第19話 仲間たちの絆
詩を書き続ける日々の中、ポエムの会のメンバーたちはそれぞれのスタイルや個性を磨き、少しずつ成長していた。特に千草と佐奈の二人は、前回の「夜空」をテーマにした詩作をきっかけに、お互いに支え合うようになっていた。
そんなある日、健太が部室に集まったメンバーに向けて新しい提案をした。
「みんな、今日は特別な企画をやってみたいんだ。これまでずっと個人で詩を書いてきたけど、今日はチームを組んで一つの詩をみんなで作るっていうのはどうかな?」
その提案に、部室が一瞬ざわついた。今まで詩は個人の感情や思いを表現するものとして書いてきたが、チームで一つの詩を作るというアイデアは新鮮だった。
「みんなで詩を書くって、どうやってやるの?」
麗美が興味津々に健太に尋ねた。
「まず、二人一組でチームを作って、一つのテーマを決めてから、それぞれの得意な部分を活かして一緒に詩を作り上げてみるんだ。言葉の選び方や表現方法はそれぞれ違うけど、互いに補い合って一つの作品にするのが面白いと思うんだ」
「それ、すごく面白そう!やってみたいな」
麗美がすぐに賛成し、他の部員たちも次第に興味を示していった。
「じゃあ、ペアを組もうか。私は…」
千草が言いかけると、隣にいた佐奈がすぐに手を挙げた。
「千草ちゃんと組みたい!」
千草は嬉しそうに微笑み、二人はすぐにペアを組むことに決まった。麗美と健太もペアを組み、それぞれのペアがチームになって詩を書くことになった。
「テーマはどうしようか?」
千草が佐奈に尋ねると、佐奈は少し考え込んだ。
「どうかな…『未来』なんてどう?」
佐奈が提案すると、千草はそのアイデアにすぐに賛成した。
「いいね!『未来』って、まだ見えないけど、希望や不安もあるテーマだから、いろんな感情が込められそう」
二人は早速詩作に取りかかることにした。まずはお互いに「未来」について感じていることを話し合い、それぞれの考えを共有することから始めた。千草は未来に対する希望を強調した詩を描きたいと考えていたが、佐奈は少し不安や悩みを感じる部分も表現したいと思っていた。
「お互いの考えをどうやって一つの詩にまとめようか?」
千草が少し悩んだ顔をして尋ねると、佐奈は少し考え込んだが、やがてこう言った。
「私は、未来に対する不安や迷いを前半に書いて、後半でそれが希望に変わっていく流れにしたいな。千草ちゃんの希望の言葉で詩を締めくくったら、すごく素敵になると思う」
「それいいね!最初は少し悩みがあっても、最後には前向きに未来を見つめる詩にしたいよね」
千草もそのアイデアに賛同し、二人は詩の流れを決めていった。
二人が協力して作り上げた詩は、次のような内容になった。
「未来の影と光」
夜が深まると、不安が寄り添ってくる
未来はまだ見えない霧の中に隠れていて
その影に、私は立ち止まってしまう
でも、ふと空を見上げると
遠くに見える光が、私に呼びかける
未来はいつだって遠いけれど
そこには確かに、希望が輝いている
迷いや不安があっても、私は歩いていく
光が示す道を信じて、進んでいく
未来は私を待っている
その先に、何があっても
二人で読み合わせをして、詩が完成したとき、千草は不思議な感覚に包まれた。佐奈と自分の考えが一つに繋がり、一つの詩にまとまったことに感動したのだ。佐奈の不安や迷いが千草の前向きな気持ちと合わさることで、詩がより深いものになっていた。
「すごい…私たち、本当にいい詩が書けたね」
佐奈は少し照れくさそうに微笑んだ。
「うん、私も一人じゃこんな風に書けなかったかもしれない。佐奈ちゃんのおかげで、未来への不安も含めてしっかり表現できたよ」
千草は笑顔で答えた。
二人はお互いに感謝の気持ちを伝え合いながら、詩作の楽しさを改めて感じていた。
他のペアもそれぞれの詩を作り上げ、発表会のような形でお互いに作品を披露し合った。健太と麗美の詩は、未来の未知なる冒険をテーマにしており、力強さと優しさが溢れていた。二人の詩は、まるで未来に向かう航海を描いたようで、会場にいるみんなを前向きな気持ちにさせた。
ポエムの会は、その日、改めて詩を通じて仲間との絆を深めることができた。それぞれのペアが互いに助け合い、一つの作品を作り上げる過程で、メンバーたちは新しい発見をし、自分自身の成長を感じた。
千草は、佐奈との詩作を通じて、仲間と一緒に作る詩の楽しさを知った。そして、詩が一人で書くものだけでなく、誰かと共有することで、さらに深い感情が生まれることを実感した。
これからもポエムの会で、仲間たちと共に新たな挑戦を続けていこうと千草は心に決めた。詩を通じてつながる仲間たちとの絆が、ますます強くなっていくのを感じながら。
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