第105話

 御前のセンスには、太刀打ち出来ないよ……」

「有難う御座います、天降様……」


「フフッ…

 この俺よりも先んじて、不世出の天才と賞讚された御前が、そんなにへりくだるなって……」


「そんな積もりは―」


「明良…御前の弟の調弦も、完璧だぞ……


 御前等は…

 二人して、天才だな……」


「そんな……

 天降…先輩は、僕では示せなかった勇気を、弟に与えて下さったのに……」


「ああ…

 聞いたか?


 サン=サーンスの、『白鳥』の譜の事……」


 天降の口角が、心做し上がった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る