第5話 詩を見つめる仲間たち
千草が初めて自分の詩を発表してから、ポエムの会での活動がますます楽しくなってきた。彼女は少しずつ自分の気持ちを表現することに慣れ、詩を通じて仲間たちと心を通わせることができるようになってきた。
ある日の放課後、ポエムの会ではいつものように詩を発表し合う時間が始まっていた。この日は、部員の一人、優希が詩を持ってきていた。彼は寡黙な性格で、普段はあまり自分の気持ちを言葉にすることがなかったが、詩を書くときだけは、その心の内を静かに言葉にしていた。
「今日は、少し自分の気持ちを表現した詩を書いてきたんだ」
優希はそう言いながら、少し照れくさそうにノートを開いた。彼の詩は、普段の彼とは対照的に、繊細で深い感情が込められていた。
「ひとりの時間」
ひとりでいると
何も感じなくなることがある
心の中に響く声も、消えてしまう
でも、ひとりだからこそ
見える景色があるんだ
心の奥底に流れる、静かな波
誰にも届かない、その波の音を
私は聞き続けている
いつか、その波が届くことを信じて
優希が詩を読み終えると、部室の空気がしばらくの間、静かに包まれた。彼の詩は、普段の優希がどれだけ孤独を感じているのか、その深い感情を感じさせるものだった。千草は、心の奥底で何かが揺れ動くのを感じた。
「優希くんの詩、すごく心に響いたよ」千草が口を開いた。「普段はあまり話さないけど、この詩からは優希くんの本当の気持ちが伝わってくるような気がする」
他の部員たちも同じように頷き、優希に感想を伝えた。彼の詩が、みんなの心に何かを残したのは確かだった。優希は少し顔を赤くしながらも、嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう。詩を書くときだけは、なんだか自分の気持ちが整理されるんだ。普段はうまく言葉にできないことも、詩なら素直に書ける」
その言葉を聞いて、千草は自分も同じだと感じた。詩は、言葉にしにくい感情や思いを形にする手段であり、それを通じて自分を表現できることが、今の自分にとって救いになっていると気づいた。
「詩って不思議だよね。普段言えないことも、詩にすると自然と表現できるんだもの」
麗美が続けて言った。「私も、詩を書くと自分の中のいろんな感情が解放される感じがする。嬉しいことも悲しいことも、詩にするとちゃんと形になるんだ」
健太も頷きながら、「詩を書くことは、心を見つめることなんだよね。自分の心の奥にあるものを探し、それを言葉にして表現する。それができると、不思議と心が軽くなるんだ」
千草はその言葉に深く共感した。詩を書くことで、彼女は自分自身と向き合い、他の仲間たちとも心を通わせることができる。それは、ポエムの会が彼女に与えてくれた大きな宝物だった。
その日の帰り道、千草は優希の詩のことを思い返していた。普段はあまり話さない優希も、詩を通じて自分の感情を表現している。詩は、言葉だけではなく、心そのものを伝えるものだと、千草は改めて感じた。
「私も、もっと自分の心を見つめて、詩を書いていこう」
そう心に決めた千草は、これからも仲間たちと共に、詩を通じて新たな自分を見つけていくのだった。
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