第2話(星空)
「月が綺麗だ」
息をするように漏れ出たその言葉に僕自身驚きを隠せず、慌てて口元を覆った。
そんな僕の反応が滑稽だったのか、彼女は面白そうに笑った。
僕は恥ずかしくて耳たぶをかいてごまかしつつ、目線は彼女に釘付けになっていた。
白く、腰まである長い髪は彼女の震える肩の動きに合わせて波うち、蒼い瞳は海と星空の中間を彩るように深く引き込まれていく。
黒いワンピースの裾が潮につかり、彼女のくるぶしにまとわりつく。
まるで絵画の世界に迷い込んだと錯覚させられるような、景色に僕はそれ以上の言葉は出せなかった。
nontitle(仮) 星海文庫 @Hoshiumi_book
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