第2話 ポエムの会へようこそ

放課後の鐘が鳴ると、千草は教室を出て麗美と一緒に歩き出した。麗美が部活へ案内してくれるというので、少し緊張しながらも期待が膨らんでいた。校舎の裏手にある旧棟は少し古びていて、静けさが漂っている。そこに「ポエムの会」の部室があるという。


「ここだよ!」

麗美が立ち止まったのは、木製のドアが少し歪んだ教室だった。ドアを開けると、数人の生徒たちが集まっていた。みんなそれぞれが机に向かい、ノートや紙に何かを書き込んでいる。


「みんなー、新しいメンバーが来たよ!」

麗美がそう呼びかけると、数人が顔を上げ、千草を見てにこやかに手を振ってくれた。


「こんにちは、今日から参加する千草です。よろしくお願いします」

少し緊張しながら自己紹介すると、部長らしき人物が前に出てきた。彼は長身で、柔らかい眼差しが印象的な男子生徒だった。


「ようこそ、千草さん。僕がこのポエムの会の部長、健太だよ。ここではみんなで詩を書いたり、感じたことを言葉にして同人誌を作ってるんだ。詩が好きなら、きっと楽しめると思うよ」

「ありがとう。詩を書くのは好きだから、ここでいろんなことを学べたらいいな」

千草は少しほっとした。彼の柔らかな物腰に安心感を覚え、部活の雰囲気も温かくて、すぐに溶け込めそうな気がした。


部室には大きな机がひとつ置かれ、その周りを囲むように生徒たちが座っている。机の上には様々な詩集や手書きのノートが散らばっており、自由に創作できる空間が広がっていた。麗美が千草を案内し、部室の中を見せてくれる。


「みんなでポエムを書いて、それをまとめて同人誌にしてるんだ。毎月発行して、島のイベントとかで売ったりしてるんだよ」

「すごいね、そんなことまでしてるなんて」

千草は驚きと同時に、自分もこの活動に加わりたいという気持ちが芽生えていた。これまで詩を書いていたものの、それを誰かに見せる機会はなかった。ポエムの会なら、自分の感情をもっと自由に表現できるのかもしれない。


「まずは、試しに何か書いてみようか?」

健太が優しく言うと、千草はノートを取り出して、ペンを手に取った。何を書こうかと迷ったが、今日感じた島の風景を思い浮かべる。


「青い海、静かな風…心の中で何かが変わっていくような…」


千草はその思いを言葉にして、詩を綴っていった。詩を書くことは、彼女にとって自分の心を解き放つような感覚だった。短い時間で書き上げた詩を、健太に見せると、彼はしばらく目を通してから微笑んだ。


「いいね。島の自然が、千草さんの中でどう感じられているのかが伝わってくる。これからもっと詩の深さに触れていけると思うよ」

「ありがとう、まだまだ書き慣れてないけど、頑張ってみるね」


千草は健太の言葉に励まされ、もっと詩を書いてみたいという気持ちが湧いてきた。部活の仲間たちも、それぞれが自由に詩を作り、時にはお互いに感想を言い合う姿が見られる。この場所では、誰もが自分を表現できる自由を持っているのだと感じた。


「ここに入ってよかった」

千草は心の中でそうつぶやいた。これから始まる詩の世界と、麗美や仲間たちとの交流が、彼女の新しい生活を鮮やかに彩っていくのだった。

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