1章3話:閑話、都庁に行こう
《惨滓》も毎日出る訳ではないらしく、2日に1回ほどでくる仕事をこなすだけだった。さらに《惨滓》も前の大型よりも弱く、ただただ倒し回っていた。
そんな日々を1ヶ月ほど続けたある日。
「なあ、そろそろ仕事から解放して欲しいんだけど。」
「だから、君には行くアテもないし私に対する拒否権もない。ここで一生働いてもらうよ。」
「とんだ迷惑だ。しかも働くとか言ってるのに給料がない!」
「衣食住を出しているのが給料の代わりだよ。」
「家はあるんだけど……」
「あれは売った。」
「えっ?」
「えっ?」
唖然とする俺と、既知で無かったことに驚くリヴ。
「いやおかしいだろ!なんで人の借りた部屋勝手に売ってるんだ!」
「まあ、ここ、私の家に住めば万事解決!ってことでよろしく〜」
文句を言おうにもここで暮らすしかないので文句が出ない。
「こいつ……」
「抜かりないでしょ?」
得意げなのが余計にムカつく。
「ってことで、今日の仕事。」
そう言われて渡されたのは大きめの封筒。
「これ出しに行くから、着いてきて。」
中身も分からない封筒だが、どうせ聞いてもはぐらかされる。
リヴに着いて行き、たどり着いたのは都庁だった。
「リヴが都庁に出すもの……?」
一応仕事で金はもらっているようだし、それに関係したことだろうか。
そのまま都庁に向かい、受付で封筒を届けにきたと渡す。そうすると職員同士で何やら話し合い、奥へ通された。
「なんか意味わからんとこに通されたな……」
その部屋にはただ白い机と、向かい合うようにソファが並べてあった。とりあえず座る。数分待つと1人、人が入ってきた。
「よおリヴ。隣が腰巾着か?」
「腰巾着って……誰から聞いたんですか。」
「そりゃ本人からだ。」
「おいリヴ?」
「知らないね。」
「失礼なこと吹いて回ってたのかよ……」
「てか千瑞、優間に自己紹介しな。」
「おお、そう言えば自己紹介がまだだったな。アタシは
「では、千瑞さん、よろしくお願いします。」
「おお。よろしく。」
「じゃあまずその封筒を貰おう。」
「ああ、どうぞ。でもこれって何が入っているんですか?」
「なんだ、聞いていないのか?」
「ここが何かさえ聞いてませんね……」
「リヴ?」
「いや、聞かなかった君が悪いし……」
しらを切るリヴ。2人して困り顔だ。リヴはどこまで迷惑をかければ満足するのだろうか。
「……まあ、説明してやろう。ここはお前らみたいな《惨滓》狩りをする奴らをまとめる部署だ。そしてこの封筒は。」
そう千瑞さんが封筒の中身を広げる。
「これ、俺らが狩ってきた《惨滓》の情報ですか?」
「そうだ。これを月1で提出するのが《惨滓》を狩る条件だ。」
「そうだったんですね。」
「全く情報共有がなってないな。リヴ、お前は何をしているんだ?」
「まあ、伝えなくても業務に支障は出ないし……」
「全く、次からは情報伝達をしっかりしておけよ。私は別の仕事に戻る。書類提出、ご苦労だった。」
「こちらこそ、お時間ありがとうございました。」
そう千瑞さんの背中を見届けると、俺たちも踵を返した。
その帰り道、ふと考える。リヴは俺のことを大体わかっている。というかこの1ヶ月で大体のことを見抜かれてしまった。しかし、リヴに関して俺は名前も知らない。やっぱりリヴというのは偽名らしく、本名を聞いても適当にはぐらかされた。
リヴとは一体何者なのか。
そんなことに頭を回していると、家に着く。
「ほら、着いたよ。」
「あ、そうか。」
そのまま家に戻ると、夕食の準備を始める。
「もう今日はデリバリーとかでいいね。ピザ食べたい。」
投函されたチラシを見ながらリヴが言う。
「太るぞ。まあいいけど。」
「デリカシーがないなぁ。それより、あの監督の新しい映画テレビでやるみたいだよ。」
「マジか。今日の夕食のお供は決まったな。」
「そうだね。」
そんななんてことない会話の中、リヴに聞く。
「なあ、もうちょっと自分のことを話してくれてもいいんじゃないのか?」
「……もうちょっとしたら話すよ。きっと。」
「きっとかよ。」
今はリヴのことを俺は何も知らない。それでもなんとかなると思うのはリヴの考え方が移ってしまったのだろうか。
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