第24話 詩に込めた秘密の手紙
北村がポエムの会に加わり、部員たちはますます詩を書く楽しさを感じながら、日々の活動を続けていた。新しい仲間が増えたことで、会の中には新たな活気が生まれ、それぞれが自分の個性を発揮しながら詩を作り上げていた。
ある日の放課後、千草は少し変わった提案をメンバーに持ちかけた。
「みんな、今日はちょっと特別なことをしてみない?詩を使って手紙を書いてみるのはどうかな?」
「手紙?」
麗美が不思議そうに問い返した。
「うん、普通の手紙じゃなくて、詩を手紙の形で書くの。誰か特定の人に向けて、思っていることを詩で表現してみるんだ」
千草は提案の意図を説明しながら、少しワクワクした表情を浮かべた。
「それ、面白そう!詩で手紙を書くなんて、いつもと違う感じがして素敵だね」
麗美もその提案に賛同し、他のメンバーも興味を示していた。
「僕もやってみたいな。詩って、時には手紙みたいに誰かに向けて書くこともあるもんね」
北村が言うと、健太も同意して「そうだね。詩を通じて誰かに伝えたい思いがあるなら、それを手紙に込めるのはいい方法かもしれない」と言った。
こうして、ポエムの会は「詩の手紙」を書くことになった。それぞれが手紙の相手を思い浮かべながら、静かにノートに向かってペンを走らせた。千草はふと、以前から気にかかっていた母親のことを思い出した。母親は千草が詩を書くことをいつも応援してくれていたが、千草はこれまで感謝の気持ちを言葉にする機会がなかった。
「母に向けた詩を書いてみようかな…」
千草はそう思い、心の中にある感謝や思いを詩に込めていった。
しばらくして、部員たちはそれぞれが書いた詩を持ち寄り、発表し合うことにした。最初に発表したのは健太だった。彼は自分の友人に向けて詩を書いており、友情の大切さを表現していた。
「変わらない絆」
時が流れても
変わらないものがある
それは、君との絆
笑い合った日々も
支え合った日々も
すべてが私の中に残っている
これからも、変わらず
その絆を信じて進んでいこう
「すごく健太くんらしい詩だね。友情を大切にしてる気持ちがよく伝わってくるよ」
麗美が感心しながら言った。
「ありがとう。詩を書くと、普段はなかなか言えないことも伝えられる気がするよ」
健太は少し照れくさそうに答えた。
次に、麗美が家族に向けた詩を発表した。彼女は家族との絆を大切にしながらも、時には家族に対する感謝を直接言葉にすることが難しかったという。詩を通じて、その気持ちを伝えたいと思って書いたのだ。
「家族への感謝」
何気ない毎日が過ぎていく中で
私はあなたたちに支えられている
言葉にすることは少ないけれど
その支えがあるから、私は進める
ありがとう
この詩に込めた感謝の気持ちを
どうか受け取ってほしい
「私も家族にはなかなか感謝を伝えられないから、麗美ちゃんの気持ち、よくわかるなあ」
千草は優しく微笑みながら感想を伝えた。
「うん、家族っていつも近くにいるから、逆に言いにくいこともあるんだよね。でも、こうやって詩にすると、自然に伝えられる気がするよ」
麗美は照れたように笑った。
そして、千草の番がやってきた。彼女は少し緊張しながらも、自分の母親に向けた詩を読み上げた。
「母への手紙」
いつも、静かに見守ってくれている
私が何をしていても、どんなときでも
あなたの言葉が、私を支えている
何も言わなくても、ただそこにいるだけで
本当は、言葉にできない感謝がたくさんある
ありがとうって、何度言っても足りない
この詩に込めた思いが、あなたに届けばいい
これからも、ずっと私を見守っていてほしい
読み終えると、千草は少し照れくさそうに俯いたが、部室は温かい空気に包まれていた。
「千草ちゃんのお母さん、すごく嬉しいだろうね。こんなに素直な気持ちを詩にしてくれたら」
佐奈が優しく言った。
「うん、きっと伝わるよ。お母さんとの絆が詩からすごく感じられるし、言葉にできない気持ちを詩に込めるって、すごく素敵なことだよ」
健太も感心して頷いた。
「ありがとう…私、今まで直接感謝の気持ちを言うのが恥ずかしかったけど、この詩を書いて少しだけ素直になれた気がする」
千草はそう言って、少しほっとした表情を浮かべた。
最後に、北村が自分の書いた詩を発表することになった。彼はまだ詩を書くことに慣れていないと言いながらも、勇気を出して自分の気持ちを手紙に込めた。
「新しい始まり」
まだ見えない未来が
私の前に広がっている
迷いもあるけれど
その先にあるものを信じて進む
誰かに支えられながら
新しい始まりを迎える
この手紙に込めた思いが
どうか届きますように
「北村くん、すごく素敵な詩だよ。新しいことに挑戦する気持ちと、誰かの支えがちゃんと詩に表れている」
千草は優しく微笑みながら感想を伝えた。
「ありがとう…まだ慣れてないけど、詩を書くことで自分の気持ちを少しずつ整理できてる気がするよ」
北村は少し照れながらも、満足げに笑った。
その日の「詩の手紙」活動を通じて、メンバーたちはそれぞれが心に秘めていた思いを詩にすることで、普段伝えられない感謝や感情を表現することができた。詩を書くことは、自分の内面を素直に表現する手段であり、誰かに思いを届ける特別な方法でもあると改めて感じたのだった。
これからも、ポエムの会のメンバーたちは詩を通じて成長し、互いに励まし合いながら、心の中にある大切な思いを表現し続けていくだろう。詩は彼らにとって、言葉以上の力を持つものであり、これからも新たな挑戦や出会いを導いていく。
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