白下さ~ん 内科検診ですよ~

 入院して数日が経った。この頃にはサンロクでの生活にも少し慣れ、枕が高くて寝にくいこと以外には、特別困ったことはなかった。まぁ、部屋が独房みたいとは言え、一人部屋なので、他人に気を使う必要もなく、それに自由時間には大広間とかでのんびり過ごしていた。

 そんなある日、部屋でのほほんとしていると、看護師が入ってきた。だが、何も驚くことはない。向こうは用事があれば訪ねてくるし、こちらも用があれば出向く。それに、彼ら、彼女らは毎朝、体調確認として、検温や血圧を測りに来るのだ。最早、日常茶飯事である。

「白下さ~ん。内科検診のお時間です。」

「内科ぁ~?」

 口調こそ間延びして何ともなさそうだが、内心ではビビりまくりである。なんせ、精神科の病院に入院しているのに、内科の先生に会うことになるとは。誰が想像しただろうか。だが、向こうは我輩が驚くのを予想していたようで、スッと口を開く。

「体調が悪い理由は色々あるので、心の問題かと思ったら実は別の病気でした、ってこともあるんですよ。ほら、入院前に色々検査したじゃないですか。」

 そう言われてみれば、なんか色々した記憶がある。血を抜き取られたり、MRIで頭をスキャンされたり、胸部X線に検尿も。まさか、そのためとは…。

 だがまぁ、彼女の話は理に適っている。我輩が進退を決めれないのも、ホルモンのバランスが崩れていたり、脳に異常があり影響しているのかもしれない。内科検診、行くとしましょうか。

 サンロクにある診察室の前に案内され、待つこと数分。我輩の番になる。診察室に入ると、中央に机があり、それを挟むように椅子が置かれている。手前側は空席で、奥には白衣を着た見知らぬ人。この人が内科医なのだろう。彼の周りにはモニターやらキーボードやらあるので、パソコンも置いてあるのだろう。

 と、部屋の様子を見ていると、

「お座りください。」

 と先生。我輩は失礼すると言いながら着席した。

「では、さっそく、始めていきたいと思います。白下さんですね。」

「あぁ、白下義影だ。」

「白下さん。どこか体の具合が悪い所はありませんか。」

「特に無いなぁ。」

「分かりました。」

 と数言話し、先生はモニターに顔を向けた。

「そうですね。こっちを見ても特に問題はなさそうですね。」

 とマウスを操作しながら画面を切り替える先生。X線やMRIの写真が見えるが、小さくてなんとなくしか見えない。せっかくの機会だから、もっとしっかり見せてくれない?

「そうですね。白下さんは問題ないので、これで終わろうと思います。」

 と彼は切り出した。

 我輩も、睡眠以外言うことないし、外で待っている人もいるので、礼を述べて診察室を後にする。

 こうして、内科検診はあっさりと終わった。

 良いのか? これで。




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