ってか。


事情を知らない十川の叔父貴はともかく、みんな、聞こえて無い筈なのに、┐(´д`)┌ ヤレヤレ(呆れ)って雰囲気だしてんだけど。

…解せぬ。


「有り難う、有り難う」

「樋山組長」

「親父が喜ぶ何よりの香華だ」

「おーい、王照。お前かなりガタイが良いんだから加減しろよ?まだ法事前だぞ?うちの息子の内臓出ないに越したことはない」

「おーとうーさーん?それかばってんですかあ?あおってんですかあ?」

「煽ってんのに決まってんだろ?よその組の組長とナイショ話して仲良くして(泣)。親父は寂しい(ToT)」

「これは遅参の詫びをかねた仲直り。俺と樋山組長の【秘密】だもん」


わざとふざけて言えば。

樋山組長も元々は気のいい、面白いやつだって親父が言ってるくらいだから。


「【秘密】だ♪」


高央、ごめんな、お前の複雑そうな、でも嬉しそうな表情のフォローは後でゆっくり(笑)。


樋山組長は俺をそっと離して。


「有り難う、優しい子だな。さすがは隆正の子だな。…ごめんな」


うん、判りやすい手のひら返しだけど、こういうの好きだ。

俺は安心させるように笑ってやる。

淳騎に叱られないようにちゃんと計算した笑顔で。


「…こちらこそ。これからも父をよろしくお願いします。俺、父さんを誉められるのが嬉しいから」

「………。隆正、お前の子供、めちゃくちゃ可愛いんだが♪」

「…やらない」

「けち」

「やらない」

「礼儀正しいし、頭良さそうだし!優しいし…」

「きみてる?やらねえよ」


子供の喧嘩か(苦笑)。


「分かったよ、うちのじいさんの粋な引き合わせって事で納得すりゃいいんだろ?」

「なら、大目にみてもいい」

「…すみません、樋山の組長オヤッサン。アニキは龍坊の事になると、心の道幅が四車線道路から住宅街を走る一車線道路くらいにせまーくなるんで」

「…ブハッ(笑)!」

「秀元…ウマイこと言わんでいい」

「松下。いい事聞いた(笑)。確かにな♪」


松下の叔父貴。

相変わらずのベストフォローだな?


「…隆正、くれなくていいから」

「あ?」

「歳食った友達、くらいになるのは許してくんねえか?」

「…王照」

「あと、津島についちゃ、…親父が隠居じゃ後ろ楯がねえだろ?…知っちまったからさ。大げさに後見とかじゃなくて………遥か後ろから応援してる足長おじさんくらいの立ち位置には…してくんねえか?親父の七回忌に免じてよ」

「………」

「なあ、隆正」

「…免じてやる。だが津島の父親がわりは俺だからな?」

「親父?一車線道路が田んぼの畦道あぜみちみたいになってんぞ?」

「龍哉~(拗)」

「良いですよ、樋山組長?…俺、結構本能チョロチョロしますけど、それで良いならお友達になって下さい♪」

「本当か♪」

「高央についちゃ、俺の権限ですから、足長おじさん増える分には大歓迎です♪っていうか絶賛募集中♪」

「やった♪」


このおじさん、面白っ(笑)。


「松下の叔父貴。親父はお任せします」

「ほいほい」

「…秀元」

「すまねえな、アニキ。さすがに組の後継に上目遣いで御願いされたら俺も弱い」

「…お前がそんなタマか、秀元っ…」

「ほらほら、十川のが、キョトンとしてますよ、アニキ」


確かに。

すっかりリラックスしてる松下の叔父貴、拗ねてる親父の横で。十川の叔父貴は訳が分からない、というかこいつら、いったいなにを……と遠い眼(  ̄- ̄)状態というか。

まあ、俺達の言葉でいうならチベスナ











顔だ。




「で、俺は樋山の組長のことはなんてお呼びしたら」


親父はほっといて聞く。

いや、そこは。

歳が離れた友人と言ってくれても親父と同世代だし、今の呼び方のまま『樋山組長』だろうなと思いながら、一応聞く。


「『王照ちゃん』」

「は?」

「…歳ばっか食うとさ、キャバクラの姉ちゃんも初回くらいしか『ちゃん』呼びしてくれん」


そりゃそうだろうな。

この人、【東】の極道の中でも実はかなりの実力者だからな。

店だしの新人をつけるときくらいは新人は知らないから呼ぶだろうが、知りゃ、ね。

それに高級クラブに行ったところでクラブの教育された女の子の『ちゃん』呼びは、『言われたから(義務感)』が寂しいんだろうし。

しかしなあ。


「親父がお世話になってるかたを『ちゃん』呼びは……なんか、周りの上席の方々に“ふざけんな”されそうですし……」

「…やっぱり駄目か。そうだよなあ」


上席、微妙な顔してるもんなあ。

自分のところの組長おやじが何を気に入ったのか、目の前の若造に自分から馴れ合いに行ってるから友人関係になるのはまあ、神龍組長の身内だし、シチュエーション的には仕方ない…と思っても。

遥か下から『ちゃん』呼びされる組のトップ。

微妙な顔にもなるよ。


「自分の頑なさを崩してくれた若手なんて…初めてだ。久しぶりに心が動いた。じいさんが本当に会わせてくれたのかとやっぱり思って…。なら、気軽に呼んで貰おうかと」


しゅーん。

組長、何か雨に濡れた子犬くらいの悄気しょげかただけど。mUˊ•ω•ˋUクゥーン…って…。

ま、うちの親父の仲良しさんなくらいだから、あざとさも見えるけど……。仕方ないか。


「…中間なかを取って『王照きみてるさん』じゃ駄目ですか?九割五分は『王照さん』だけど。例えば親父抜きで飲みに行った時とか、二人で遊びに行った時とかについうっかり『王照ちゃん』呼びしちゃったら、周りの方々は“ちょっと!若造、うちの組長『ちゃん』呼びやめて!”って一応突っ込んで後頭部ペチン!ってしてくれれば良いし」


そう言えば。


パアアッってニコニコし出す王照さんと、何だと!ってなるうちの親父と。首を動かして視線を流せば、呆れた、と言わんばかりの淳騎。

そして呆然となってる樋山の人達。


「やっぱり可愛い!」


目線で淳騎に“性悪”って言われた気がするけど。

…キコエナーイ。





で、法要は無事済んで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る