…【私】が何を想って帰ったかなど。龍哉様は見越していた。

…いや、見越すまでいかずとも、すぐに考えが至った、その恐ろしいほどの…さとさ。


…だが。私は彼を恐れて震えているのでは勿論、ない。…武者むしゃぶるい。


己の知を超えたものを前にして。


ああ、その歳で。


どれほど──辛かろう。


魂に、合わぬ器──。

彼の身体はまだあまりに若く、幼い。

あなどられ、さげすまれるほどには。

誇り高く自由へと飛翔しようとする魂の深さ、無限の拡がりをみせてゆくだろう才能。


小鳥用の狭い鳥かごに押し込められた猛禽もうきんひな───。


誰にも理解されない。

理解させずに生きてきて。

恐らくはこれからも。


我が神龍というカゴでさえ、このお方には窮屈なモノになるかもしれない──、それは、確信めいたもので。



明後日、俺は全てを整え、素知らぬ振り、冷たい表情で、少年を迎えに行くだろう。


そこからがまた新しい俺と、龍哉様の分岐点。


きっと。

そんな気がする。


あの方が、どんな眼差しで最初に俺をとらえるか。いつの間にか止まった指先の震えのかわりに、初めて人に己から抱く期待のようなものに俺の心が震えて。


──ああ、早く明日という日など、過ぎればいい──


そんな事ばかりが去来する胸を、

俺はもてあます事になった───。

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