第94話

 来未が、明良の意図を推し量らんとする前に―明良は、手にしていた最後の譜面を置いた。


〝第十三曲「白鳥」〟


「!!

 どうして…?」


「………」


 暫しの沈黙ののち―遂に、明良は答えた。


「天降先輩に、渡された……」


「えッ?

 あの、『孤高の天才』って云われてる―」


「うん……


 それで…先輩は僕に、こう仰有ったんだ……


 『この俺と同じステージに、立ちたいなら…

  御前を縛る亡霊の呪いを、断ち切れ……!


  そう…

  御前は、俺の為に…

  〝白鳥〟を、弾くんだ……!』って……」

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