第11話 美味しいカレー
塞島さんが吾妻川さんと付き合った??は?は???はぁ?????
「これ以上私の彼氏にちょっかい出さないでね……前も言ったけど私怒るから、今は彼氏ができて初めてのお泊り会で機嫌がいいから許してあげるけど、次と言う次は本当にないからね」
「……そんな馬鹿な………塞島さんが誰かと付き合うなんてあり得ません!!!!」
「なんでそう思うのさ、私たちはこんなにも愛し合っているって言うのに」
身体を欲望のままに押し付けて塞島さんの肉感を堪能している……そこに一切の遠慮と言うものはなく、自分の裸の心を押し付けているようであった。
「………そんなの嘘ですよね、塞島さん!!!」
「本当だ」
「!!!!!!!!!!!!!!???????????????????」
「誘拐の一件の後、お互いに惹かれ合ってな……お付き合いすることになったんだ」
「そんな馬鹿な……だって……だって」
「だが仮に僕が英玲奈と付き合っていなかったとしてもだ」
塞島さんは私をどこまでも真っすぐに見つめた。
「誘拐だの監禁だのしてくるような奴をマジで好きになるほど僕は多感な男じゃねーぞ……散々そのことは伝えてきただろう。
僕を好いてくれるのは嬉しいがもうちょっとな」
……………そんなこと……………
「そんなこと言われなくても分かってますよ……でも他にどうすればいいって言うんですか」
「お嬢」
仕方ないじゃない……私ができるのは……もはや強硬手段しかないの。
「光起さんの趣味嗜好も調べつくして美味しいご飯も作れるようになって、ファッションも研究して、興味なんて欠片もなかったメイクまで覚えました。できうる限りいつでもどこでも光起さんのことばっかり考えて、それでも光起さんのプライベートも守るために監視はしないでおいているのに………それでも貴方は少しも私になびきませんでした………
そんな状況がもう1年以上となり……しびれを切らして、思い切って、勇気を振り絞って告白してみれば脈を一切感じられずにそでにされる………もう無理やりにでも私に惚れさせるしかないじゃないですか」
視界が滲んだ。いつもの塞島さんがまた違う顔になる。
「私にはこれしかないんです。他にやり方を知らないから」
「じゃあ覚えればいいんじゃない?」
「………はい?」
「知らないなら覚えればいいじゃん、人間ってそう言うもんでしょ。そんでもって、その方法で落としちゃえばいいじゃん」
吾妻川さんが綺麗にウインクをしてきた。
「こんな犯罪ど真ん中な強引なやり方じゃなく、真っ当に私から光起くんを奪い取るって言うなら私はいいよ。
光起くんも自分が真正面から月詠ちゃんの魅力に堕とされるって言うなら文句ないよね」
「…まぁ………そりゃそうなればいいけど………英玲奈はいいのか?」
「いいのいいの」
いいの?
「私が逆の立場なら絶対そうするし。諦めるの嫌いだから」
「屈託ない笑顔で結構エグイこと言ってるぞ」
「ま、そういうこと。重ね重ね言うけれど光起をものにしたいならこんな真似せずに真っ向からきて……じゃないと」
太陽のような笑顔で檻に近づいた。そして
ザンッ!!!!!
「本当に怒っちゃうよ」
鉄製の檻を手刀で切り裂いた………嘘でしょ………この人そこまで化け物なの………
「これが最後通告…………私から阿漕な手で愛を奪い取ろうってんならこの力を行使するからね。
あっ、もし暴力で白黒つけたいっていうなら私的にはそれでもいいよ。軍隊連れてきたとしても私が勝つけど」
不可思議なものが全身の細胞から湧き出てきた。この感覚は………この絶対的感覚は。
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『初めまして月詠玲愛さん、突然だけどあたしに全面降伏しなさい』
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あの子に感じたのと同じ……人間としての格の違い………
でもあの子に感じたのよりずっと明るくて清々しい。
「………」
「お嬢?」
「光起さん」
「なんだ?」
「確かに吾妻川さんの言う通りです……私が間違っていました……
これからは心を改めてストーカーラインのギリギリを見極め隙あらば裸を見せたりキスしたりしてアピールすることにします!!」
「それでいいんだよ」
「よくないよ、僕に対して堂々とセクハラしますって言ったんだよ。あと多分ストーカー行為も余裕でするよ、ギリギリ見極めるって言ってるけどオーバーするからな、恐らく多分オーバーするからな。こいつはそういう奴だからな」
「まぁまぁ、心を改めるって言ってるんですし良いじゃないですかこーくん」
「他人事だと思って」
「何か不都合があったら私も全力でフォローしますから…私からもお願いします」
「………はぁ、全方面に甘い奴……まぁ甘芽がここまで言うなら」
「うふふ、その広い懐いつものことながら感服します」
「お前には負けるよ……」
「さぁお許しも出たことですし玲愛ちゃんもこっちにいらっしゃい。一緒にカレーを食べましょう」
「はいっ!!!」
吾妻川さんが切り裂いた箇所から私は檻の中に入った。不思議と外にいた時より心地が良い。
「じゃ、僕お手製のカレー召し上がれ」
「いただきます!!!」
人生で一番美味しいカレーだった。
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