7話 非日常
ピーンポーン
ガチャッ
「おっはよ〜!」
「おう、おはよ」
玄関のドアを勝手に開けて元気よくコージが入り込んできた。
「今年も同じクラスみたいだな!」
「そうだな」
俺たちは昨日入学式が終わったばかりで、本来ならクラスなどわかるはずもない。にも関わらずお互いが同じクラスという事を知っているのには理由がある。
入学式の翌日、各家庭に封筒が送られた。中には学生証や生徒手帳などが同封されており、クラス分け表のようなものも入っていた。
クラス分け表にはクラス番号だけではなく、座席分け、出席番号、同じクラスになる人達の名簿、能力の詳細まで書かれてあって驚いた。
まぁ、お互いに能力についての理解がないとコミュニケーション時に地雷を踏んでしまう可能性があるし、べつにおかしな事ではないのだが。
「ところで、お前クラス分け表見たか?」
学校に向かいながら会話していると、コージがいつものように、いや、"いつもよりも"ニヤニヤしながら俺の横腹をつついてくる。
「……見たけど」
「おっ、その反応は何の事か分かってるようだな」
「さぁ、何の事だろうな」
「おいおい〜とぼけるなよぉ〜あの可愛い可愛い生徒代表さんと同じクラス、ましてや、と・な・りの席なんてッ!」
いやぁ、青春ですなぁと訳のわからない事をコージが抜かしているが気にせず「おしてください」と書かれたボタンを押す。
「そういえば、能力欄が空白の人が結構いたけどあれってなんなんだ?」
手を高く上げながら信号を渡るコージに話かけると、え?と驚いた顔をされた。
「おま……ほら、入学式前に紙渡されたろ?あれに能力公開しますか〜的なこと書かれてたじゃねーか」
「あぁ、そういえばあったな」
「お前、あの紙どうした?」
「捨てた」
「捨てんなよ!てか、だからお前も空白だったんだな!」
コージが詰め寄ってきたが力づくで引き離す。
「んーまぁ、今じゃ能力も個人情報みたいもんだからな、公開すんのが嫌な奴でもいるんだろ〜」
それもそうだなと相槌を打ち、学校まで歩いていると、さっきから癖になってるのか、また横腹をつついてくる。鬱陶しい。ものすごく。
「ん、見ろよ。あれ代表ちゃんじゃね?」
「……みたいだな」
目で鬱陶しいんだと訴えるが気にもされなかったので、仕方なく学校の屋上を見ると何やら男子生徒と会話をしてるようだった。
「ふっ、俺は分かるぜ……あれは告白だな……」
「……また勘とかいうのか?」
「いや、なんか手紙渡してるし普通に告白だって分かるだろ」
コージはいつものようなニヤニヤとした笑みではなく真顔で答えた。
「そこは勘って言えよ、あとなんで真顔なんだよ」
「告白は真剣にするもんだろ」
「お前はいつから俺に告白してるんだよ……」
まぁまぁそんなことはさておきぃ〜、と俺の肩に手を置き屋上を指さす。
「こんな調子じゃお前の初恋相手取られちゃうんじゃねーか?」
再びニヤニヤとした笑みを浮かべたコージが指を差した先には、律儀にお辞儀をして断っているであろう弐寺目さんが居た。
「うっせ、あと別に初恋じゃないからな」
「え、違うの?」
「ちげーよ」
俺の発言に何故か納得がいかないのか、コージはおっかしいなぁ〜とか言いながらガシガシと頭を掻いているが、無視して屋上を眺める。
(あれ?いつの間にいなくなったんだ?)
「……おい、坊ちゃん」
「なんだ」
「今から初恋ってことにしよう!昔のはノーカンだノーカンっ!」
「初恋の概念を壊すな」
「そういえば上の奴らはいつ居なく……」
視界の端で音も無く何かが空から急速に降ってきた。
唐突な出来事に脳が停止する。
赤黒い液体が広がる。
鉄の錆びた匂いがする。
音が消える。
「上の奴らがなんだって〜?って聞いてるか?坊ちゃんどーした?」
「……どしたって、これ」
出来るだけ視界に入らないように、何かが落下した地点を指差した。
「……?なにもねぇぞ?熱でも出たか?」
「いやそんなはず……ない……無い??」
確かに見たはずのモノは忽然と消えていた。
「なんだよ〜坊ちゃん、今日は随分とユーモア溢れてるじゃねーか、って急に走んなよ!」
気づけば走っていた。
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