第109話

 執念が……!」


「え……?」


 正に、理律夫から全てを奪わんとする執念で、此処迄、成り上がって来た天降は―己の斯様な悪意の暴露に、戸惑うばかりの彼に対して―初めて優位に立てたと感じ…酷薄な笑みを浮かべつつ、彼に云った。


「其処に在るのが、自然だと思ってる御前は…


 所詮、俺には勝てない……!」


「……!?」


「ピアニストとしては、挫折…


 弟は、俺のピアノに心奪われて、俺に靡いた…


 きっと、巫琴も…

 後悔してるだろうさ?」


 天降の口から初めて、巫琴の名前が出た―


「な―!?」

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