結局。

個室に関係者集合となった。


トホホ(;つД`)。


国東は簡単な手当てをして。本人が望むんでそのまま俺の側に残し。後は側近連中と親父達。

塚田の二人。

王照きみてるさんと舩木ふなき

そして、須永紳二郎。


まあ、浮きますよね?紳さん。

ダークホースもいいところだもんね?

俺がぴったりくっついちゃってるしね。


ちょっとしてから戻った淳騎も、いぶかしげだし。感情が嫉妬に波立つ前に、『誰?』って感じ?

逆に清嵩や高央が分かりやすく不穏(笑)。

親父達や樋山の組長達はシンプルに不思議そう。

塚田の兄さん達もだけど。


接点の全く見つからない二人。

どうして、どこで?と俺を比較的よく知る人間は思い。

近ければ、そこそこには多分、く。

そんな距離感で俺は今、紳さんに甘えてるから。


「……後継。…ご説明を?」

「………」

「後継」


説明。そうだね、するべきだよな。


さすがは淳騎。

場を読んで動く。


「…こちらのお方が須永紳二郎様だという事は、松下の叔父貴からご説明を頂きました」

「…ああ」

「後継。…その羽織袴を着けてこちらへお伺いしているという事は矜持と責任を背に負うこと。ご自身が先程、おっしゃっていましたね」

「……」

「貴方のお立場をお考えください。貴方には旧知のお方でも、私共には私共の立場もあり、隆正様には隆正様のお立場、叔父貴達には叔父貴達のお立場があり。何よりこの場をお貸し下さいました樋山組長、庇って下さった塚田のお二人。…驚かせたままにしておいては神龍執行部の名折れ、恥となります」


強い眼。

いい加減、キリキリ説明しやがれ、バカ犬!と暗に脅してくんだよな、敏腕第一補佐殿(笑)。


「おい、龍哉?…お前、まさか」


すると、紳さんが横にいる俺の顔を覗き込んでくる。

俺はそっと眼を反らす。


「……」

「まさか…全く、説明…してねえな?…まあ、だろうな、お前の性格ならそうだろうが……」

「…紳さん」

「おい、そこの今、龍哉に意見してくれた、若い補佐さん?」

「…黒橋と申します。神龍の若頭第一補佐を任せて頂いております」

「…第一補佐さん?」

「二分八の盃を頂き、後継とははばかりながら、親子の契りを結ばせていただいております。そこに第二補佐も控えておりますが、同じく親子の盃を」


と、淳騎が説明した時点で。


「あー!そりゃそうだ!」


不意に紳さんは自分の頭をわしゃわしゃ掻き。

ついでに俺の頭もわしゃわしゃしてから。


「…ちゃんと自分の口で今、説明しろ、龍哉?俺がいうのは簡単だ。だが、【子】までいる立場になったなら【ちゃんと】しろよ?神龍の若頭?」



声が低くなって。

俺ははっとする。

…変わってねえな?一匹狼。

俺は…だいぶ、変わっちまったかも、だけど。


分かったよ。

…ちょっと、すげえ話しづらいけど。

──俺は、語りだす。

須永紳二郎との馴れ初めを。


小生意気なへたれ犬だった自分と、手負いの狼の、出逢いを───。

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