第56話

 だが、理律夫と巫琴が受けた衝撃は、それを垣間見たからではなかった―


外記げきさーん!

 外記 史絵ふみえさん…」


 会計カウンターから、事務員の声が、フロアに響き―妊婦が応答した。


「はい…!


 …お世話になりました…」

「おばちゃん、おなか…いたくない?

 ごめんね…?」

「ごめんね?」


「……

 ありがとう……」

「………」


 母子おやこの気遣いにも、碌に応えられず…彼等は、仲睦まじく会計に向かう―元・加害少年の家族を見送った……。


「『外記…有人』……!?」


 巫琴の唇が、その男の名を呟く……

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