3-7

「いてっ」

 鏡を見ながら、ジムは髭を剃っていた。右の頬が切れ、赤い線が走っている。

 久々に肌が負けたな、と彼は思った。剃刀が刃であるのを忘れていたぐらいである。

「まいったなあ。まあ、俺はいいか」

 頬をさすりながら、ジムはリビングに入った。

「どうした」

 クレメンスはサラダを食べていた。見た目とは違い、あまりがつがつとは食べない。ゆっくりと、味を確認しながら食べている。

「剃刀負けをした」

「ああ、ジムは毛が濃いから大変だな」

「伸ばしていたこともある」

「似合いそうだ」

「はは、クレメンスは似合わなそうだ」

「そうだろうな」

 そう言ってクレメンスも、頬をさすった。

「お前は見栄え良くしないとな。今日の会見は、中継があるぞ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る