第3話 麗美との友情の始まり
千草がポエムの会に入部してから数日が経った。島の穏やかな空気にも少しずつ慣れてきて、学校の生活も落ち着いてきた。毎日、授業が終わると自然とポエムの会の部室に足が向くようになっていた。麗美とはすっかり打ち解け、授業中も休み時間もよく一緒に過ごすようになっていた。
ある日、放課後に部室へ向かう途中、麗美が少し照れくさそうに千草に話しかけた。
「ねぇ、千草ちゃん。今日、一緒に帰らない?」
「うん、いいよ!」千草はすぐに頷いた。麗美と話すのは楽しく、彼女の素直で明るい性格に惹かれていた。
部活が終わった後、二人はゆっくりと校門を出た。島の夕暮れはどこか幻想的で、オレンジ色の光が広がり、空にはいくつかの雲がゆっくりと流れていく。二人は学校から海へ続く道を歩きながら、何気ない話を続けた。
「千草ちゃん、島の生活にはもう慣れた?」
「少しずつだけどね。都会の生活とは全然違うけど、毎日がのんびりしていて、悪くないかな」
「うん、私もこの島のゆっくりとした雰囲気が好き。詩を書くのにぴったりだと思わない?」
麗美は嬉しそうに笑った。千草は、そんな麗美の笑顔を見ると、心が温かくなるのを感じた。麗美は、詩を書く時も、普段の生活でも、何か特別な感受性を持っているように見えた。彼女の詩には、何か目には見えないけれど確かな優しさがあった。
「麗美ちゃんって、いつもポエムを書く時、何を考えてるの?」
千草はふと、以前から気になっていたことを尋ねた。彼女の詩は感情豊かで、心の奥底から湧き出るものを感じさせるものだった。
「んー、なんていうかな…私は、日常のちょっとした瞬間を大切にしたいと思ってるんだ。たとえば、今日見た夕日とか、風が吹いた瞬間とか。そんな小さな出来事を詩にすると、自分の気持ちが落ち着くんだよね」
千草はその言葉を聞いて、ポエムを書くことの意味が少しわかった気がした。自分がこれまで書いていた詩は、どこか感情を吐き出すだけのものだったかもしれない。でも、麗美の言う「小さな瞬間」を大切にすることで、もっと心に響く詩が書けるのかもしれないと感じた。
「なるほど…私も、そういう風に感じて詩を書けたらいいな」
「千草ちゃんなら、きっとすぐにできるよ。詩って、正解なんてないし、自分が感じたことをそのまま言葉にするだけでいいんだもん」
二人は海岸に着くと、少し立ち止まって夕焼けを見つめた。海に沈む太陽が、波にきらめきながらゆっくりと地平線に消えていく。その光景を見ていると、千草の心の中に新たな言葉が浮かび上がってきた。
「海に沈む夕日、今日の終わりに何を感じたんだろう…」
千草は静かにその言葉を口にした。
「いいね、その言葉。詩になりそうだよ!」麗美が笑って言った。
千草は少し照れくさくなりながらも、自分の言葉が詩になるかもしれないという喜びを感じた。麗美とのこの会話が、千草にとって大切なものになるだろうと、彼女は確信していた。
「ありがとう、麗美ちゃん。これからもっと詩を書きたくなったよ」
「一緒に頑張ろうね、千草ちゃん!」
その日から、千草は詩を書くことがますます楽しくなり、麗美との友情も深まっていった。二人はこれから、ポエムの会での時間を共にしながら、詩を通じてさらなる絆を築いていくことになる。
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