応を見せた。


「それなら、詩を書くのが初めての人でも参加しやすいような雰囲気を作らなきゃね」

佐奈が少し考え込んだ後に提案した。「詩を共有するのって、最初は恥ずかしいから、安心して発表できる場所にしたいな」


「そうだね。詩は個人的なものだから、参加者が安心して自分の気持ちを表現できる場にしたいよね」

千草も同意し、メンバーたちは交流会の具体的な企画について話し合いを続けた。


数週間後、詩の交流会の日が近づいてきた。ポエムの会のメンバーは、地域の図書館の一室を借りて開催することに決め、地域の住民や生徒たちに詩の発表会の案内を配っていた。交流会には、詩を書くことに興味を持っている人たちだけでなく、詩を読んでみたいという人たちも参加できるようにしていた。


そして、交流会当日。部屋の中には、年齢も性別もさまざまな参加者たちが集まっていた。初めて詩を発表するという緊張感が漂っていたが、部屋の雰囲気は温かく、みんながリラックスできるように工夫されていた。


千草が最初に挨拶をし、詩の交流会の趣旨を説明した。


「今日は、詩を通じてお互いの気持ちや考えを共有する場です。詩を書くことが初めての方も、自由に自分の思いを表現してみてください。そして、お互いに感想を言い合いながら、詩の力を感じられる時間にできたらと思います」


千草の言葉に、参加者たちは少し緊張をほぐしたように頷いた。


交流会が始まり、最初の発表者は小学生の女の子だった。彼女は少し恥ずかしそうにしていたが、勇気を出して自分の詩を読み上げた。


「お花の気持ち」


お花が咲いている

私が見つめると、ニコッと笑う


風が吹いても、雨が降っても

お花はじっと立っている


どんな日でも、私はお花を見て笑う

お花も、私に笑い返す


「すごく素敵な詩だね。お花と心が通じ合っている感じがすごく伝わってくるよ」

千草は感動しながら感想を述べ、参加者たちも温かい拍手を送った。小さな女の子は少し照れながらも、嬉しそうに笑っていた。


次に発表したのは、地域の住民である年配の男性だった。彼は、自分の人生を振り返った詩を読み上げた。


「時の流れ」


時が流れるたびに

私は昔を思い出す


若い頃の夢、友との笑い声

その一つ一つが、今でも私の心の中にある


時は過ぎ去っても、記憶は残る

その記憶が、今の私を支えている


彼の詩は、参加者たちの心に深く響き、しんみりとした静けさが部屋を包んだ。


「すごく感慨深い詩でした。時が流れても、記憶が自分の一部として残るという考え方が、心に沁みました」

健太が感想を述べ、他の参加者も静かに頷いていた。


その後も、さまざまな参加者たちが自分の詩を発表し、詩の力でお互いの心が繋がっていくのを感じる時間が続いた。ポエムの会のメンバーもそれぞれ詩を発表し、千草は自分が以前書いた「未来の風景」を再び朗読した。


詩を通じて、自分の内面を表現し、それを共有することで、参加者たちは自然と心が通じ合っていった。詩の交流会は大成功で終わり、参加者たちは笑顔で会場を後にした。


その日の帰り道、千草は詩が持つ力の大きさを改めて感じていた。


「詩を書くことで、こんなにも多くの人と繋がれるなんて…」

彼女は静かに呟いた。


「本当にね。詩って、ただの言葉以上に、人の心を繋げる力があるんだね」

北村も感慨深げに答えた。


ポエムの会は、これからも詩を通じて自分たちの世界を広げていくだろう。詩が持つ力を信じて、彼らは新たな挑戦に向けて歩み続けていく。

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