第25話 詩が紡ぐ絆
ポエムの会での「詩の手紙」活動が終わり、部員たちはそれぞれが心の中にある感謝や想いを詩にすることの大切さを改めて感じていた。詩を書くことで普段伝えられない気持ちを表現することができる、その感覚は部員全員に新たな刺激を与えていた。
千草は、母に向けて書いた詩を家に帰った後もじっくりと読み返していた。母への感謝の気持ちは、心の中にずっとあったが、言葉にすることでそれがどれほど大きなものかに気づいた。詩に込めた言葉が、どのように母に伝わるのか、千草は少し期待と不安を抱えていた。
ある日の夕食後、千草は思い切って母に詩を渡すことにした。母は驚いた様子で詩を手に取り、静かに読み始めた。
「母への手紙」
いつも、静かに見守ってくれている
私が何をしていても、どんなときでも
あなたの言葉が、私を支えている
何も言わなくても、ただそこにいるだけで
本当は、言葉にできない感謝がたくさんある
ありがとうって、何度言っても足りない
この詩に込めた思いが、あなたに届けばいい
これからも、ずっと私を見守っていてほしい
読み終えた母は、少し目を潤ませながら千草を見つめた。
「千草、こんなに素直に気持ちを伝えてくれるなんて…ありがとう。詩にしてくれたことで、あなたがどれだけ私を想ってくれているかがよく伝わったよ」
母は優しく千草の手を握った。
「お母さん、ありがとう…これまでちゃんと言えなかったけど、本当に感謝してるんだ」
千草も涙ぐみながら、母の手を握り返した。
その瞬間、千草は詩が持つ力を実感した。言葉にすることで、自分の心の奥底にある想いが相手に伝わる。その感覚は、言葉でしか伝えられない特別なものだと感じた。
次の日、ポエムの会の部室に集まったメンバーたちは、先日の「詩の手紙」活動を振り返っていた。それぞれが自分の詩をどのように相手に伝えたのか、その感想を共有していた。
「母に詩を渡したら、すごく感動してくれたんだ。いつも言えなかったことが、詩にすることでちゃんと伝わった気がするよ」
千草は微笑みながら、メンバーたちにそう話した。
「本当に?それってすごく素敵なことだね」
麗美も笑顔で答えた。「私も家族に詩を渡してみたけど、普段は恥ずかしくて言えない感謝の気持ちが伝わったって言ってもらえて、嬉しかったよ」
「僕も友達に渡してみたんだ。友達も驚いてたけど、ちゃんと僕の気持ちを理解してくれたみたいで。詩って本当に人を繋げるんだなって感じたよ」
健太もそう語り、みんなの顔には満足感が浮かんでいた。
「詩って、ただ書いて読むだけじゃなくて、誰かに届けることでさらに意味が深まるんだね」
佐奈が静かにそう言うと、みんなが頷いた。
「うん、詩を書くこと自体も大切だけど、やっぱりそれを誰かに伝えるってことも大きな意味があるよね」
千草はそう付け加えた。
そのとき、北村が少し緊張した様子で手を挙げた。
「実は、僕も詩を渡したんだ。家族じゃなくて、ずっと言えなかった気持ちを伝えたかった人がいて…」
みんなが興味津々で彼の話を聞く中、北村はゆっくりと話し始めた。
「僕には昔、すごく仲の良かった友達がいたんだけど、あるとき喧嘩をしてしまって、それ以来ずっと疎遠になってしまっていたんだ。でも、その友達にずっと謝りたくて、詩にして伝えたんだ」
「そうだったんだ…その友達はどうだったの?」
千草が優しく問いかけると、北村は少し照れくさそうに笑った。
「驚いてたけど、ちゃんと僕の気持ちを受け取ってくれた。お互いに気持ちをぶつけ合うことができたんだ。詩にすることで、直接言葉にするよりも素直になれた気がするよ」
部室には、静かに感動が広がっていた。詩を書くことが、こんなにも人と人をつなげる力を持っていることを、全員が改めて感じた。
「北村くん、すごいね。その詩、今度読ませてほしいな」
麗美が嬉しそうに声をかけると、北村は少し照れながらも「もちろん」と頷いた。
その日の帰り道、千草は詩が持つ力について考えていた。詩を書くことで、自分の中の気持ちが整理され、さらにそれを誰かに伝えることで、新たな絆が生まれる。詩は、ただの言葉以上の力を持っているのだと実感していた。
「これからも、もっとたくさんの詩を書いて、いろんな人と繋がっていきたいな」
千草はそう心の中で誓った。
詩を書くことで、彼女はこれからも新たな出会いと成長を重ねていくだろう。そして、ポエムの会の仲間たちと共に、詩が紡ぐ絆の物語は続いていく。
新しい詩と出会い、また新しい絆が生まれる。その一つ一つが、彼女たちの成長の糧となり、これからも詩を通じて新しい物語が紡がれていくのだった。
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