1章5話:秘密
「今日は神社に行くよ。」
そう連れられて来たのはちょっと遠方の神社。
「神主さん、いらっしゃいますか?」
そうリヴが聞くと、出て来た神主さんは何かをアイコンタクトし、神社の奥へ向かった。とりあえず俺もついて行く。
「じゃ、優間はここで待ってて。」
「へい。」
そうして荷物を俺に預けると、奥の部屋に入っていった。
「何してんだろうな……」
そう考えていると。
「リヴさんのお連れ様ですか?」
そうお爺さんに声をかけられた。
「あ、はい。リヴがお世話になっているみたいで。」
「まぁ、《惨滓》狩りを担ってもらっている以上、手助けするのが我々の仕事ですから。」
「手助けって、リヴは何をしてもらっているのですか?」
「あれ、聞いていないのですか?」
「はい。全く。」
「まあ、お連れ様なら話してもよろしのでしょう。彼女は、
「は?」
急遽告げられた突拍子もない事実。
「私が神主を務めていた頃初めていらっしゃいましてね。」
連れて来たのは千瑞さんだそうだ。今リヴは、《惨滓》と共存するため、印で封をして、《惨滓》を押さえている。とも語った。
「じゃあ人間離れしたあの力も……」
「ええ、《惨滓》の力ですね。」
なんだかパッとしないまま大きな謎が解けてしまった。
「でも、どうしてリヴは、」
「優間、帰るよ。」
質問をしようとした矢先、リヴが帰ってきた。
「無駄話はおしまいのようですね。」
「あ……はい。」
微妙なところで区切られてしまった。
「優間、元神主さんから私のこと聞いたでしょ。」
その帰り道、リヴからそう聞かれた。
「バレたか。早いな。」
「君にはポーカーフェイスは似合わないよ。そもそもなんか反応がおかしいし。」
お見通しらしい。
「あの神主さん口が軽いんだよね……」
「でも俺に教えてくれても良かったんじゃないのか?」
「私にも言いづらいことはあるんだよ。」
そう言いリヴが車を止めたのは、小高い丘の上だった。
「ちょっと昔話に付き合ってもらうよ。」
そう話を切り出した。
私は小学生の頃、両親と私の三人家族の普通の家庭だった。友達も普通にいたし、親と血が繋がってないとかもない。普通の家庭だった。でも、《惨滓》に襲われてから、変わった。
車を家族で走らせている最中、吹き飛ぶような衝撃に襲われた。両親は車の中で血を流して倒れていて、死に物狂いで横転した車から外に出た。そこには、崩れかけの化け物が立っていた。
「い、いやっ!」
近づいてくる化け物は私の死にかけの姿を見て、ゆっくりと頬を撫で、「契約だ。」そう持ちかけてきた。
「け、契約?」
それは《惨滓》が私の中に入る代わりに、死にかけの私の回復をするという内容だった。
相手は両親を殺した犯人。許せるわけがない。でも、その瞬間は生存本能が私の感情を上回った。
「契約、する。」
そういうと《惨滓》は体を私の傷の中に入り込ませた。すると、ボヤッとしていた頭がスッキリしたと同時に、状況が整理される。
両親を失った。その事実を前に泣き崩れていると、
「なあ、そこで何してるんだ?」
そう言われ顔をあげる。すると、拳銃を私に向けた中学生ぐらいの女の子が私を見ていた。
「《惨滓》は人にも化けるのか?」
「ざ、《惨滓》?わ、私は人だよ…?」
「まあ、《惨滓》が人に化ける話なんて聞かないからな。仕方ない、着いて来い…」
そうやって連れてこられたのは、都庁だった。
「おい、こいつを惨滓対策室へ連れて行く。鍵をくれ。」
そう彼女は職員に告げ、鍵をもらうと、そのまま机とソファが向き合って置いてあるだけの部屋へ私を通すと。
「さて、何があったんだ《惨滓》の子。」
そう聞かれ、事の経緯を話した。
「そうかそうか、それは大変だったな。じゃあ。」
そう言って銃を構える。
「死ね。」
「待って!」
「何を待てと言うんだ。お前は半分が《惨滓》なんだ。それなら結局殺される。それなら今、アタシが殺す。」
千瑞はどこか生き急いでいるように見えた。そんなことを思った瞬間。
「全く、生き急いでるね。」
そんな軽口が口をついて出た。しまった。と思った時にはもう遅く、
「は?」
あからさまに怒りを露わにする少女。
「え、いや……」
「はあ……もういい。興醒めだ。」
そう席から立ち上がった少女は。
「アタシは、荒木千瑞だ。今のアタシじゃあんたをどうしようもできない。だから殺せるようになるまで生かしておいてやる。いいな?」
嫌そうに私に手を差し伸べた。
「私は……なんだっけ。自分の名前がわからないや。でも、生かしてくれるんでしょ?なら、よろしく。」
生きるために、私はその手を取った。
ヒロイン・ワールド 岡田宗弥(筆遅ですが執筆中!) @rirururi
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