第17話 変化

発表会が終わり、千草は健太との話を経て、自分の詩に対する自信を取り戻しつつあった。ポエムの会では、新たなテーマを探し始めていた。次の目標を決め、詩を書くことでメンバー全員がさらに成長できるような活動を考えていた。


ある日の放課後、部室に集まった部員たちの前で、健太が提案を持ちかけた。


「みんな、今日は次の活動について話し合いたいんだ。新しいテーマを決めて、それに沿って詩を書いていこうと思うんだけど、どうかな?」


部員たちはそれぞれの考えを巡らせた。これまでの活動は充実していたが、新しい方向性を見つけることで、さらに深い詩作ができるのではないかという期待があった。


「テーマかぁ…何がいいかな?」

麗美が少し考え込むように呟いた。


「私たち、最近いろんなことを経験してきたよね。発表会もそうだし、同人誌も。それに、佐奈ちゃんも新しく入ってくれたし、少しずついろんな変化が起こってる気がするんだ」

千草がそう言うと、健太は微笑みながら頷いた。


「確かに、変化っていいテーマかもしれないね。僕たち自身も変わりつつあるし、詩を書く中で、その変化をどう感じているか表現できたらいいな」


「『変化』…いいテーマだね」

佐奈が珍しく自分から意見を口にした。「私はまだ詩を書くのが慣れていないけど、最近の自分の気持ちを考えると、いろんな変化があったなって感じるから…このテーマなら、何か書ける気がする」


「じゃあ、テーマは『変化』に決まりだね!」

麗美が笑顔で同意した。


みんなの意見がまとまり、次のテーマは「変化」に決まった。ポエムの会の部員たちは、それぞれの視点で「変化」を捉え、詩を書いていくことになった。千草もまた、このテーマを通じて自分の中で起こった変化を詩にすることを決めた。


その日の夜、千草は自分の部屋でノートを開き、「変化」について考えていた。発表会や同人誌の制作を通して、自分の心にもたくさんの変化があったことに気づいた。自分の詩に自信を持つことができるようになったのも、仲間との交流や、詩を書くことで気づいた自分自身の成長のおかげだった。


彼女はゆっくりとペンを動かし、詩を書き始めた。


「変わりゆく心」


静かだった心の中に

少しずつ風が吹き込む


変わらないと思っていた日々が

ふとした瞬間に変わり始めた


不安だった昨日が、今日には希望に

一人だった時間が、今は仲間とともに


変わることは怖いけれど

その先には新しい自分が待っている


だから私は、変化を恐れずに進む

風に吹かれながら、未来を見つめて


千草は書き終えた詩を見つめ、満足そうにページを閉じた。この詩には、彼女自身の成長や新しい経験に対する気持ちが込められていた。変化を怖がるのではなく、受け入れることで新しい自分に出会えるという思いが、自然と表現されていた。


翌日、ポエムの会ではメンバーたちがそれぞれの詩を持ち寄って発表し合った。みんなが「変化」というテーマをどう捉え、どう表現しているのか、それぞれの詩に個性が現れていた。


麗美は日常の中で感じた小さな変化を繊細に表現し、佐奈は自分自身の心の変化をシンプルな言葉で綴っていた。健太は未来に向けた変化を力強く描き、仲間たちに前向きなエネルギーを与えていた。


千草の番になると、彼女は自分の詩を読み上げた。発表会での経験が彼女に自信を与え、今回は緊張せずに自分の詩を声に出すことができた。


読み終えると、部室には温かい拍手が響いた。


「千草ちゃんの詩、すごく素敵だよ。変化を受け入れる姿勢が前向きで、読んでいて心が軽くなるような感じがする」

麗美が笑顔で感想を伝えた。


「本当に、その通りだよ。変化を恐れずに進むって、僕たちにも必要なことだよね。千草さんの詩から、そんな勇気をもらえたよ」

健太も優しく微笑んでいた。


「ありがとう…みんなのおかげで、変化することが怖くなくなったんだ。これからも、自分の言葉を大事にしていきたいなって思ったの」


千草は、自分の詩が仲間たちに伝わったことに喜びを感じた。変化は避けられないものであり、それをどう受け止めるかが大切なのだということを、詩を通じて改めて感じた。


ポエムの会は、これからも「変化」をテーマにした詩をさらに深めていくことを決めた。千草にとって、このテーマは単なる詩の題材ではなく、これからの自分自身をどう生きていくかを示す道しるべとなるような気がしていた。


仲間たちと共に、千草はこれからも変わり続ける自分を大切にしながら、詩を通じて成長していくことを心に誓った。

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