第2話 伝説について

スキルディア王国には数多くの伝説がある。

勇者ドレアムの暗黒竜討伐

賢者ザイン・アーカイブの大陸創造

魔王アリビリティ降臨

などなど


他にも、派手な冒険譚から地味な日常的な逸話まで、さまざまにある。

そしてそれらの話の登場人物には無論、それぞれスキルがあった。


今日、スキルを与えられた少年ベリー。彼は、英雄になることを、特別になることを夢見ていた。

そんな厨二病気味な彼が得たスキル、待望のスキルは【HP+5】であった。


少年は困惑していた。これは特別なのか、圧倒的ハズレなのか。


スキルにはざっくり2つの種類があった。魔法系と異名系である。

魔法系は、攻撃から自身の強化系、他者への補助系などがある。

異名系は、そのスキル名が特徴的で、効果は、詳しくはわからない。だが伝説に残る勇者のスキルは往々にして、異名系であった。

ちなにみ先に出た勇者ドレアムのスキルは【月光】であった。


では【HP+5】はどうなのか?

ベリーはわからずにいた…



スキルの授与式は終わり、緊張から解き放たれた新成人達は、おのおの仲間内で自身のスキルについて話し合っていた。

強力なスキルを得た自慢であったり、逆に自虐であったり、荘厳であった教会とその周辺は一気に賑やかになっていた。


一方でベリーは1人でいた。ベリーに友達はいなかった。

自身のスキルについて黙々と考察をしていた。

HPとはなにか? +5ということは、なにかの数値なのか? 

ここで考えても仕方にないことに、頭を使う。


そのとき、ふと声が耳に入ってきた。マリアの声だ。

「…ごめんなさい。どんなスキルかは話してはいけないって言われていて…」

「えー!?…そういう家系?」

マリアの友人が恐る恐る聞く。

「そうじゃないけど…お告げで言われて…」

「え、えー!?それって女神様からってこと!?」

「うん…」

「はー…」

マリアの友人は驚いて固まった。

「それって…すごい!なんか特別って感じ!気になるー!!」

マリアは困った様に微笑んでいた。


ベリーも驚いていた。

まことに不思議なことに、それは追い越された様な驚きであった。

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