6話 入学式にて



「本日入学の日を迎えられた、新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。えー、本校への入学が決まった新入生の皆さんが___」


 ふくよかな体をしたツルツル頭のおじさんが長ったらしい式辞を述べる。やっぱここの校長はThe校長って見た目してるな。


「ふぁあ~……」


大きな欠伸をする。


「お、どーした寝不足かよ?しの坊ちゃん」


「そーかもな。あと坊ちゃんって言うな」


 え~?なんだって~?とヘラヘラしながらコージが喋っているが無視をする。


「あーあ、にしても話なげーな、なんか同じような話繰り返してねぇーか?」


 頬をポリポリと掻きながらコージが呟く。うん。俺もそう思う。


 校長の長い式辞が終わり、司会が続いてぇ~新入生代表挨拶ぅ~と癖のある声で告げる。


 クスクスと笑い声が起こるが、その声は一瞬にして静まり返る。


 そこには、"夢で見た女の子が立っていた"


 目の前に立っている女の子はスラリとしていて世間一般ではモデル体型と呼ばれる体型なのだろう。目も髪も綺麗なブロンド色で髪はふわりとウェーブがかかっていて彼女自体がまるで作り物のようだった。


 周りの奴らも俺と同じように声を呑んでいる。が、その視線はどれも見惚れるような視線で、「かわいい……」なんて声も聞こえてくる。


「どーしたよ、しの坊ちゃんそんな驚いたような顔して……あぁ、あの子か」


「知り合いか?」


「いや、知り合いって訳じゃねーんだが、なんでもちょー頭が良いらしいぜ、学力試験満点だったとかなんとか」


 学力試験満点……?何故そこまで頭がいいのに進学校でもないこの学校に来たんだ?


 頭の中にハテナが浮かぶ。


「そりゃすげーな……ってなんでお前はそんな満足げな顔してんだよ」


「ん、いやぁ~ついに、"あの"親友のしの坊ちゃんに恋か~って思ってな、ひ・と・め・ぼ・れってカンジ?」


「いやいやいや、違うからな、つーかなんでそんな風に思ったんだよ」


 フッと鼻を鳴らしてコージがウィンクをする。


「勘ってやつさ」


「お前1度も当たったことないだろ、それ……」


「数うちゃ当たるさ__」


「カッコつけてるとこ悪いけど、そのセリフ絶妙にダサいからな」


 コージはいつも通りヘラヘラと....ってちょっと傷ついたような顔するなよ、チラチラ俺の顔見てるせいで演技ってバレバレだから。



「ーーーーー以上で代表挨拶を終わります。弐寺目 愛香」


 歓声混じりの大きな拍手が巻き起こり、つられて俺達も拍手をする。相当良い内容だったんだろうか?ちょっと聞いておけば良かったなと後悔する。


ガタタッ!


 大きな音が鳴り何事かと前を向くと新入生代表は体を大の字に広げて倒れていた。


(大丈夫か……?)

 

 新入生代表はムクっと起き上がったかと思えば、半泣きで顔を赤らめながら、ペコリとお辞儀をしてそそくさと退散してしまった。


なぜか再び歓声混じりの拍手が巻き起こった。

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