第7話 消えた記憶
占い師の言葉が頭の中をぐるぐると回り続けていた。「微細たこ焼きが、ただの食べ物ではない」という一言は、翔太に強烈な印象を与えていた。リナも同様に、その言葉の意味を考え続けているようだったが、二人はそれ以上話すことなく、黙々と進んでいた。
古い屋台街を抜け、二人は次なる目的地を目指して歩き続けていたが、翔太の中には妙な違和感が生まれていた。それは、占い師の「心の準備ができていない」という言葉に関連するものだった。
しばらくして、翔太は突然、ふと思い出したかのように立ち止まった。
「…リナ、ちょっと待ってくれ」
「どうしたの?」リナは心配そうに振り返った。
翔太は額に手を当て、深く考え込む。「なんだか…何かを思い出しそうなんだ。でも、うまく思い出せない。微細たこ焼きに関する記憶が、俺の中にある気がするんだ…」
リナは驚き、翔太に近寄った。「それってどういうこと? 翔太、もしかして以前に微細たこ焼きを食べたことがあるの?」
翔太は首を振りながら、頭を整理しようと必死だった。「いや、そんなことはないはずだ。でも、何かが引っかかる。もしかしたら、俺は過去にこのたこ焼きについて何か知っていたのかもしれない…」
その時、翔太の頭に一瞬だけ鮮明な記憶がよぎった。それは、幼い頃の記憶だった。自分がまだ小学生だった頃、夏祭りで出会った不思議なたこ焼き屋台のことを思い出した。そこに並んでいたたこ焼きは、通常のものよりもはるかに小さかった。
「そうだ…あの時だ…」翔太は呟いた。
「何か思い出したの?」リナが興奮気味に問いかける。
「俺がまだ子どもの頃、夏祭りで見かけたんだ。すごく小さなたこ焼きを売っている屋台があった。でも、その後、どうなったのか全然覚えていない。まるでその記憶が抜け落ちているみたいに…」
「それが微細たこ焼きだったのかもしれないね!」リナは目を輝かせた。「でも、どうして記憶が曖昧なの?」
翔太は困惑したまま、額に手を当てた。「分からないんだ。俺はあの時、そのたこ焼きを食べたのかどうかも思い出せない。でも、確かにあったんだ。その屋台が。」
リナは考え込んだ後、提案した。「もしかしたら、その記憶を封じ込めた何かがあるのかもね。もしくは、微細たこ焼き自体に、記憶を操作するような力があるとか…。」
翔太はリナの言葉を聞きながら、占い師の言葉を思い出した。「食べた者の運命を変える」という意味が、もしかすると記憶に関わっているのかもしれないという考えが頭をよぎった。
「微細たこ焼きは、ただの食べ物じゃない…もし、本当に何か特別な力があるとしたら、記憶や運命にも影響を与えるのかもな」翔太はつぶやいた。
リナは深く頷いた。「そうかもしれない。でも、それならなおさら、そのたこ焼きを探さなきゃいけないね。私たちの運命がどう変わるのかは分からないけど、きっとその答えが隠されている。」
翔太は再び歩き出した。過去の記憶に関する謎はまだ解けていないが、少なくとも自分がそのたこ焼きに接触したことがあるという手がかりは得た。それが、これからの旅の重要な鍵になるかもしれない。
「記憶が戻るかどうかは分からないけど、進むしかないな」と翔太は心の中で決意を固めた。
二人は再び前に進み、さらなる手がかりを求めて歩き続けた。その先には、いくつもの謎と、それを解くための新たな冒険が待ち受けていた。
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