第8話 秘密の屋台街

翔太とリナは、消えかけていた微細たこ焼きにまつわる翔太の記憶を手がかりに、次なる目的地へと向かっていた。それは、噂に聞く「秘密の屋台街」。この場所には、かつて伝説のたこ焼き師が店を構えていたと言われている。そして、そこに微細たこ焼きの秘密が隠されている可能性があるという。


夕方、薄暗くなった町を歩き続け、二人はついにその屋台街の入り口にたどり着いた。しかし、そこは人々の賑わいからはほど遠く、まるで時間が止まったかのような静けさが広がっていた。老朽化した看板や朽ちた建物が並び、過去の繁栄がかすかに残るだけの場所だった。


「ここが秘密の屋台街なの?」リナが不安そうに尋ねる。


「そうみたいだ。でも、本当に微細たこ焼きの手がかりがあるのか…。」翔太も半信半疑だったが、それでも進むしかなかった。


二人が奥へ進むと、ぼんやりと明かりが灯る屋台が一軒だけ見えてきた。まるでこの場所が彼らを待っていたかのように、ひっそりと佇んでいる。


「行ってみようか」と翔太が言い、リナも無言で頷く。


屋台に近づくと、古びた暖簾をくぐり、中には白髪の老人が座っていた。彼は黙々とたこ焼きを焼いており、その姿はどこか神秘的だった。翔太とリナは、無言のまま老人の手元を見つめていた。


「お前たちも、たこ焼きを探しに来たのか?」老人は、視線を向けずに話し始めた。


翔太は驚きながらも答えた。「そうです。微細たこ焼きのことを探しているんです。」


老人はしばらくたこ焼きを焼く手を止めず、沈黙が続いたが、やがて静かに語り始めた。「微細たこ焼きか…。あれはただの食べ物ではない。それを知ってしまうと、全てが変わる。そして、それを作れる者は今や数えるほどしかいない。」


「その一人があなたなんですか?」リナが尋ねた。


老人はようやく視線を二人に向けた。深いしわが刻まれた顔には、長年の苦労が滲んでいるようだった。「そうだ。私はかつて、その技を受け継いだ最後のたこ焼き師の一人だ。」


翔太とリナは驚きに言葉を失った。ついに彼らは「最後のたこ焼き師」に出会ったのだ。


「どうして微細たこ焼きはそんなに特別なんですか?」翔太は思い切って質問を投げかけた。


老人は一瞬の間を置き、深く息をついた。「微細たこ焼きには、ただの味以上の意味がある。それを口にする者は、心の中にあるものをすべて映し出される。欲望、恐れ、そして後悔。全てが浮き彫りになる。だからこそ、安易にそれを作り出すことは許されない。」


「それを食べると、どうなるんですか?」リナが問い詰める。


老人は静かに首を振り、「答えは人それぞれだ。ある者はその真実に耐えられず、壊れてしまう。だが、ある者はそれを糧に強くなり、前へ進む力を得る。微細たこ焼きは、その者の心を試すものだ」と答えた。


翔太はその言葉に戸惑いを隠せなかった。食べ物が人の心にそんな影響を与えるなんて信じられない。しかし、これまでの旅で感じた不思議な出来事や記憶の断片が、もしかしたらそのたこ焼きに関わっているのかもしれないと思い始めた。


「もしそれが本当なら、俺たちはどうしたらいいんですか?」翔太が真剣な表情で尋ねる。


老人は再びたこ焼きを焼きながら、言葉を選ぶようにゆっくりと答えた。「お前たちが微細たこ焼きを手に入れたいのであれば、覚悟を決めることだ。自分自身と向き合う覚悟をな。それができた時、たこ焼きはお前たちの前に現れるだろう。」


翔太とリナは、今まで以上にこの旅が単なる「食べ物探し」ではないことを理解した。それは、自分たちの心と向き合う旅でもあったのだ。


老人は最後にこう付け加えた。「屋台街の奥に進めば、お前たちが探している答えが待っているだろう。だが、必ず覚悟を持って進むんだ。」


二人は無言で頷き、老人に礼を言って屋台を後にした。屋台街の奥には、微細たこ焼きの真実が待っている。その答えを知るために、二人は進む決意を新たにした。


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