第3話 幻のたこ焼き屋

暗い路地を進む翔太は、消えた屋台の謎が頭から離れなかった。屋台が消えるなんて現実的にはありえないことだ。しかし、あの瞬間に確かに目の前から消えたのだ。翔太は、これが単なる偶然ではなく、もっと大きな謎の一部であると感じていた。


「微細たこ焼き……一体どうなってるんだ?」


思い悩む翔太だったが、やがて目の前に奇妙な光景が広がった。薄暗い通りの先に、一軒の屋台がぽつんと現れたのだ。先ほど消えた屋台とはまた違うが、これもまた名もない、古びた屋台だった。


その屋台の前には、一人の男が立っていた。中年の男は薄汚れたエプロンを身に着け、無言でたこ焼きを焼いていた。翔太は思わず近づき、声をかけた。


「すみません、ここで微細たこ焼きを売っていますか?」


男は一瞬だけ翔太を見たが、すぐに視線を落とし、たこ焼きに集中し続けた。返事はなく、代わりにじりじりとたこ焼きが焼ける音だけが響く。屋台には、普通サイズのたこ焼きが並んでいるが、アリよりも小さなたこ焼きなどどこにも見当たらない。


翔太は半ば諦めかけながらも、もう一度問いかけた。「微細たこ焼きって、本当に存在するんですか?」


すると、男はようやく動きを止め、ゆっくりと顔を上げた。その表情は無表情でありながら、どこか影があるように見えた。


「お前も、あの噂を追ってここに来たのか?」と、男は低い声で言った。


翔太は驚いた。まさかこの男が噂を知っているとは思わなかった。翔太は期待を胸に、「そうです。微細たこ焼きをどうしても食べてみたいんです」と答えた。


男はしばらく考え込むように黙り込んだ後、ぽつりと口を開いた。「微細たこ焼きは、存在する。ただし、お前が思っているようなものではない。」


「どういうことですか?」翔太は眉をひそめた。


男はため息をつき、たこ焼き器を指さした。「微細たこ焼きは、普通のたこ焼きとは違う。見た目も、味も。そして、それを食べるということは、ただの食事以上の意味があるんだ。」


「食べること以上の意味って…?」翔太はますます混乱したが、男はそれ以上語ろうとはしなかった。


「一つだけ忠告しておく。微細たこ焼きは、簡単に手に入るものじゃない。むしろ、手に入れるべきものかどうかも分からない。お前がその覚悟を持っているなら、探し続けるがいい。」


それだけ言い残し、男は再び黙々とたこ焼きを焼き始めた。翔太はどうしても納得できずに、男にさらに問い詰めたかったが、もう何も言うつもりがないことは明らかだった。


仕方なく、翔太はその場を後にした。しかし、心の中ではますます謎が深まっていく。微細たこ焼きには「食べること以上の意味」がある?一体それは何を意味するのか?


歩きながら、翔太はふと自分の足元を見た。すると、地面に何かが落ちているのを発見した。拾い上げると、それは小さな紙切れだった。そこには、こう書かれていた。


「微細たこ焼きの真実を知りたければ、次の町で待て。」


「次の町か…」翔太は紙を握りしめ、次の目的地に向けて歩き出した。彼の旅は、まだ始まったばかりだった。

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